ガントチャートとは、一般的には、スケジュールを作成するために利用されますが、ここでは、ガントチャートを使って工数管理をする方法を紹介します。
ガントチャートを利用することで、現在どのような作業が行われていて、どの程度の進捗率なのか、視覚的に状況を確認しやすくなるというメリットがあります。こうした管理手法を用いることで、どのような効果が期待できるのかについても紹介していきます。
目次
1.適切な予算設定と日々の実績登録
工数管理においては、予算の作成、実績の把握の2点が重要です。予算と実績の比較・分析によって瞬時にプロジェクトの状況を把握することができるからです。
例えば、プロジェクトにおいて、あるタスクの開始が3日遅れていれば、他のタスクにも影響して全体が遅延する可能性を読み取り、スケジュールや人材の適切な配置を検討しなければなりません。(一般的には、多少の遅れを想定してスケジュールを作成しているので、少々の遅れは問題にならないケースもあります。)
また、定期的に予算と実績の乖離についての分析も必要です。
例えば、開始遅れが常態化しているようであれば、そもそも開始予定日の見積が甘いということになりますし、納期遅れが常態化しているのであれば、予算管理が甘いということになります。
また、開始や終了の前倒しが多い場合、これは、予算に余裕があるのか、担当者のスキルがあったからか、担当者が働きすぎなのかといった分析も必要です。
2.タスクの責任者を明確に
タスクに担当者が決まっていないと、タスクの責任が不明確になってしまいます。ガントチャートはプロジェクトにおける個々の工程を可視化する手法であって、それぞれのタスクが担当者によって進められることで、プロジェクトは進み始めます。
小さなプロジェクトの場合には、担当者は一人の場合が多いでしょう。この場合は、タスクの終了までを担当者に一任すれば大きな問題はありません。
なお、プロジェクト開始時点(工程表作成時)に各工程に担当者が決まっていないことは大きな問題ではありません。タスク開始の直前までに担当者を決めれば良いでしょう。
大きなプロジェクトやタスクがざっくりしている(細分化されていない)場合などは、複数人の担当者をタスクに割り当てても問題ありません。前述の通り、タスク開始直前までに担当者が決まっていれば良いので、チームのタスクとする場合(担当者複数人の場合)などは、直前にチーム変更をしても構いません。
重要なのはスケジュール通りにプロジェクトが進むことなので、あまり誰がどのタスクということに縛られることなく、ここでは適材適所の柔軟な管理が求められます。
チームにタスクを委ねるなど、担当者が複数人になる場合は、主担当者を決める必要があります。主担当者がいないと、担当者間での意思疎通ができなかったり、他の業務が優先されたりしてしまうからです。
例えば3人アサインされて、責任者がいない(もしくは全員が責任者)という体制はおすすめしません。なぜならば、人数が増えれば増えるほどメンバー一人一人の責任感が低下し、主体的にタスクを終了させる意志が働かなくなってしまう可能性が高まるからです。
また、タスクの責任者が変更になった場合は、ガントチャート上だけでなくチームメンバー複数人でそのタスクを管理することが望ましいでしょう。
責任者が変更されると、引き継ぎや責任者変更前と変更後の作業の進め方に差異が出てきて、スケジュール通りに作業が進まない場合が往々にしてあるからです。
そういったタスクは要注意タスクとしてリストアップしておき、その他のタスクより注意深く進めていくことで、最悪の事態を回避することができます。
3.タスク工数を可視化する
複数のタスクを一つのグループにまとめたタスクグループというものを作成することができます。
タスクグループでそれぞれのタスクを管理することで、早期にクリティカルパスを発見することができて、プロジェクトの軌道修正を行いやすくなります。
なぜならば、タスクグループを設定することで、各タスクの重さを対比しやすくなるからです。
タスクグループを設定していない場合、タスクが3つあるとして、それぞれの期間と工数予算が、3日で1h、3日で2h、3日で7hとすると、2つめまでのタスクが終わっている場合、ガントチャート上では全体の2/3が終了しているかのように見えてしまいます。しかし工数計画上は30%しか進んでいません。
タスクの重さが可視化されていないと、スケジュールが順調に進んでいるように見えてしまうので注意が必要です。
この対応方法として、クラウドログでは、全体の進捗率やタスクグループの進捗率については、工数ベースでの計算をもとに表示を行っています。上記例の通りガントチャートを作成すると、タスク1、2は終わっていますが、タスクグループの進捗率は30%となります。
こうしたタスクグループを複数作成することで、より工数ベースでの管理が可能になり、タスクごとの重さも可視化することができます。
