プロジェクトマネジメントを行うにあたっては、正しい方向にプロジェクトを導いていく必要があります。
もちろん経験を積み重ねて、自己流のノウハウやマネジメント手法で、上手く管理できれば問題ありませんが、経験の浅いうちはなかなか上手くいかないことも多いでしょう。
本記事では、プロジェクトマネジメントを行っていく上で、どういった考え方を持って取り組んでいけば良いのか、指標となる部分についてご紹介していきます。
プロジェクトマネージャーとして、ある程度経験のある方向けにも、これからマネージャーとして活躍されていくという方向けにも、ポイントを押さえた読みやすい形式での解説を行っていきます。
※2018年2月9日更新
1.プロジェクトマネージャーに求められる5つの資質
1-1.顧客最優先の志向
何かしらのプロジェクトが始動するということは、そこには当然顧客の存在があるはずです。
プロジェクトを遂行していくにあたって最も重要なことは、顧客のニーズに応え、顧客満足度の高い製品を提供することです。
プロジェクト成功の判断指標は顧客満足度にあると言っても過言ではありません。
そういった点で、有能なプロジェクトマネージャーは常に顧客志向で、顧客を第一に考え、顧客の見方や考え方を理解します。
顧客と連携し、プロジェクトのビジョンを掲げ、それをプロジェクトメンバーとも共有することによって、顧客、マネージャー、チームメンバーの三位一体で強固な体制を築くことができ、プロジェクト完成と共に顧客満足を得ることが可能となります。
1-2.交渉スキルとプロジェクトチーム統括力
プロジェクトマネージャーには相応の交渉力とチーム統括力が求められます。
まず、交渉力という点では、経営陣、顧客、プロジェクトメンバー、サプライヤーなどの多様なステークホルダーを連携させることが求められます。
こうした関係を上手く構築していくことで、プロジェクトマネージャーとしての地位を確立していくことができます。
組織はトップダウン型にしても、ボトムアップ型にしても最終的に意志決定を行うのはトップに立つ者の責任なので、プロジェクトマネージャーとしてある程度の権限や立場を確立することが重要です。
そのための交渉力であり、相手を納得させるスキルも重要です。 マネージャーとして、社内外の関係者を上手く巻き込んで、強力なチームを作れるかどうかが、プロジェクトの成否を握っています。
1-3.曖昧さへの対応力
端的に言って、プロジェクトマネージャーの権限は曖昧なことが多いです。
プロジェクト稼働中でも、チームメンバーの中には指示を受ける上司が別にいる場合もあります。
そういった時に、マネージャーの指示に対して、メンバーが従わないこともあると考えておくべきでしょう。
大規模プロジェクトでも役割分担が明確ではないことは、往々にしてあります。
そのような時に、権限が明確で、計画通りにプロジェクトが進まなければ役割を果たせないということであれば、プロジェクトマネージャーとして長く働くことは難しいでしょう。
メンバーの中には、マネージャーより高い職位の人がいたり、顧客がプロジェクトに口を挟んだりすることもあります。
上記のようなケースも含めて、プロジェクトマネージャーとしては、常に曖昧な環境の中で、いかに最善の対応をしていくかがポイントです。
有能なマネージャーは、こうした曖昧な環境で仕事をすることに対して果敢にチャレンジし、結果を出します。
1-4.プロセス(工程)に変更があった際の柔軟性
プロジェクトマネージャーは例外を管理するノウハウを身につける必要があります。
なぜならば、プロジェクトには変更がつきものだからです。
顧客が成果物に対しての考えを変えることや、メンバーのスケジュールを変更する必要がある場合など、さまざまな状況が考えられます。
プロジェクトは一筋縄ではいかないことの方が多く、計画通りにいかなくなった場合に柔軟な対応力が求められます。
1-5.業界に対する知識と経験
プロジェクトマネージャーはある程度、業界特有の知識・経験を身につけておく必要があります。
しかし、マネージャーはその分野の専門家である必要はありません。
プロジェクトをマネジメントするのがマネージャーとしての仕事であり、実際の作業を行うわけではないからです。
