パレートの法則はご存知でしょうか。イタリアの経済学者パレートが1897年に提唱した理論で、社会全体の所得の約8割は2割程度の高額所得者が占めているという所得分布の経験則のことです。
例えば会社で言うと、営業成績上位20%の営業パーソンが、会社売上全体の80%をあげるということになります。
上位20%に入ることは当然重要なのですが、それ以上に目標を設定することが重要です。
日々繰り返される日常業務の中で、目標を見失うと途端に作業効率は下がるでしょう。
目標があることで、日々のスケジュールを具体的行動(KPIの設定)にまでブレークダウンすることができます。
本記事では、いかに目標設定を行えば良いか、その考え方のポイントについて解説していきます。
目標を設定することの重要性
目標を設定することの重要性は理解されている方も多いかもしれませんが、あらためてその重要性についておさらいしておきたいと思います。
プロジェクトメンバーという括りだけでなく、人が何かを頑張るためには、自分が実行していることに対して、目標や方向性などを自分なりに理解できているかどうかがポイントとされています。
つまり、メンバーに対して適切な目標を与えることがリーダーシップを発揮する上で大きなポイントとなってくるということです。
また、目標を設定する上では、「なぜ、その目標を達成したいのか」を考えることも重要です。
その“なぜ”の部分を考えた時に、より本能的な願望であるような意味合いを導き出せた時に、目標の達成度合いも高まります。
目標を設定することで、メンバー本人のモチベーションアップにもつながりますし、評価指標にも最適です。
そういった意味でも、目標はチーム全体の目標と個人の目標で分けて設定するのが良いでしょう。
もちろん、個人の目標がチーム全体の目標につながるものであればそれに越したことはありませんが、そこに縛られる必要もなく、とにかく達成指標や期限を明確にしてリーダー・メンバー間で共有することが大切です。
SMARTの法則で目標設定
目標設定の重要性を理解していても、ただ闇雲に目標を設定すれば良いというものではありません。
例えば、ダイエットをするという目標を設定する時に、漠然と「ちょっと太ったみたいだから、痩せたいな」くらいでは、ダイエットを継続するのは相当難しいと言えるでしょう。
そうではなく、「○月○日までに、今より3kg痩せるために、毎日30分ジョギングする」などといった具体的な目標設定の方が、達成確率が向上します。
つまり、文字を見ただけで何をすれば良いのか、具体的にイメージできる目標設定が良いのです。
そのための指標となる考え方がいわゆる“SMARTの法則”と言うものです。
SMARTはそれぞれの頭文字をとったものです。
- Specific:具体的である
- Measurable:計測可能である
- Achievable:達成可能である
- Result-based:成果を重視している
- Time-bound:期限が明確である
英単語に関しては諸説ありますが、意味合いとしては上記の5つが大きな方向性となります。
どれも重要な指標ですが、特に具体的であることと、期限が明確になっていることは、目標を設定する上で欠かせない要素と言えるでしょう。
達成可能であるか否かについても、高すぎる目標や、反対に低すぎる目標は行動に取り掛かる際のモチベーションにつながりにくいので、個人やチームにとって適切な目標設定をできるように協議していくことが求められます。
例えば、ある営業パーソンが立てる目標設定としては以下のような例が挙げられるでしょう。
営業 | |
---|---|
Specific →具体的である |
毎日5社の法人に電話をかける |
Measurable →計測可能である |
来月の売上1000万円を達成する |
Achievable →達成可能である |
今月の売上が800万円だった(参考指標) |
Result-based →成果を重視している |
売上目標を達成して、得られたボーナスで海外旅行に行きたい |
Time-bound →期限が明確である |
来月末 |
このような目標設定であれば、SMARTの法則を上手く駆使し、実際に行動に移して目標を達成できそうな実現性もあると言えるでしょう。
ですので、仕事でもプライベートでも目標を設定する際には、このSMARTの法則を意識してみるだけで、その後の行動が大きく変わってくると言えます。
ただ単に「頑張ります!」と威勢が良いだけでは説得力がありませんので、具体的に何をどう頑張るのかまで説明できることが大切です。
