何らかのプロジェクトを立ち上げる際に、「ヒト・モノ・カネ」という経営資源を提供してくれる人を“プロジェクト・スポンサー”と言います。
プロジェクトや仕事を任せられた時は、このプロジェクト・スポンサーといかに付き合っていくかが重要です。
スポンサーは上司であることが多いですが、直属の上司だけではなく、もっと上の上司のこともあります。
つまり、スポンサーが誰なのかきちんと見極めておくことがプロジェクトを進めていくにあたってポイントになってきます。
スポンサーとの関係性を上手く構築できれば、続いてはステークホルダー(利害関係者)との関係も構築していく必要があります。
いかにして、プロジェクト・スポンサーやステークホルダーと付き合っていけば良いのか、その実情について展開していきます。
プロジェクト・スポンサーとは
プロジェクト・スポンサーとは、プロジェクトマネージャーの最大の「後ろ盾」となる人物や組織のことを言います。
プロジェクト成功の責任を共同で負い、プロジェクトの成功に向けて支援を行ってくれる存在です。
社内プロジェクトでは、経営陣を含めた上位の管理者並びにマネージャー層がスポンサーとなるのが一般的です。
また、外部顧客向けのプロジェクトでは、顧客組織の中で資金提供と意思決定の権限を持つ人がスポンサーとなるのが通常です。
有能なスポンサーであれば、組織的・政治的障害についても、プロジェクトマネージャーの支援をしてくれます。
組織内の政治的問題は対処するのが難しい場面も多く、プロジェクトで発生するさまざまな政治的問題に関しては、スポンサーを含めた上層部の支援が欠かせません。
プロジェクト進行中、プロジェクトマネージャーはとかく自分がつらい立場にあると考えがちであるが、実際にはスポンサーである会社のトップたちにかかるプレッシャーは相当大きいものがあります。
ですから、お互いの距離感を上手く調整し、プロジェクトマネージャーは決して独りよがりになることなく、プロジェクトを進めていくことが大切です。
プロジェクト・スポンサーの役割
プロジェクトマネージャーが困った時や支援を必要とする時に相談する相手がプロジェクト・スポンサーと言うことができます。
ですから、プロジェクト・スポンサーと良好な関係を確立・維持していくことは、プロジェクト成功の鍵と言えます。
ここで、プロジェクト・スポンサーの代表的な役割についてご紹介します。
- プロジェクト・スポンサーの主な役割
- プロジェクトの成功について、最終的な権限、実行責任、説明責任を負う
- プロジェクト憲章の承認
- プロジェクト成果物の品質責任を負う
- プロジェクト進行前・進行中にプロジェクトの方向性を示す
- プロジェクト関係者間の対立を解消する
- 組織横断に潜む問題を解決する
- プロジェクト計画書と作業記述書の承認
- プロジェクトについてビジネス上の意思決定をする
- プロジェクト作業範囲の変更を承認し、必要に応じて追加資金を提供する
プロジェクトマネージャーの権限を超えて、自分では対処しきれない課題に関しては、スポンサーの力を利用するプロセスを確立しておくと良いでしょう。
その場合でも、自分自身が考える解決策を提示し、プロジェクト全体のスケジュールやコスト、品質への影響を勘案した上で、スポンサーからの指示を仰ぎます。
ステークホルダーを上手に利用する
ステークホルダーとは企業の経営活動に関わる利害関係者のことを指します。
具体的には、消費者(顧客)、従業員、株主、取引先、地域社会、行政機関などのこととされています。
はじめに、ステークホルダーの中でもプロジェクトに対し特に貢献度の高いステークホルダーを探し出すことが重要です。
特に次のような人たちのことを指します。
- プロジェクト・スポンサー
- 顧客(社内・社外)
- 承認権限のある社内のマネージャー
- プロジェクトチーム
主要なステークホルダーはプロジェクトや組織に対して、権限や影響力があり、意思決定を行う立場の人たちであることが多いです。
