プロジェクトが計画通りに進むかどうかは、プロジェクトチームにかかっています。
その中で、プロジェクトマネージャーはチームに対する動機づけや調整、ファシリテーション(促進)、管理をしていく必要があります。
そうしなければ、プロジェクトは前に進みません。
プロジェクトマネージャーはプロジェクトに合うリーダーシップのスタイルを確立して、発揮することが大切です。
本記事では、そのために必要な行動や振る舞いについてご紹介していきます。
適切なリーダーシップを発揮して、一つでも多くのプロジェクトが上手く進むことを期待しています。
リーダーとしての立場を確立する
どんなプロジェクトであれ、リーダーの存在は不可欠です。
プロジェクトマネジメントの技法に関する知識がいくら豊富にあっても、リーダーシップを取れる人間がいなければ、プロジェクトは立ち行かなくなってしまう可能性が高まります。
わかりやすく言えば、プロジェクトマネージャーとリーダーはそれぞれ別の役割であり、マネージャーはマネージャーであると同時にリーダーでもあるべき存在と言えます。
マネージャー自身の片腕として信頼できるリーダーを配置することができれば、そのメンバーにリーダー役を託しても構いませんが、基本的にはマネージャーがリーダーを兼務するものだと考えていただくのが良いでしょう。
マネージャーとしてもリーダーとしてもメンバーからの尊厳を勝ち取り、責任を引き受ける立場にあります。
リーダーとしては、以下の3つの条件を意識して行動していくことが肝となります。
- 正直であること
- 有能であること
- 積極的に取り組むこと
上記の3つの条件を満たすことで、リーダーとしてチームを引っ張る立場にふさわしい風格が出てくると言えるでしょう。
一方でマネージャーとしては、各種の技法や手続きを駆使して、プロジェクトを監視・コントロールして終了まで導いていく必要があります。
具体的には、プロジェクト計画をレビューし、報告書を書き、予算の均衡を保ち、計画を更新し、スケジュール調整をするという具合に、プロジェクト開始以降はやるべきことが山積みとなります。
また多くの管理業務をこなす一方で、「上をマネジメントする」役割も求められ、プロジェクトの重要な意思決定においては、プロジェクトスポンサーも巻き込んで決めていくことも必要です。
こうしたプロジェクトのマネジメント的な部分もやりつつ、リーダーとしての影響力を発揮しながらプロジェクトを推進していくことで、プロジェクトの安定稼動につながっていきます。
リーダーとして必要な6つのふるまい
上記の段落でもご紹介したように、マネージャーとしての役割とリーダーとしての役割は別物だと考えておくのが良いでしょう。
マネージャーは主に会議に出席し、事務処理をこなす役回りが多くなりますが、リーダーはチームメンバーからの信頼と尊敬の念を勝ち取り、指示に従ってもらわなければなりません。
そうしないと、メンバーが自分勝手に意思決定をして、プロジェクトが上手く立ち行かなくなってしまいます。
マネージャーとしては、作業が期限通りに予算内で完了するようにルールや管理手順を作る必要があります。
一方で、リーダーとしての立場を確立することは、報告書や作業手順とは違った意味で重要です。
リーダーシップとマネジメント手法は相互に絡み合いながらも、プロジェクト成功には双方とも欠かせないポイントと言えます。
正確や持ち味の異なるメンバーに対して、どんなリーダーシップとマネジメント手法を駆使するかが、プロジェクト成功の鍵を握ると言っても過言ではありません。
以下に、リーダーシップに必要な6つのふるまいを示します。
- 他者の言うことに耳を傾け、多くの質問をしながらコミュニケーションをとる
- プロジェクトチームのニーズに合わせ、メンバーから信頼される情報源になる
- チームメンバーをよく観察・記録し、メンバーが相談に来たらいつでも応対する
- 自身の知識の限界を認識する
- 意思決定する人物を見誤らない。自分でするべき場合は自身で意思決定を行う
- 権限委譲を適切に行う。必要以上に責任を抱え込みすぎない
リーダーとしては、プロジェクトの裏側まで熟知して、優先課題については冷静かつ客観的な視点を持って、メンバーに説明することが求められます。
問題を抱えるメンバーが相談に来たら、相談に乗ってあげる存在であることも大切です。
特にコミュニケーションにおいては、開かれたコミュニケーションを心がけ、チームメンバーとの信頼関係を重視し、部下のニーズに直接的に関与し続けることが大切です。
プロジェクトが上手くいかなくなるケースとしては、お互いの意思疎通が適切に取れていないことが要因の一つとして挙げられるので、常にコミュニケーションを欠かすことなく、プロジェクトを進めていくことが大切と言えます。
リーダーとしてメンバーに影響力を与えるための3つの要素