例えば、建設業向けのシステム開発を行うのであれば、建築関係の知識や経験が必要となってきます。
しかし、建築関係で働いた経験がなくても、プロジェクトマネージャーとしては十分に仕事を行うことができます。
建設業の専門的なスキルや知識は当事者の人間に任せて、マネージャーとしては、プロジェクトをマネジメントすることに全力を注げば良いのです。
プロジェクトが失敗に陥りやすい例として挙げられるのが、マネジメント経験は乏しいが、業界の専門的な知識や経験を持っている人間が、マネージャーとしてプロジェクトのトップに立つケースです。
こういったプロジェクトは往々にして上手くいかないことがあります。
なぜならば、そのようなマネージャーはプロジェクトをマネジメントするだけでは飽き足らず、実際の現場作業も自分で行おうとする傾向があるので、キャパシティを超えてしまうからです。
ですので、もちろん業界の知識や経験はあるに越したことはありませんが、あくまでマネージャーがするべきは、プロジェクトのマネジメントであり、自身の責任範疇を超えないことが大切です。
マネージャーとして果たすべき任務を遂行し、任せることはメンバーに任せるという役割分担を適切に行うことが重要です。
1+α.プロジェクトを成功へと導くための「熱意」
プラスアルファの要素として、月並みな表現ですが、プロジェクトを何としてでも成功に導くぞという強い熱意が、マネージャーには人一倍求められます。
これはプロジェクトに限らず、どんな仕事にも言えることですが、この気持ちの部分を強く持ち続けられる人間が、マネージャーとしてトップに立つべきでしょう。
有能なプロジェクトマネージャーは、これでもかというほど、高い目標を設定します。
そして、その目標を達成すべく、自分自身だけでなく、チームのメンバーにその強い気持ちを浸透させて、プロジェクトへの参画意識を高めさせ、共に成功へのプロセスを歩んでいきます。
2.プロジェクト中のマネージャーの3つの役割
2-1.意志決定を行い、プロジェクトを前進させる役割
ことあるたびに、意志決定の役割を担うのがマネージャーの大きな責務の一つと言えるでしょう。
プロジェクト稼働中は、スケジュールと予算のバランスを的確に取り、スケジュールが遅れていると判断した場合には、人的リソースを適切に配分することが求められます。
プロジェクトを前進させるという点において、さまざまな状況で意志決定を下すことが求められます。
その一つ一つの決定には、当然責任もついて回りますので、相応のメンタルの強さも兼ね備えておくべきでしょう。
なおかつ、意志決定の際に、中には不利益を被るメンバーがいることもありますので、そういったメンバーに対して配慮できる心遣いも重要になってきます。
2-2.情報提供を行い、プロジェクトを推進する役割
プロジェクトマネージャーは、プロジェクト関係者に最新情報を提供し続けることが重要です。
そのためには以下のような行動をとることが求められます。
- プロジェクトのビジョンを役員に伝え、承認をもらう
- チーム単位で定期的に会議を行い、進捗管理を徹底させる
- チーム内で作業スケジュールを作成・更新・管理を行わせる
- メンバーが作成した成果物に対して、定期的にフィードバックを行う
上記のように、プロジェクト関係者と定期的にコミュニケーションをとることで、円滑なプロジェクト推進につなげていくことが求められます。
2-3.対人関係を円滑にするための役割
マネージャーとして上に立つ人間としては、チームのメンバーからある程度信頼してもらえる存在であるべきでしょう。
これは、先天的に身についているスキルというよりも、後天的に行動で身につけることができるので、以下のことを意識して振る舞うと良いでしょう。
- ステークホルダーと良好な関係を構築すること
- 意志決定の際は、チームメンバーも含めて、他人の意見に対して傾聴すること (※最終的に意志決定を下すのはマネージャーであっても、メンバーの意見にも耳を傾けているということを態度で示すことが重要)
- 人間関係を含めて、チーム内のもめごとを解決し、一体感を作り出すこと