プロジェクトリーダーシップを発揮する
ここまで、目標設定の重要性とSMARTの法則の考え方について解説してきましたが、続いてはその先の、いかにリーダーシップを発揮していくのかというレベルに話を展開していきます。
まず、リーダーとして初歩的なリーダーシップレベルとしては、地位(立場)に頼ってメンバーやステークホルダーを管理しようとするものです。
もちろん、ビジネスの世界では地位が物を言うことも少なくないので、この手法を一概に否定することはできません。
ただし、この手法では必ずどこかで限界が来ます。
ある一定程度のところまでは上手く回るかもしれませんが、その程度を超えると途端に立ち行かなくなります。
そのため、次のレベルのリーダーシップ術を身につける必要があります。
次のレベルは、プロジェクトメンバーやステークホルダーと理解し合うことによって影響を与えるというものです。
文字にすると抽象的ですが、コミュニケーション力を活かしたファシリテーションやコーチングのスキルと考えて頂いて問題ないでしょう。
メンバーやステークホルダーが義務感を伴うことなく、プロジェクトマネージャーのために仕事をしようという状況を作り出せれば、現場のリーダーとしてはある種の及第点と言えるでしょう。
まずは、プロジェクトを任される立場の人間としてはこの2番目の段階を目指すことになるでしょう。
さらにその上のレベルを目指すとなると、ある程度の実績も必要となってきます。
2番目の段階のレベルでは、メンバーは心情的にプロジェクトマネージャーに共感しているので、ついて行こうというレベルです。
それに対して3段階目のレベルでは、担当するプロジェクトで複数回にわたって成功を収め、実績を重ね、メンバーはその実績を認めることでプロジェクトマネージャーのために働こうとするのです。
このレベルまで来ると、初めて、プロジェクトマネージャーの目標(つまるところプロジェクトの目標)が、本当の意味でメンバーの目標として理解され、プロジェクト全体の士気も上がり、より強力なプロジェクトチームが出来上がります。
このレベルまでチームをまとめ上げることができれば、プロジェクトマネージャーとしても一人前と言えるレベルでしょう。
さらにその上を目指すのであれば、“第二の自分を育てる”ことになります。
つまり、プロジェクトマネージャーとしての自分自身がいなくても、プロジェクトが上手く立ち行くような環境を整えていくことが、さらにその上のレベルと言えます。
いわゆる部下の育成ということになりますが、育てながら勝つというようなことができれば最高の形と言えるでしょう。
よくプロ野球の世界でも、若手選手をレギュラーとして抜擢して育てながら、なおかつリーグ優勝を成し遂げるということもありますが、プロジェクトでもこれに近い形での成功を収めることは可能でしょう。
一つのプロジェクトが終了した段階で蓄積されるのは、プロジェクトに携わったメンバーの知識や経験、ノウハウです。
その蓄積を重ねさせることで、第二のプロジェクトマネージャーを育成していくことができれば、現マネージャーの仕事として言うことはないでしょう。
“育てながら勝つ(成功する)”プロジェクトを常時できるようになれば、ある種プロジェクトマネージャーとしての完成系と言えるでしょう。
まとめ
目標設定を行う上でSMARTの法則を意識して、設定を行うと良い目標設定ができることをご理解頂けていれば幸いです。
とはいえ、いきなりメンバーにSMARTを意識して目標設定をしなさいと言ってもなかなか上手くいかない可能性もあります。
そういった意味で、最初のうちはプロジェクトマネージャーが目標設定のためのヒントを提示してあげるのが良いでしょう。
会社であれば、会社全体の年間目標があるでしょうから、まずはそこをきちんと部署やプロジェクトのメンバーと共有することが大切です。
そして、会社全体の目標から導き出される部署ごとプロジェクトごとの目標を定め、さらにその数値目標を社員個人の目標にブレークダウンし、上司と部下で話し合うという形をとるのが良いでしょう。
大きな単位の目標から、小さな単位の目標へと徐々にブレークダウンしていくことが重要で、そこからメンバーの具体的行動を含む目標を設定していくことになります。
目標設定は一回で終わりではありません。
何回でも変えて良いのです。何回も変えて試行錯誤を繰り返す中から、メンバーにとって最適な目標を導き出すことが、組織全体の活性化につながります。