そういった主要ステークホルダーはプロジェクトが先に進む認可を与え、プロジェクトに資金を提供します。
プロジェクトへの人の巻き込みや選考プロセスの指導・監視を行い、作業範囲の割り振りやプロジェクト憲章の作成に大きな役割を果たす存在です。
ですから、当然そういった立場の人間と上手に付き合っていくことが、プロジェクトの安定稼働につながります。
重要な意思決定を行う際にはステークホルダーに伝え、現状を定期的に報告することも欠かせません。
つまり、重要な意思決定や現状に関する報告について、ステークホルダーにとってサプライズとなるようなことがあってはいけません。
顔色を伺うというと言い過ぎかもしれませんが、ステークホルダーに対してはある程度の配慮をすることで、プロジェクトが上手く立ち行くという側面があることも頭に入れておくべきでしょう。
ステークホルダーマネジメントでステークホルダーを団結させる
ステークホルダーマネジメントとは、プロジェクトの利害関係者(ステークホルダー)に参画意識を促し、プロジェクトの協力者へと変えていくことです。
これは文字で見るほど単純なことではなく、実際にはプロジェクトへの参画意識が低かったり、プロジェクト自体を面白く思っていなかったりするステークホルダーも少なからずいるものです。
そういったステークホルダーたちを協力者へと変えていくのは簡単なことではなく、単なる管理能力だけではなく、良好な対人関係を築くためのスキルも併せ持っておく必要があります。
抜本的な業務改革に踏み込むプロジェクトが増えたことで、企業の組織構造に手を加えるプロジェクトも増えつつあります。
こういったプロジェクトでは特に保守的なステークホルダーは利害を気にして、「抵抗感」が生まれることも少なくありません。
ステークホルダー同士の利害衝突も起こりやすくなり、それらを乗り越えてステークホルダーを一つのゴールに向かわせるのは容易なことではありません。
ここで大切なのが、ステークホルダー全員の賛同を得ようとはしないことです。
全員の合意を取り付けるのは、おそらくどれだけ時間があっても足りないでしょう。
そうではなく、一部のステークホルダーの合意形成を図ることが重要です。
ステークホルダーの中にも必ず序列があるので、その関係性を日頃から観察しておくことが重要です。
ステークホルダーの中でも、より上位の立場にある人間から合意形成を図っていくのです。
そういった観察眼も養いつつ、プロジェクトマネージャーとして、刺激的なアイデアや厳しい質問、プロジェクトに対する情熱などを表現することでリーダーシップを発揮していきます。
プロジェクトマネージャーには、プロジェクトの各フェーズ(作業工程)でステークホルダーを調整・指揮することが求められます。
このことを「上をマネジメントする」と表現する専門家もいますが、まさに上を上手くさばくことがプロジェクト成功への秘訣と言えます。
まとめ
一つのプロジェクトを成功させるには、当然ステークホルダーからの協力は欠かせませんが、それだけで十分ではありません。
社内・社外問わず、ビジネス関係全ての部門から協力を得る必要があります。
営業、マーケティング、情報技術(IT)、人事、経理などの部門から協力を取り付けることが重要です。
こうした各部門の中でも、権限を持ち、影響力のある人間の協力は欠かせません。
しかしそれだけでも十分ではなく、例えば機能部門マネージャーで公式な権限を持つ人を特定できたら、次に非公式な拒否権を持つ人間も特定する必要があります。
権限はないが、いわゆる“声のでかい”人間です。
そういった人は、承認を与えるなどの公式な立場ではないにしろ、承認プロセスに口出ししてくることがあります。
そのような人間も上手く説得して、プロジェクトを優位に進めていく必要があります。
最終的にはプロジェクトマネージャーの責任が問われることになるので、ある程度自分でプロジェクトを進めやすいように、周囲をコントロールするスキルを併せ持つことが大切です。