工数管理を始めようとしている企業や組織においては、まずエクセルで簡単な管理から始めてみるのが良いでしょう。
実際に管理を行うことで、新たな発見や改善点も見つかるので、まずは取り組みを開始することが重要です。
本記事ではエクセルで工数管理を行うために必要なことや、エクセルで行う工数管理のメリット、デメリットも紹介しますので、是非参考にして頂ければと思います。
少人数の場合は特に、エクセルで工数管理を開始するのは手軽さもあるので、お勧めのスタート方法です。
※2018年6月15日更新
工数管理とは
まず、工数をわかりやすく言うと「作業時間」に近い概念と言えます。主にシステム開発や製造の現場にて使われる用語と言えるでしょう。
IT業界では、作業を行うメンバーの数にかかる時間を積算したものを意味することも多く、「人日」や「人月」(1人が1ヶ月従事する作業が1人月)といった単位で表します。
その工数を管理するのが、工数管理ということになります。
つまり、工数管理は「プロジェクトや事業ごとの作業時間の管理」と考えることもできます。
工数管理を行うことのメリット
一番のメリットはプロジェクトや事業ごとの収支を把握できることです。 事業をやる以上は利益を出さなければなりません。
その利益の算出に必要なのは、「売上」と「コスト」です。
「売上」の算出は、お客様から頂いている金額を足せば良いだけなので簡単です。
一方で、コストの算出という点において、例えば、Aさんのプロジェクトごとの投下時間比率が1:1:1なのか、1:2:3なのかでは、プロジェクトごとのコストは大きく違ってきます。
コストを正確に把握できなければ、プロジェクトに利益が出ているのかどうか把握することができません。
つまり、工数管理の一番のメリットはプロジェクトごとの収支が分かるようになることです。Aプロジェクトが黒字で、Bプロジェクトが赤字、と分かるようになります。
「工数管理」は会社・事業・部署・プロジェクトといった単位で利益を算出するために必要であり、「工数管理」をすれば、プロジェクトだけでなく、事業セグメントや部署ごとの利益の把握も可能になります。
また、プロジェクトごとの利益が可視化されると、従業員にも生産性を高めようとする意識が芽生えるというメリットもあります。
エクセルで工数管理を行うことのメリット
使い慣れたソフトである
使い慣れたソフトのため、導入に際してソフトの使い方を覚える必要がありません。
エクセルがあればデータを修正できる
エクセルがインストールされていればデータの修正が可能です。専用の工数管理ソフトをインストールする必要はありません。
エクセルは数値計算に強い
エクセル上に表示されている数値を使って、いろいろな式に当てはめて計算をすることが可能です。
マクロによる操作
マクロを使えば、複雑な操作が可能となり、工数計算を行うことで多角的なデータ分析にも役立ちます。
コストがかからない
エクセルがインストールされていれば、人にかかるコストを除く金銭的な費用は0円ですので、費用面では重宝できます。
エクセルで工数管理を行うことのデメリット
閲覧権限、修正権限の設定が困難
エクセルでは現実的には、ファイル単位での権限設定ぐらいしかできません。例えばセルごとに閲覧権限・編集権限を細かく設定することは非常に難しいと言えます。
複数人で同時に処理できない
エクセルでは、同一ファイルで管理していた場合、同時に2人以上で書き込みできません。同一ファイルではなく、細かくファイルを分割する(例えば従業員ごとに1つのファイルにする)と、書き込みはいつでもできますが、定期的にエクセルデータの統合作業が必要になり、非常に大変です。
マスタ管理・マスタ追加が難しい
例えば、今までプロジェクトと顧客を関連づけていたとして、新しく顧客の担当者も関連付けようとすると、過去のデータも全て修正しないといけなくなるので非常に大変です。
データ活用の柔軟性が乏しい
エクセルでは、新しいグラフを作ろうとすると、過去データを整形しなければならない場合があります。また、ピボットテーブルを使えばクロス集計できますが、データ量が増えると動作が重くなります。
データの保全が難しい
更新したエクセルを共有フォルダやファイルサーバなどに置く場合がほとんどですが、この方法だと誤って削除する場合があります。
仮に定期的にバックアップをした場合でも、バックアップの設定も面倒です。
また、ネットワーク越しにファイルを開くので、ファイルが壊れる可能性もあります。
会社からしかアクセスできない
エクセルをファイルサーバに置くとすると、そのファイルサーバにアクセスできなければエクセルを更新できません。
そのため外出先や自宅からアクセス可能にするなどのネットワーク構築が必要になり、高額な費用が発生します。
初期セットアップが大変
仮にエクセルで工数管理を行うとしても、運用前にマスタの設定やグラフの設定が必要です。
また、使い勝手が良い、分析しやすいように作成する等のノウハウがないため、頻繁に設定を変更するなど運用が大変になります。
エクセルは実績を出すためのツールである
エクセルは、今日何時間働いたのかという集計に使うことには優れています。ただし、予想との差異を出すのは、さらに複雑な計算やグラフ設定が必要なため、非常に困難です。
マクロが必要
複雑な操作はエクセルではできないため、マクロを組むことになります。マクロを利用できるのはメリットである一方、マクロの開発コストだけでなく、全従業員への周知等の管理コストも発生します。
まとめ
エクセルで工数管理を行っている企業は少なくありません。
エクセルは多くの人が使い慣れたツールですので、取り掛かりとしてエクセルでの管理は始めやすいと言えます。
いずれにしても重要なことは工数管理を行う目的です。工数を記録したデータを蓄積して、何に利用するのか、工数管理の目的を明確にすることが大切です。
工数管理によって多角的な分析をするのではなく、あくまで作業時間の蓄積を行いたいという場合はエクセルが望ましいと思います。
しかしながら、プロジェクト収支の把握・製品開発工数原価の予実管理・独立採算での部署間の費用の配分・製品開発の仕掛品の算出など、会社の状況を正確に把握し、更なる改善を目指しているのであれば、エクセルでの工数管理では難しい可能性が高いです。
会社として何を目的として工数管理を行うのかについて検討して、その上で導き出された結論をもとに、管理手法を決定するのが良いでしょう。
費用面の兼ね合いもありますが、工数管理ツールに出費する以上の効果を期待できると判断できれば、専用ツールを利用するのも一つの手だと言えます。
次回は、実際にエクセルを利用した工数管理方法についてご紹介します。
エクセルの無料サンプルもダウンロード頂けますので、是非ご覧下さい。