工数管理を進めるにあたり、工数の考え方やプロジェクト管理だけではなく、コスト全般やタスク管理など、多様な知識や手法が必要になります。
そういった一つ一つの管理を適切な形で行っていくことで、工数管理自体もより効果的なものとなります。
本記事では、工数管理につながる考え方として、案件管理、予実管理、経費管理についてご紹介していきます。
また、職に従事する人なら気になる方も多い残業代に対する考え方や残業代申請をしやすくなる手法についてもご紹介しています。
本記事をご覧いただき、今後のビジネス活動に役立てていただければ幸いです。
目次
案件管理とは
案件管理の中身
業務を遂行していく上で大切な考え方の一つに「生産性を高める」ことが挙げられます。 「生産性を高める」ためにどうすれば良いかという議題について考える時に案件管理が浮上してくるでしょう。
プロジェクト管理や工数管理などとも関連するワードではありますが、案件管理はもう少し広い範囲の意味で捉えられます。
業務について考えていくと、例えばコミュニケーション管理や進捗管理、リスク管理、(業務)変更管理、問題管理、品質管理、構成管理、設備・環境管理などさまざまなタスクが用意されています。
こうした一つ一つのタスクをまとめて案件管理と言い換えることが可能だと考えられます。
案件管理のメリット
企業の業績や、どの分野に力を入れて業務を行うかなどといった方向性の違いによって優先順位は変わってくると考えられますが、それでも案件管理を行うことで状況が改善される可能性は高まるでしょう。
例えば、なかなか売上が上がらない製品があるとすると、その原因は社内のコミュニケーション不足にあるのか、あるいは製品の品質管理が上手くいっていないのかなどといったことを考えて、それを修正していくことが重要です。
業務一つ一つの課題を定期的に把握できれば、問題が小さな段階で解消できるので、それほど時間を割くことなくスムーズに作業をリスタートできるでしょう。
しかし、課題に向き合う機会を定期的に設けていないと問題が大きくなり、修正しようにもどこから手をつければ良いのかわからない状態に陥ってしまいます。
そうなる前に社内で連携して、日々の課題をクリアしていくことが重要になってくるでしょう。
そうした日々の課題を解消する可能性を最大化できることが案件管理のメリットと言えます。
案件管理の一つの考え方としての工数管理
案件管理でそれぞれの社員の作業状況や、プロジェクトの進捗度などを可視化してチームのメンバー全員で共有することができれば早めに課題を解消することが可能になります。
こうした一つ一つのタスクを管理するツールとして、工数管理ツールを利用することも選択肢として挙げられるでしょう。
エクセル等でも管理できる部分はありますが、管理ツールを利用すれば手間がかからず、毎日継続して使う習慣をつけやすいと言えます。
作業を都度入力する習慣さえついてしまえば、案件管理もスムーズな方向に進むのは間違いないので、社内やチーム内でそういった雰囲気作りをしていくことが大切です。
予実管理とは
予実管理のメリット
予実管理とは、予算と実績の管理のことです。
特に、単に予算と実績を比較することだけではなく、比較して発覚した差に対してその理由を明らかにし、対策を立て、以後は目標を達成できるよう管理することを指します。
予実管理を行うことのメリットは、目標が達成できない事態、つまり何か問題が起きた場合でも、その状況を常に把握して、迅速な対応を取ることにあります。
問題にいち早く気付き、即座に改善活動に取り組むことができます。
予算統制のプロセスこそが、予実管理だと言えます。
タイムリーにギャップを特定し、リスク低減を継続的に実施することが、無駄のない優れた予算管理に繋がります。
予実管理とPDCAサイクル
予実管理は、一見するとPDCAサイクルを上手く回せる仕組みのように見えます。
PDCAサイクルを回し、個人やチームが成長し、業務が改善され業績が向上されていくことは、企業としての理想の形です。
ただし理想ということは、それだけ実行が難しいのです。
まず、予実管理の要である予算と実績の即時的な把握には、膨大な資料をまとめる作業が必要となります。
エクセルでプロジェクト別に資料を提出していくと、それをまとめる担当者の仕事は連日残業になる可能性もあります。
予実管理表をまとめることも大切ですが、そのことに時間をとられていては本末転倒です。
本当に即時的に仕事を行うならば、そのためのシステムを導入する必要があります。
また、PDCAのCとA、つまり評価と改善は、とても難しいという問題もあります。
予実管理の場合、予算と実績の比較とは、アウトプット同士を比較することになります。
アウトプット同士を比較検討しても、結果の良し悪しが分かることに留まります。
結果を最善へ近づけることはできますが、予算の質を上げることはできず、結果を回せる範囲も限られてしまいます。
