オンプレミスとクラウド、企業の情報システム担当者としては、どちらを選択すべきなのか悩ましい問題です。
今回は、オンプレミス型・クラウド型のどちらについても製品開発・販売を手がけている株式会社電縁から、サービス提供者としてのノウハウをベースに4つの観点から比較し、それぞれの特長をご紹介します。
自社で利用するシステムやサービスの導入を検討中で、オンプレミスにするかクラウドにするか悩んでいる、そういった企業や情報システム担当者の助けになれば幸いです。
※2018年6月15日更新
1.コスト
システムやサービスの導入・運用を検討する際にまず考慮すべきはコストです。オンプレミス・クラウドそれぞれにおいて注意すべきポイントを比較していきます。
1-1.初期費用
オンプレミスの場合、初期費用の負担が挙げられます。購入するサービスの費用以外にも、サーバーや設備の費用が必要になる場合があります。スタート時に多額の費用を要しますが、長期間継続することを前提にしているのであれば月々のコストは低く抑えられる場合もあります。
クラウドサービスは利用したいサービスのみを低額の月額料金で利用できるため、必要なシステムを購入する場合に比べ、初期投資を抑えることができます。
1-2.月額費用
オンプレミスの場合、保守を依頼しなければ月額費用は発生しません。(ソフトウェア以外に必要な回線やサーバーの費用などは必要)
クラウドサービスは毎月費用が発生します。長期間続ける予定であれば良く検討してください。
1-3.バージョンアップ
オンプレミスの場合には、バージョンアップされたソフトウェアの利用に別途費用が発生するケースがあります。また、バージョンアップ版のインストール作業をサービス提供者が行う場合にはさらに費用がかかります。
クラウドの場合には、必要な時に必要な分だけサービスの追加利用ができるため、無駄なコストを抑えられます。定期的にバージョンアップされ、追加費用も発生しません。
1-4.障害対応
オンプレミスでは、1年目の保守費は初期費用に含まれているので障害対応してもらえますが、2年目以降は保守契約をしないと対応してもらえません。また、仮に保守費を払っていたとしても、障害の内容によっては別途費用が発生する可能性があります。
クラウドサービスで障害発生があった場合、サービス提供者が対応するため、突発的なコストは発生しません。
1-5.契約期間
オンプレミスでは導入時に一括で費用を支払うため、契約期間をそれほど気にする必要はありません。保守は年間契約の場合が多いので、保守を依頼するか自社でメンテナンスするかは検討が必要です。
クラウドでは「月額○○円」と書いておきながら、その多くは最低の契約期間が設定されています。最低3カ月、中には1年間というサービスもあります。1年間もの長期契約をしないといけないのでは、途中で解約しても料金を払い続けなければならず、クラウドのメリットが薄れてしまいます。
逆に、「1年間利用の場合○%割引」のように長期契約による値引きがある場合もありますので、うまく活用すると良いでしょう。
1-6.コスト比較のまとめ
オンプレミス | クラウド | |
---|---|---|
初期費用 | 初回にまとめて払うため高額 | 低額な初期費用 |
月額費用 | 発生しない ※回線代やサーバー代は必要 |
毎月費用がかかる |
バージョンアップ | 追加費用が発生する場合あり | 基本的に追加費用は発生しない |
障害対応 | 自社で復旧(保守費用を払っていれば対応してもらえる場合あり) | サービス提供者が行うため費用は発生しない |
契約期間 | 初回に費用を支払っているため、特に気にする必要はない | 「月額○○円」の記載でも最低利用期間があるなど注意が必要 |
2.セキュリティ
クラウドの場合は、自社の情報を社外のサーバーに保管することや、データの送受信がインターネット経由であることなどがセキュリティ面でのリスクです。その点ではオンプレミスのほうが信頼できます。
総務省が平成24年に行った「通信利用動向調査」のデータでは、3割以上がクラウドサービスを導入しない理由として「セキュリティに不安がある」と回答しています。
出典:総務省通信利用動向調査(平成24年)
クラウドサービスのセキュリティを確かめるのは容易ではありませんが、以下の様なポイントを見ていくと良いでしょう。
- 多くの企業に利用されている(高いセキュリティを備えている可能性が高い)
- サービス提供者が信頼できる会社である(技術力、資本力がある)
- データセンターやサーバー構成、セキュリティに関する取り組みが製品ホームページに記載されている
- 自社で基準を決め、その基準に適合しているか問い合わせる
3.サービス提供者
クラウドかオンプレミスかに限ったことではないのですが、信頼できるサービス提供者を選びましょう。
特にクラウドサービスでは、一定の経営力・資金力がない会社は、サービスを突然辞めてしまう可能性や倒産する可能性もありますので、慎重に検討する必要があります。
既にクラウドサービスの利用が決定している場合は、利用するサービスが想定されるリスクについて対策をしているかチェックする必要があります。以下の点を確認すると良いでしょう。
- 故障や不具合によるサービスの停止に罰則を設ける
- データのバックアップが適切に行われているか確認する
- データのエクスポート機能がある(定期的に自社でバックアップを取る)
- サービスの長期停止、事業売却などの際に、ソフトウェアを譲渡してもらえるか交渉し、自社でソフトウェアが動作する環境を予め準備しておく
- 担当者と面談する、緊急連絡先を教えてもらう(最悪の事態が発生した場合、会社間の約束よりも、個人的な信頼関係でカバーできるケースもある)
セキュリティの問題もそうですが、サービス提供者との信頼関係が絶対条件なのです。
4.カスタマイズ
この「カスタマイズ」が、オンプレミスとクラウドの大きな違いです。自社の要望にあわせて自由にカスタマイズ可能なのがオンプレミスの強みです。もちろんその分費用はかかりますが、業務効率化によるコストダウンを考えればカスタマイズ費用をまかなえます。
それに対し、クラウドは基本的に個別の要望に応じたカスタマイズはできないことが多いです。サービス提供者に要望を伝えてバージョンアップされたとしても、それが自社の要求に合致しているとは限りません。クラウドはあくまでサービス提供側が主体なのです。
それでも、近年クラウドの普及率は上昇していますし、今後も上昇し続けるでしょう。クラウドを利用する企業が増えれば増えるほど、サービス提供者も優良製品の開発・生産に徹することができ、おのずと製品は標準化していくはずです。
クラウドを利用するにあたっては180度発想を転換し、カスタマイズという考え方を捨て、多くの会社が使っている標準的な機能に自社の業務フローを合わせていくべきです。
まとめ
実際にそのサービスを使って業務改善に成功している会社があるはずなので、サービス提供者に成功事例を問い合わせてみてください(聞くのはタダです!)。そして、自社でどのように取り入れるかを検討してみてください。
「今さら聞けないオンプレミスとクラウドの違いとは?4つのポイントを徹底比較」と題して、オンプレミスとクラウドの特徴をご紹介しましたがいかがでしたか。
最適なサービスを選ぶ際に、このブログがみなさまのお役に立つことを願っています。