- 社内に限らず、様々なビジネス経験・知識を持った人間と接することで、自身の見識を広げ、それをチームのメンバーに還元すること
上記のことを実践することで、人間関係の問題がプロジェクトにネガティブな影響を与えないように注意を払う必要があります。
3.プロジェクトマネージャーに求められるスキル
3-1.問題解決スキルと決断力
プロジェクトマネージャーとして、一定の成果を収めるためには、問題解決スキルと決断力が重要です。
問題解決のスキルという点では、全てのプロジェクトは独自性があるものであり、全く同じプロジェクトは存在しません。
そういった意味で、問題が発生した際に、各プロジェクトや場面に応じた解決方法を顧客やメンバーに提案して、納得して頂く必要があります。
あらゆる問題に対応できるよう、より多くの選択肢を持っておくことがベターでしょう。
もう一つの決断力の面では、マネージャーとして仕事の方向性を的確に示すスキルが求められます。
プロジェクト中は決断の連続であると言っても過言ではなく、一つの決断がプロジェクト全体を大きく左右すると言っても過言ではありません。
例えば、プロジェクトメンバーを増やすことや反対に減らすこと、スケジュールの先延ばし等の対応を迫られることもあるでしょう。
当然、費用面でも調整が必要となりますので、シビアな選択をしなければならないこともあるでしょう。
決断を下す際に指標となるデータが、合理性のあるデータなのか判断するとともに、日頃から適切なデータを収集できるように管理・監視しておくことも大切です。
そのための手法として、プロジェクト管理ツールや予算ツール等のツール類を利用することや、PMBOK等のプロジェクト管理手法に基づいた指標から判断を行うという手があります。
そういった手法や考え方を用いつつ、状況に応じて最善の選択肢を取ることが大切です。
3-2.プロジェクトメンバーからの信頼を得る
プロジェクトを推進していく上では、プロジェクトメンバーの協力が必要不可欠です。
多くのマネージャーはこの重要性を認識しているでしょうが、チームの指揮方法はまちまちです。
プロジェクト管理手法やノウハウ等はもちろん重要ですが、それだけではメンバーはついてこないでしょう。
結局、システムを作るのも動かすのも人間のやることなので、人心掌握をいかに行うかが鍵となります。
そのためには、プロジェクトマネージャーが活力に溢れて、前向きな姿勢でプロジェクトの陣頭指揮をとることが大切です。
常に状況をポジティブに捉え、苦境に陥った時こそ、責任者としてメンバーを鼓舞し、自らチームを引っ張っていくスキルが求められます。
また、マネージャーという立場を理解し、状況に応じた対応をすることも重要です。
時にはメンバー個人レベルでも、動機づけを行うことや、権限移譲することも必要です。
また、メンバーの相談にも乗り、適切なアドバイスを行うことも求められます。
メンバーに問題が生じた時に、その解決のための手助けをすることによって、メンバーからの信頼を得ることにつながり、ひいてはそれがプロジェクトの成功に結びついていきます。
まとめ
プロジェクトマネジメントを行っていく上で、大事なポイントに絞って解説を行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
本来、上手くいっているプロジェクトというのは、マネージャーが介入しなくても順調に進んでいるぐらいのものを指すのではないでしょうか。
しかし、なかなか一筋縄にはいかないのが常であり、試行錯誤を繰り返しながら、プロジェクトは前に進んでいきます。
ですので、本文で紹介したような資質や役割とは別に、なんとしてでもやり切るという姿勢が重要になってきます。
当然プロジェクトは一人では回りませんので、関係者と協力しながら、ゴールに向かって突き進むことが重要でしょう。
知識やスキルを持っていることは重要ですが、それを実践できるように日々取り組んでいくことが求められます。
そうしてプロジェクト関係者と共に、プロジェクトを成功に導いていくことがマネージャーとしての最終的な役割です。
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