プロジェクトチーム内でリーダーシップを執るためには、メンバーからの尊厳を勝ち取る必要があります。
信頼できないリーダーには、誰もついていきたいと思わないでしょう。
そういった意味で信頼されるリーダーであるために、3つの切り口からリーダーの影響力について分析していきます。
1.専門知識について
1点目は専門知識についてです。
特別な知見を有していたり、専門領域において成功の実績があったりする場合は周囲から評価され、それが尊敬の念につながっていきます。
洞察力や知恵もこの部分に含まれ、専門知識を習得するのは長い時間がかかり大変なことなので、その分だけ、専門知識を有することは価値のあることと言えます。
専門知識を一度手に入れてしまえば「芸は身を助く」ではありませんが、ビジネスライフをより豊かなものにしてくれることは間違いないでしょう。
2.人間関係を活用する
2点目は人間関係を活用することです。
人間関係の影響力は影響力がある人同士の間で築くことで、より強力なものとなります。
こちら側を相手に理解してもらうことで、その人の影響力を活用することがポイントであり、一人ではできないことでも、複数人であればできることもあります。
そうやって他者との信頼関係を保ちながら、上手くバランスを取って、相互利用することでプロジェクトを進めていきます。
そういった意味でも人間関係を維持しておくことは大切なことであり、人間関係が失われれば、影響力も失われることを肝に銘じて行動することが求められます。
3.情報発信を上手くする
3点目は情報発信を上手くすることです。
情報発信を上手くするというのは、コミュニケーションによって相手に影響を及ぼすことです。
複雑な情報をわかりやすく伝えることで、信頼を勝ち取っていきます。
自分の考えを他者に売り込むことや、交渉によって目指すべき成果を上げることにもつながります。
情報発信する際には、論理的であることが重要です。
計画や課題を論理的に説明することで、意図を達成するための妥当性と権威が生まれます。
これらの3つの要素が全て兼ね備わったリーダーであれば申し分ありませんが、この中で自分にはどのスキルが足りていて、どのスキルが不足しているのかを見定めることが重要でしょう。
どれか1つでも自身の武器として使えるものがあれば、それを筆頭に、他のスキルを埋めていくという形を取ることもできます。
特に主要ステークホルダーに対する影響力を行使するために必要な要素を見極め、自分のスキルとすることで、プロジェクトを成功へと導いていくことが可能となります。
メンバーのためにできることはすべて行う
プロジェクトマネージャーの役割は日々刻々と変化します。
ある日はマネージャーとしてメンバーの生産性の向上や士気の高揚に注力し、ある日は事務処理や単調な仕事に忙殺されるなどといった具合です。
また、それはプロジェクトの進行とともに変化します。
定義フェーズや計画フェーズでは、ビジョンを策定し、主要ステークホルダーと会議・検討を進め、プロジェクト目標への合意形成に注力することになります。
計画フェーズでは単調な仕事が続き、メンバーが不平不満を言い出すかもしれませんが、そんな時も、我慢してやり切ることが大切だと力説する必要があります。
実行フェーズに入れば、メンバーの支援やコーチングをしてプロジェクトを完成へと導いていきます。
プロジェクトの成果物にステークホルダーが満足していただけるように、適切なコミュニケーションを取ることも大切です。
ここには書ききれないほど多くの役割がプロジェクトマネージャーにはありますが、すべての仕事において、良い仕事を期待されます。
それはリーダーとしての立場でも同様のことであり、メンバーのためにできることはすべて行うつもりで、プロジェクトに臨むべきでしょう。
結果的にそれが自分自身にもプラスに働き、プロジェクトを円滑に進める手助けとなります。
なぜ自分がリーダーの立場にいるのかを、よく考えながら行動することで、プロジェクトを推進していくことができます。
他の人にはない何かがあって、リーダーやプロジェクトマネージャーに任命されているのですから、そこは思い切って自分をさらけ出していくことが重要です。
まとめ
プロジェクトリーダーとして、リーダーシップを発揮するための秘訣についてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
プロジェクトは生き物であり、一筋縄ではいきません。
さまざまな困難を乗り越えた先に、成果物の完成が見えてきます。
そういった意味でも、多くのプロジェクトに携わり、さまざまな経験をしてきた人の方が課題解決能力を発揮しやすくなると言えるでしょう。
一つの道では通れなくても、複数の道を用意しておくことで、解決につながることも多くあります。
あらゆる経験を無駄にせず、自らの肥やしとして次のプロジェクトへの糧にしていくことが大切です。