プロジェクトを実行していくにあたって、計画書の作成は欠かせない仕事の一つになってくるでしょう。
計画の段階でつまずいていては、プロジェクト稼動後も安心できないので、きちんとした計画を作成して、承認を得ることが大切です。
今回は、そのプロジェクト計画書を作成し、承認を得るまでのプロセスに焦点を当てて、必要な考え方や、行っておいた方が良いことなどを提示していきます。
意外と、ちょっとしたところにプロジェクト計画作成におけるヒントが隠されているかもしれないので、本記事を参考に、改めて計画作成手法について見つめ直すきっかけになれば幸いです。
1.プロジェクト計画を最初に立てる理由
計画をプロジェクト開始前に立てるのは当然のことと思われるかもしれませんが、改めてその理由について解説していきたいと思います。
プロジェクト計画策定に時間がかかりすぎると愚痴をこぼす人もいるでしょう。
人によっては、計画に時間をかけるより作業の開始を重視したいということもあります。
よく練られた計画ならともかく、ずさんな計画書は読む人にとっても、書く人にとっても時間の無駄となってしまいます。
プロジェクトに限らず、ビジネス現場の問題は、「構えろ!狙え!撃て!」という本来の順序ではなく、「構えろ!撃て!狙え!」という誤った順序で物事を進めてしまっていることにあります。
このような誤った順序で仕事を進めていては、いつまでたっても成果は出ません。
「とりあえずやってみる」という精神も大事ですが、誤った方に向かって努力していても、誤った結果しか得られないでしょう。
極論を言うと、真剣に計画を策定する気がそもそもないのであれば、わざわざ計画を作る必要はないでしょう。
そうは言っても、やはり計画書がなければプロジェクトがどういった方向に進むのか、メンバーで共有するのが難しくなるので、あるに越したことはありません。
ですから、計画を立てる際には有識者に意見を求めながら、ある程度時間をかけてよく練った計画を策定することが重要です。
その計画通りにプロジェクトが進めば、間違いなく成功に導けるという自信があるくらいの計画書ができればベストです。
しっかりとした計画があれば、多くの問題を未然に防ぐことができます。
一方で、どんなに計画策定に時間をかけても、プロジェクトが計画通りに進むとも限りません。
予期せぬ事象が発生して、計画通り進まないことはよくあるケースでしょう。
しかし、計画から外れてばかりいたのでは、終了まで行き着きません。
計画がしっかりしていれば、成功確率はその分だけ高くなります。
さらに、計画書の更新を定期的に行うことで、軌道修正を図りながら、計画通りに進められる確率もそれだけ高くなります。
プロジェクトを成功に導く確率を高めるという点でも、プロジェクト開始前に正確な計画書を策定しておくことが重要です。
2.メンバー間でプロジェクト計画書をクロスチェックする
プロジェクト計画書を提出して、最終承認を求める前に、プロジェクトチーム内で最終のクロスチェック(相互確認)をすることが大切です。
WBSやスケジュール、予算、ネットワーク図などを、作成者の立場で1つひとつ検討していきます。
チームメンバーにも手伝ってもらい、クリティカルパスと呼ばれるプロジェクトの山場のシーンにおいて、日程や所要期間に無理がないかどうかや、ネットワーク上のつながりに漏れがないか、作業データが不足していないかなどを相互チェックすることが大切です。
チームメンバーに確認を手伝ってもらうのは、計画書のミスや漏れを見つけてもらうこと以外にも大きなポイントがあります。
それは、計画に同意してもらうということです。
一部のメンバーだけで計画を決めてしまうより、多くのメンバーに関わってもらうことで、自分たちも計画の作成に関わったのだから、しっかりやらなければならないという意識を持ってもらうことが重要です。
計画策定の段階で、メンバーの意見を聞くことで、日程に無理がないか、メンバーは足りているかなどのことが明らかになってきます。
そこで出た意見を取り入れて、最終的な計画とすることで、プロジェクトメンバーもすっきりとした気持ちでプロジェクト開始に備えることができるでしょう。
一部の上層メンバーだけで決めてしまうと、協力を得るのが難しくなってしまうこともあるので、時間が許す限り多くのメンバーに計画段階から携わってもらうことが重要です。