ですので、タスクを作成する際に、グループ化できるものは、まとめてタスクグループとして作成することで、プロジェクト計画通りの推進に役立ちます。
また、クラウドログではタスクの依存関係も設定可能で、タスク1が終わらないとタスク2に取り掛かれない等の管理も可能ですので、進捗遅れの早期発見につながります。
最終的には予算と時間も含めた計画通りにプロジェクトを完成させることが目標です。ガントチャートを利用することで、軌道修正も含めて、計画通りにプロジェクトを推進させる可能性を最大化することができます。
4.タスクの原価管理
ここまでの解説で得られたデータを元に、最終的に管理・改善すべきは、(労働)時間×単価で集計される「コスト」です。
ガントチャートで工数管理を行うことの最終的な目的は、コストをいかに削減し、利益を上げていくかということにあります。そのためにまずはガントチャート上で担当者のタスクを割り振り、各々の進捗状況を管理することで、担当者の役割をはっきりさせることが重要です。
このように、ゴールを定めて、そこから必要なことを逆算していくことで、ゴールを達成するために最短距離での管理を行うことができるようになります。
プロジェクトのタスクを細分化して、そのタスクに担当者を割り当てることができれば、まず一つ目の作業は終了となります。しかし、それだけでは単なるタスク管理であり、会社として売上や利益を追求していくにあたっては物足りません。
各担当者には単価が設定されています。つまり、その単価に見合った原価予算(タスクに対する時間)が組まれているのかをきちんと検証する必要があります。
例えば担当者Aと担当者Bの2名がいて、タスクAとタスクBに同じ10時間という予算を割り振った場合を考えてみましょう。
担当者Aの単価は100万円で、担当者Bの単価は200万円の場合、同じ10時間という予算であっても、コストは2倍の差があります。さらに実績を考えてみると、担当者Aが予算に対して2時間超過(12時間の実績)してしまうのと、担当者Bが2時間超過してしまうのではコストの差異は大きく変わってきます。
こうしたコスト視点でプロジェクト管理をできるようになれば、会社の目標である売上・利益の増加の段階に話を進めることができるでしょう。
5.工数管理が可能なガントチャートの紹介
(クラウドログ以下、abc順)
5-1.クラウドログ
タスク・タスクグループ・マイルストーンの3種類が設定可能で、タスクごとに担当者を割り振り、予算・実績を管理できます。実績は予算に対する進捗率を確認することができ、視覚的にもわかりやすくなっています。PDF形式でガントチャートをそのままダウンロード可能です。
5-2.Backlog
担当者・マイルストーン・カテゴリーでグルーピングが可能です。担当者、開始日、期限日をガントチャート上で編集し、リアルタイムでの編集や更新も可能です。エクセル形式でそのままダウンロード可能です。
5-3.Redmine
登録されているバージョン(いわゆるプロジェクト完了期日)とチケット(担当者ごとのタスク)の開始日・期日・進捗率から自動的に生成されます。多数のチケットの開始日・期日・進捗や今後の計画をまとめて把握することができます。
5-4.TimeTracker FX
自分に関係あるタスクを複数プロジェクトにわたって、まとめて表示することができます。自分専用のガントチャートとして、担当タスクのプロジェクト状況を確認できます。ガントチャートから直接実績の入力が可能です。
なお、クラウドログ以外の製品については、各製品のホームページ上からの情報を元にしており、実際の可否や実現方法などの詳細は直接製品窓口へお問い合わせ下さい。
6.まとめ
以上のように、ガントチャートで工数管理をすることで、より詳細な工数管理・原価管理が可能になります。 しかし一方で、管理することばかり意識して、肝心のプロジェクトが前に進まないようでは本末転倒なので、プロジェクト管理の負荷がかかりすぎないように気をつけたいところです。
会社の大きな目的として、売上を伸ばし、利益を増加させることが挙げられますが、そのための一つのヒントとして、今回はガントチャートでの工数管理を取り上げ、紹介させて頂きました。
今後、日本国内の労働人口は減少の一途をたどる中、労働者一人一人の生産性を今まで以上に高めていくことが、経済を活性化させていく鍵となります。
そういった意味でも、工数管理・原価管理というのは労働者の大きなテーマとなってきます。ガントチャートであれば、タスク管理・進捗管理を行う上で視覚的にもわかりやすいので、取り組みを開始する段階においては取り掛かりやすいツールと言えます。
ガントチャートで工数管理を行うことで、プロジェクト管理のノウハウを構築することができます。そのノウハウを全社で活用することで、会社全体がより良い方向に進んでいくでしょう。
今回はガントチャートで工数管理をすることと、そのポイントについてご紹介しました。いかがでしたでしょうか。