株式会社電縁の代表取締役社長を務める加藤俊男氏が語る、2回にわたって掲載する特集記事の第1回です。
企業経営に関する知識と経験が豊富で、M&Aやニアショア、オフショアなどにも積極的に取り組んでいます。
第1回では、経営の可視化と経営のマニュアル化に焦点を当てて、その考え方やノウハウをご紹介していきます。
経営の可視化では、経営を可視化することで、より合理的な選択が可能となり、業務の効率化につながるという考え方についてご紹介します。
また、経営のマニュアル化については、経営を分断した作業と捉えるのではなく、マニュアルに置き換えることで、会社を成長に導く考え方についてご紹介します。
経営の可視化による業務の効率化
経営者と現場社員の意思疎通ほど難しいものはありません。
経営者「もっと頑張れ!」
現場社員「頑張ってるに決まってるだろ!!(と、心の中でつぶやく)」
などという会話をした経験が誰にでもあると思います。
多くの経営者は現場の経験もあるので、どちらの気持ちもよくわかることだろうと思います。(経営しかやったこと無い、という人もごくまれにはいるようですが。)
しかし、なぜか経営者になると、現場時代の経験を忘れてしまい、「何で自分の言ってることがわからないんだ!」と現場社員に強く言ってしまうこともあるでしょう。
この場合、そもそも経営者の方が立場が上なので、現場社員は言い返せません。このような意識のズレが生じる原因は、誰しもが相手のことを100%理解しているわけではないからだと思います。
立場が違えば日々やっていることも異なり、視点も全く違うのです。
この場合、お互いの意見を主張しあう(会議の「空中戦」)のではなく、まずは共通言語に落とし込む(会議の「地上戦」)ことが必要だろうと思います。
私が過去に取引させていただいた会社の中で、成功している会社に共通していることの一つに、「経営の可視化」というのが挙げられます。
例えば残業時間を全社員が閲覧できるとします。Aプロジェクトに問題が発生しているが、Aプロジェクトのメンバー全員が相当残業をしているとしたら、経営者と従業員との間の会話はスムーズだろうと思います。
なぜならば、予定より時間を費やしているのに問題が発生しているのですから、経営者も「頑張れ」だけで終わることはないでしょう。
この例で言うと「残業時間が一目でわかる」というのが共通言語であり、会議を地上戦にする重要な要素です。
これからの時代は、「経営の可視化」が欠かせないと思います。
「経営の可視化」によってすべての業務が効率的になるでしょう。
経営のマニュアル化が会社を強くする
私は、取引していた会社の経営が著しく悪化した、という経験が数回あります。
それらの会社に共通していたことのうちの一つは、あまりにもずさんな資金管理だったと思います。
社長にもかかわらず、3ヶ月先の現金残高の予想すら把握していない、把握できていたのは今月と来月の売上くらいでしょうか。
今月と来月が黒字だったとしても、3ヶ月後や6ヶ月後も黒字である保証はどこにもありません。
とにかく目の前の数字しか把握していなかったために、仕事が減った瞬間に息つく間もなく資金ショートしたという状況でした。
経営者としての能力に問題があったと言ってしまえばそれまでですが、そもそも経営者にはじめから全ての能力が備わっているわけでもなければ、また必要な能力を取得しなければいけないわけでもないと私は思います。
要は、そういった状況を回避できるオペレーションを実行していなかったことが問題だと考えます。
多くの経営者は、本業を成長させることに集中したいと思っているのではないでしょうか。もちろん私もそう思っています。
会社の状況は刻一刻と変わるので、苦しいときもあれば順調なときもある。苦しいときには本業に集中できないこともあるでしょう。しかし、資金管理に限らず、経営者がリソースを投下していては本業の成長の妨げになる業務が少なくありません。
経営者の仕事は多岐に渡っていますが、多くの経営者は自身の業務の全てを自分しかできないと勘違いしていないでしょうか。自分の業務を見直し、業務フローの確立を推進していくと、実はほとんどの業務がマニュアル化できるのではないかと思います。
この「経営のマニュアル化」こそが会社を強くする大きな要素です。