一般に消費活動を行う上では税金がかかるケースが多いですが、例外的なケースとして税金がかからないこともあります。
どういった場合に税金(消費税)がかかり、どういった場合に税金がかからないのかといったことをまとめ、それぞれの具体例についても分かりやすくまとめています。
また、海外の消費税率や日本国内でも議論されている軽減税率の問題にも迫っていきます。
今後、消費税率が変更され、軽減税率が導入されるに伴って、システム的にどういった対応が必要になってくるのかについてもご紹介しています。
国内の税制制度変更や海外対応等、システム上でも対応すべきことが多くあるので、対応時期や対応内容を明確にしておくことが求められるでしょう。
非課税取引と不課税取引の違い
国税庁によると、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等であっても、課税対象になじまないことや、社会政策的配慮から消費税を課税しない取引があります。
このことを一般的に非課税取引と言います。
例えば、土地、有価証券、商品券などの譲渡、預貯金の利子や社会保険医療などが該当します。
また、消費税の課税の対象は、国内において事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡等と輸入取引のことで、これに当たらない取引には消費税はかかりません。
そのことを一般的に不課税取引と言います。
例えば、国外取引、対価を得て行うことに当たらない寄付や単なる贈与、出資に対する配当などがこれに当たります。
非課税取引と不課税取引では、課税売上割合の計算においてその取扱いが異なります。
課税売上割合は、分母を総売上高(課税取引、非課税取引及び免税取引の合計額)とし、分子を課税売上高(課税取引及び免税取引の合計額)としたときの割合です。
非課税取引は、原則として分母にだけ算入しますが、これに対して、不課税取引は、そもそも消費税の適用の対象にならない取引ですので、分母にも分子にも算入しません。
以下に非課税取引と不課税取引の具体例についてご紹介します。
非課税取引の例
- 土地の譲渡及び貸付け
- 有価証券等の譲渡
- 支払手段の譲渡 ex.)銀行券、政府紙幣、小額紙幣、硬貨、小切手、約束手形等
- 預貯金の利子および保険料を対価とする薬務の提供等
- 商品券、プリペイドカードなどの物品切手等の譲渡
- 社会保険医療の給付等
- 介護保険サービスの提供
不課税取引の例
- 給与・賃金
- 寄付金、祝金、見舞金、補助金等
- 無償による試供品や見本品の提供
- 保険金や共済金
- 株式の配当金やその他の出資分配金
- 資産について廃棄したり、盗難や紛失があったりした場合
- 心身または資産について加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金
非課税取引と不課税取引の主な具体例について、一部ご紹介しました。
上記に取り上げた中では例外もあり、例えば不課税取引の例の最後の「心身または資産について加えられた損害の発生に伴って受ける損害賠償金」に関しては、以下の例外規定があります。
- 損害を受けた棚卸資産である製品が加害者に引き渡される場合で、その資産がそのままで使用できる場合や、軽微な修理をすれば使用できる場合
- 無体財産権の侵害を受けたために受け取る損害賠償金が権利の使用料に相当する場合
- 事務所の明渡しが期限より遅れたために受け取る損害賠償金が賃貸料に相当する場合
上記の例のように、非課税・不課税ともに例外があるということを頭に入れておいておくと良いでしょう。
課税・免税・非課税・不課税の違い
一般的に、消費税が課される取引のことを課税取引といいます。
それ以外に「免税」、「非課税」、「不課税」の3つの取引があります。
簡単にまとめてみましたので、以下の表をご覧下さい。
区分 | 詳細 |
---|---|
課税 | 日本国内において、事業者が事業として対価を得て行う資産の譲渡など |
免税 | 課税取引だが、納税しなくて良い(0%課税の)取引 ex.)商品の輸出、国際輸送、免税店での取引など仕入れのために払った消費税額を控除できる |
非課税 | 対価を得て行う取引でも、課税対象になじまない取引 ex.)土地の譲渡及び貸付け等 詳細は国税庁・非課税となる取引 |
不課税 | 課税されない取引 ex.)国外取引、従業員への給与、対価を得ない寄付や贈与など 詳細は国税庁・不課税となる取引 |
上記の表の4つの区分のうち、「課税」以外は、消費税がかかりません。
この4つの区分は正確に行う必要があります。
というのも、「課税売上割合」の計算に関わるので、特に売上の消費税区分は正しく4つに分類して計上することが重要です。
課税売上割合=課税売上+免税売上 / 課税売上+免税売上+非課税売上
要約すると「課税売上 / 総売上」となります。
「免税取引」は厳密にいうと課税取引ですが、納税しなくて良い取引という考え方ができるので、要約のような計算式が成り立ちます。
ここで、覚えておいて欲しいのが、不課税取引分はこの計算式に含まれないと言うことです。
ですので、4つの区分に対して正確に金額を算出することが大切となります。
