プロジェクト管理を行う立場の人間ともなると、その難しさについて身をもって経験している人も少なくないのではないでしょうか。
それは一番に、計画段階で完璧な「成果の設定」と「仕事の設計」が困難であることが理由として挙げられます。
どこまでいっても完璧に仕上げることは難しいですが、失敗するリスクを回避するための方法はあると考えられます。
本記事では、できることとできないことの判断、失敗事例から学ぶ教訓、リスク回避のためのコミュニケーションに焦点をあてて、いかにプロジェクト管理を行っていけば良いのかについてご紹介していきます。
できないことを安請け合いしない
「プロジェクト管理」というのは、社会人なら経験する方も多いことでしょう。
「プロジェクトは生き物」と表現されることもありますが、プロジェクト管理が難しいのは、目標もメンバーも期間も全く同じというプロジェクトは存在せず、常に新しい発想が必要だからだと思います。
「プロジェクト管理」は難しいです。
この意見はおそらく、プロジェクト管理をしたことがある方の共通意見であろうと思います。
しかし、難しいからと言って、頻繁に失敗しているかというとそういうわけでもなく、基本的にはそれなりに無難に終了することの方が多いのではないでしょうか。
成功するためにはさまざまな要素がありますが、大事にするべき考え方の一つに、「計画と実行」というワードが挙げられます。
例えば、30人月のソフトウェア開発プロジェクトを遂行するとして、5人で3ヶ月でできるかと言われれば、これは明らかに不可能でしょう。
30人月と見積もったので、5人でやるのであれば最低でも6ヶ月(実際には業務を平準化できないこともあり、もう少しかかるでしょう)は必要となります。
しかし、実際にはどうでしょうか。
営業の人が案件を受注したいから何とか納期を早めて欲しいとか、メンバーが事故に遭い人員が減ってしまったとか、そういうことを経験しているプロジェクトマネージャーも多いのではないでしょうか。
もちろん、業務を効率化することや、仕様を変更して業務量を減らすことで解決することもできますが、それは次の手段であり、基本的に無理なものは無理でしょう。
できないことは恥ずかしいことではありません。
まずは冷静になって、現状を説明するロジックを準備しなければなりません。
安請け合いして後で損をするより、できないと断る勇気も必要だろうと感じます。
プロジェクトマネジメント失敗事例から学ぶ
一般的にプロジェクトマネジメント(=PM)には、要求仕様を把握して、工数の見積りを行い、日程計画を立てる「プランニング」と、計画に沿ってプロジェクトを運用する「実施とコントロール」、プロジェクト終了後にプロジェクト結果を分析し、改善やフィードバックを行う「終結」があるとされています。
当然、全ての段階で上手くいくことが成功の一番のポイントとなりますが、その中でも特にプロジェクト稼働中の運用段階が重要になってきます。
例えば、プロジェクト実行中には以下のような失敗事例が挙げられます。
■失敗事例1
進捗は計画通り90%まで進んでいたが、その後停滞が続き、担当者に確認すると「問題ありません、挽回可能です」との回答を得る。
しかし、納期2日前に進捗が70%程度であることが判明し、プロジェクトメンバー全員を投入したものの、納期が3週間ずれ込んでしまった。
■失敗事例2
プロジェクト途中に仕様変更が入り、その分日程をずらすか、リソースを追加するかに関して発注元と折衝を行ったが、結局押し切られてしまい、結果として納期から2週間の遅延が発生した。
上記の2つの失敗事例において、プロジェクトマネージャーは何もしていなかったのかというと、決してそんなことはないでしょう。
マネジメントの原理原則に則って適切な管理を行っていても、このようなケースは発生してしまうものです。
それはプロジェクト稼働中のコントロールに問題があり、プロジェクトの流動的な変化を捉えきれなかったことが問題として挙げられるでしょう。
勤勉な技術者ほど、PMの原理原則を学び教科書通りの管理を行おうとしますが、これだけでは十分ではありません。
全く同じプロジェクトというものはありませんので、プロジェクトや状況の変化に応じて臨機応変に対応することが大切です。
そういった中で、とりわけ重要なのがプロジェクトリーダー(PL)の教育です。
プロジェクト全体の責任者と言う点では、プロジェクトマネージャーがその任務を果たすべき存在ですが、プロジェクトが始まって以降、現場のことをもっとも理解しているのはPLというケースは往々にしてあります。
ですから、リアルタイムにプロジェクト状況を把握しているPLと密なコミュニケーションを取ることで、少しでも早い段階で手を打つことが可能となります。
そういった意味でもPLの育成・訓練が重要になってくるわけです。
マネージャーも含めて、リソース管理やリスク管理、進捗管理などといった座学や、グループディスカッションなどで他者との相互理解、コミュニケーション能力を養成していくことが重要です。
そして、プロジェクト開始後からマネージャーはプロジェクトリーダーを中心にメンバーと定期的にコミュニケーションを重ね、日々の進捗状況や状況の変化を実際に肌で感じることが重要です。
リアルタイムの状況を把握することで、打開策を検討するタイミングも早まり、プロジェクトを安定的に稼働させる可能性が高くなります。
3方向のコミュニケーションによるリスク回避
プロジェクト管理を安定的に行っていくためにも、良いコミュニケーションと強いリーダーシップは欠かせません。
プロジェクトを期限通りに予算内でいつも成功させられるプロジェクトマネージャーは、人と組織の間のコミュニケーションを効果的にマネジメントしています。
プロジェクトを効果的にマネジメントするためには、以下の3種類のコミュニケーションを意識的に図ることが求められます。
1.垂直コミュニケーション
組織図の上下関係に基づく縦方向のコミュニケーションを図ること。
2.水平コミュニケーション
同じ職階で横方向のコミュニケーションを図ること。
3.斜めのコミュニケーション
他部門のマネージャーや役員などとの斜め上のコミュニケーションや、第三者(例えば、サプライヤーやコンサルタントなど)との斜め下方向のコミュニケーションを図ること。
こうした3方向のコミュニケーションを確立しておくことで、組織間の問題や作業手順、優先順位の付け方における対立が発生した際に、解決するための助けとなります。
プロジェクトにリスクはつきものですので、想定しうるリスクだけでなく、想定外のリスクに対しても冷静に対処することが求められます。
そのためのコミュニケーションスキルであり、有能なマネージャーとなると、リスク・マネジメントの一環としてコミュニケーションを活用できるようになります。
まとめ
プロジェクトのトラブルは、発見とその対策が早ければ早いほど、リスクは低くて済みますが、プロジェクトが大きな規模になってくると、そもそもプロジェクトが上手くいっているのか、上手くいっていないのかの判断が難しくなってきます。
今回ご紹介してきた考え方を含めて、PDCAサイクルを回しながら、一つ一つの工程において地道な取り組みをしていくことが大切です。
プロジェクト成功への近道はないでしょう。
当然、さまざまな管理ノウハウや理論は数多く提示されてきましたが、どれが正解でどれが不正解というものはありません。
顧客・プロジェクトスポンサー・プロジェクトメンバー・サプライヤー等を含めたプロジェクト関係者全員が、高い意識を持ってプロジェクトに取り組めるように導いていくことが重要と言えるでしょう。