当然、最終的には意思決定をする人物が計画を決めて構いませんが、ここでは「意見を聞く」というプロセスが重要だということです。
メンバーにプロジェクトに対する帰属意識を高めてもらうことが、プロジェクト計画段階でのポイントと言えます。
クロスチェックの手順について具体例をご紹介します。
- メンバー数・予算を含めたリソースとスケジュールの整合性を確認
- 作業・所用期間・日程とスケジュールの整合性を確認
- 作業とWBSの整合性を確認
- 予算と見積もりの整合性を確認
- クリティカル・パス上のリソースとスケジュールを入念に確認
- 主要作業にマイルストーンを設定しているか確認
- 各作業の開始・終了は妥当か最終確認、休日・休暇もスケジュールにあるか確認
上記のクロスチェックの手順はあくまで具体例なので、他に必要な項目があればそちらも行うようにして下さい。
事前のチェックを入念に行って損をすることはないので、独自のチェック方法があるならば、十分に時間をかけて行うべきでしょう。
チェックを行って、新たに課題が発生した場合は、随時修正を行い、修正履歴を全メンバーが確認できるようにしておきましょう。
3.プロジェクト計画の承認を得るための秘訣
メンバー間でのクロスチェックも終了し、プロジェクト計画作成が終了したら、続いてその計画を承認してもらう必要があります。
プロジェクトをスタートさせるためには、計画の承認を得ることが大前提なので、プロジェクト開始前の最後の山場と言えるでしょう。
最終的には資金提供者からの承認が必要ですが、誰が計画を承認するかは、会社、プロジェクト、役割分担などによって変わってきます。
複数の部門から承認を得る必要がある場合や、プロジェクト・マネージャーが承認すれば十分ということもあるでしょう。
プロジェクトの作業や予算を誰が承認するかは、事前に確認しておく必要があります。
承認を得るためには、承認者向けのプレゼンテーションが必要なケースが多いでしょう。
プレゼンのポイントとしては、単に概要を説明するだけではなく、その裏づけとなる理由まで説明すると、説得力のあるプレゼンとなり、承認を得やすくなります。
例えば実行案や期日、予算にしても、各作業がなぜ必要で、なぜその予算になるのかの明確な理由を示す必要があります。
また、プロジェクトに潜むリスクや、リスク発生時の対策なども説明しておくことも大切です。
事前にリスクについて説明しておかないと、実際にリスクが発生した際、協力を得るのにかなり苦労することになります。(最悪の場合、協力を得られないことも・・・)
プロジェクト計画書のどの部分を説明するのかについても、検討が必要です。
プレゼンでは説明不足も困りますが、細かすぎても良くありません。(発表者にとって都合が良くないという意味で)
詳細を説明しすぎると、細かい点について経営陣から質問や反論を受けやすくなります。
すべて適切に回答する自信があるなら問題ありませんが、そこまで触れる必要がなければ、細かすぎる説明は不要でしょう。
どの程度説明するかは、プロジェクトメンバーや関係者に指示を仰ぎ、最終決定するのが良いでしょう。
また、プレゼン会議の時間を短く抑えることもポイントで、長くても1時間以内が良いでしょう。
特に経営陣の中には1時間以上の会議を嫌がる人もおり、質疑応答の時間と承認の時間も確保して、テキパキと進めることが大切です。
計画作成が終了して、プロジェクトを開始する段階のプレゼンにおいて、ゴールは承認を取り付けることのみですので、無駄なところで力を使わないようにゴールに向かって最短距離で進むことが重要です。
経営陣や承認者の反応も見つつ、プレゼンを杓子定規に行うのではなく、その場の雰囲気を考慮しながら、適宜アドリブを入れることも説明者に求められるスキルと言えます。
まとめ
プロジェクト計画書の承認を取り付けたところで、いよいよその計画を実行に移す段階に入ります。
承認を得る過程において、ずいぶんたくさんの仕事をしたと思うかもしれませんが、本番はここからです。
プロジェクト計画書を作成することが、プロジェクトマネジメントなのだと勘違いする人も中にはいますが、計画の策定はその一部に過ぎません。
厳しいようですが、改めてスタート地点に立っただけなのだとムチをいれて、プロジェクトを稼動させていきましょう。
とは言え、プロジェクト計画を作成するのは、プロジェクトマネジメントにおいても特に難しい部分なので、素直に喜ぶことも大切です。