PDCAサイクルを回すということは、業務が改善されていくということです。
限られた範囲の結果を追い求めることではなく、プロジェクトに関わる一人ひとりの力にまで目を向けて、結果を出せる範囲もスパイラルアップさせていくことが重要です。
経費管理とは
経費の具体例
ビジネスにおいては、さまざまな議題での管理が必要となりますが、そのうちの一つが経費管理という概念です。
経費というと主に交際費、福利厚生費、旅費交通費等は一般的に理解されている領域でしょう。
しかし、例えば一口に交際費と言っても、得意先との飲食費やゴルフ料金、お中元・お歳暮、お香典、お祝金等が該当し、これらを管理するのは容易ではありません。
経費管理の難点
誰がいつどこで、どんな目的で経費を使ったのか、正確に把握して経費精算を行うためには、メールのやり取り等も含めて日々のコミュニケーションが大切になってきます。
しかし、それだけでは十分ではなく、ある程度決まった仕様でないと適切な管理にはつながりにくくなります。
税金の支払いにも関わる問題ですので、経費部門で相応のシステムを導入するなど、データの処理を正確に行うことが重要になってきます。
経費管理を行う上で必要な税務上の知識
税務上の知識も多少は必要になります。
例えば、会議の目的で昼食代を支出した場合、その目的や参加者を伝票に適切に記載すれば会議費としての処理が認められますが、記載不十分などの不適切な事務処理を行うと、税務上の交際費と判定されて法人税等を課される場合があります。
こうした税務上の知識をある程度頭に入れておくことで、法人税等の税金の支払いで問題になることは少なくなります。
脱税などの税金未払いは不正にもつながりかねませんので、当然注意が必要ですが、情報を知らないことで税金を払い過ぎているというケースも考えられます。
そうした問題を解消するためにも、日頃から想定される範囲の経費関連のことは、データ化するなど、経費部門を中心に社内で共有して、ダブルチェック機能が働くような環境を整えておくことが大切です。
残業代管理に役立つ工数管理
気になる残業代の実情
職に従事している人であれば、誰もが給料については気になるでしょう。
基本給は年間であまり変わらないという方も多いと思われますが、残業代は人によって大きく変わってくるでしょう。
しかし、残業というのも曖昧なところが多く、残業申請をしてもなかなか認めてもらえないという経験をしたことがある方も多いのではないでしょうか。
あるいは、いろんな諸事情で申請自体をためらってしまうという方もいると思います。
もちろんタイムカード等で勤怠管理を行っている会社も多いでしょう。
しかし実際にどんな作業をしていて、それがどういう理由で残業する経緯に至ったのかまで覚えていたり、記録を残していたりする人はそう多くないでしょう。
工数管理で積極的に残業申請を
そういった悩みを解決するための一助になるのが工数管理です。
工数管理ツールなり、Excelなりにきちんと作業内容と作業時間を入力しておけば残業の証明にもなりますし、何故時間がかかったのかについても記憶しやすくなると考えられます。
また、残業申請をする際に何か聞かれた場合、自信を持って受け答えができるという点においても役に立つはずです。
少なくとも残業申請する理由が見つからないというケースは減るでしょう。
プロジェクト費用の中にあらかじめ残業代が見込まれている場合もあるので、申請をためらうのは得策とは言えません。
工数管理で仕事に対する自信を手に入れよう
仕事をしていく上で、自信をもって私は働いていますと言えるのは大事なことです。
しかし、それを証明するツールがなければ損をしてしまうのは自分自身です。
残業申請だけにとどまらず工数実績が可視化されることで、仕事に対するモチベーションも上がるといったメリットもあります。
まずはわかりやすい目的として、残業代を含めた給料をしっかりもらうために、工数管理をやってみるというのも動機付けになるでしょう。
まとめ
さまざまな管理に関する事例や知識についてご紹介してきましたが、最も重要なのは管理を管理で終わらせないことです。
どんな管理にも言えることですが、想定が実際より上回っていたのか、あるいは下回っていたのかに関しての数値を明らかにして、その差異を分析することが重要です。
PDCAサイクルを回すとも言われますが、このPDCAをしっかりと回していくことで初めて管理の効果が出てくるでしょう。
PDCAのどれか一つが欠けていただけでも、管理効果は激減してしまうものと思われます。
そうならないためにも分析をきちんと行い、その結果を受けて次にどう活かすかが重要になってきます。
PDCAを回すためのテンプレートに捉われることなく、数値データや現場の声も参考にすべき指標と言えます。
そうして改善を重ねて積み重なったものが“ノウハウ”として組織に残り、より良い生産活動を行える環境を作り上げていくことができるようになります。