この課税売上割合(大きく分けて95%以上か95%未満か)によって消費税の控除額が変わってきます。
95%未満の場合は個別対応方式や一括比例配分方式の計算方法にあてはめて計算を行います。
具体的な計算方法については割愛しますが、国内の事業者は、売上を取引上の4つの区分に準拠して管理を行うことが大切です。
システム開発を行う上で注意すべき海外の消費税率
日本では平成元年(1989年)に消費税3%が導入され、平成9年(1997年)に5%となって、平成26年(2014年)に現行の8%となり、平成29年(2017年)4月から10%に引き上げられる予定となっています。
ここで注目して頂きたいのが、日本の消費税は整数だということです。
全国関税会総連合会によると、2015年4月現在の世界の消費税では、小数点が含まれる税率も珍しくありません。
例えば、インドは12.5%で、アイスランドは25.5%と小数点一桁の税率で、カメルーンの19. 25%など小数点二桁の国もあります。
上記のリンクの表にはアメリカの消費税が記載されていませんが、アメリカは州ごとに消費税が違うので、国ごとの一覧には載せられないようです。
例えば、ミズーリ州は4.225%、ミネソタ州は6.875%など小数点第三桁の消費税を課している州もあります。
また、アメリカの場合はたばこやガソリンなどの品目によっても州ごとに細かく税率が定められており、どの州が税率何%などと把握するのはとても大変でしょう。
システム開発を行っていく上では、海外の税率対策として、消費税率カラムを小数点三位程度までとっておく必要があるということになります。
今後は国内企業の国際進出に伴って、海外税率対策をとったシステムが増えていくのではないかと予想されますが、いずれにしても既存システムを改修するには、相当の時間がかかりそうです。(特にテストケースの抽出と実際のテストにかかる時間)
早めの対策を心がけておいた方が良いと言えるでしょう。
軽減税率対策
日本国内で2017年4月に消費税が10 %に引き上げられるのに伴って、軽減税率を導入しようという動きが見られています。
軽減税率を簡単に要約すると、お金持ちの人とそうではない人で消費税に対する負担感が違うので、食料品などの生活必需品に対しては消費税を軽減しましょうというものです。
軽減税率の話題になると、よく「逆進性」という単語が使われますが、上記の内容はまさに「逆進性を弱める」ということにつながります。
つまり、所得税などと違って、消費税はお金持ちの人もそうでない人も一律の税額を負担することになるので、少しでもその負担感を緩和しようというものです。
現在、その軽減税率の対象となる品目を何にするか話し合われているわけですが、食品の中でも生鮮食品は軽減税率の対象外にするといったことや、お酒は対象外、コンビニ弁当は軽減税率を適用するが、外食は対象外など、さまざまな議論が行われています。
いずれのケースでも完璧なルールを作成することは難しく、不公平感を覚える人は少なからず存在することになります。
現在でも、助産や家賃、医療、教科書、介護サービス等には消費税が課されておらず、それを食料品にも軽減という形で適用しようというものです。
ここでは、その品目がどうなるかの議論ではなく、システム開発の際に日本でも税率可変のシステムが必要になってくるということをご理解頂ければと思います。
これまでは、どの商品や製品でも一律で5%や8%の消費税を課税していれば良かったのですが、軽減税率が導入されるとなると、商品によって10%だったり8%だったりと税率が一律ではなくなります。
そうなると、システム上でも例えば、お酒は10%の税率でお米は8%の税率などと税率を変えて計算する仕組みが必要となってきます。
とりわけ消費税というのは会計システムのみならず、売上・仕入れに関わるシステムそれぞれに関係してくるため、システムとしては広範囲において影響を確認する必要があります。
一回の取引で複数税率適用の場合は複雑で、例えば税率8%の商品と10%の商品を同時に購入したケースでは商品コードに適用される税率を採用して、POSなどのシステムで計算し、消費税管理、申告に関わる会計関連システムには課税元額と、税額及び必要事項を連携することになります。
2017年4月まで必ずしも時間的な余裕があるとは言えないので、先のことも考えつつ効率的にシステム開発及び改修を行っていく手段をとっていきたいというのが実状でしょう。
まとめ
税率の変更に伴い、現状では上手く動いているシステムであっても、今後さまざまな問題が出てくる可能性があります。
例えば、小数点一位や二位までしか定義していないシステムが多いのではないでしょうか。
本体金額と消費税額の丸め処理のロジックを変えた方が良いのではないかといったことや、システム連動しているCSVファイルの中の税率に、数字だけではなく、小数点が入ることによる影響、連動用固定長ファイルに桁数が収まるか否かといったことも懸案事項として挙げられます。
これは一部の事例ですが、消費税率の変更や軽減税率が導入されることで、システムに対するさまざまな影響が出てくるということを頭に入れておくべきでしょう。
システム会社としては、対策は一つではないので、いかに効率的に作業を行い、今後に備えてシステムの汎用性を持たせられるかを検討しながら開発を進めていくことが求められていると言えます。