本記事ではPPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)の考え方や代表的なシステム、システム導入時のポイントについてご紹介していきます。
もともとは、1970年代に提唱されたプロダクト管理手法ですが、PPMはここ最近注目されているビジネスワードの一つでもあります。
というのも、PPMシステムの登場により、PPMの概念がさらに浸透したからです。
今回は、PPMをわかりやすく解説しつつ、PPMシステム導入のメリット・デメリットや主要サービスについてご紹介していきます。
PPMシステムに限らず、何らかのシステム導入を検討することで、より企業の発展に貢献していくきっかけになれば幸いです。
目次
そもそもPPMって何だ?
そもそもPPMとは
PPMを簡単に言うと、プロダクトに対する投資コストを適切に管理して投入するためのものです。
近年の顧客のニーズは非常に複雑化・多様化しており、さらに短期化してきています。
つまり、各プロダクトのライフサイクルを把握し、成長期・売上期・撤退期などのフェーズを管理することで、売上を出しつつ損失を無くしましょうというものです。
プロダクトライフサイクルが短期化したことによって、これらのフェーズの早期把握が強く求められるようになってきました。
PPMではプロダクトに対して、「問題児」「花形製品」「金の成る木」「負け犬」という4つの概念で構成されています。
それぞれについての考え方を見ていきましょう。
問題児
導入から成長期にあたるプロダクトで、激化する競争を勝ち抜けるプロダクトにすることで花形製品へと成長します。
しかし、シェアを確保できなければ、負け犬となってしまうプロダクトの分岐点のような立場です。
花形製品
シェアを多く獲得しているプロダクトですが、投資コストも大きいことから大きな収益につながることはありません。
したがって、シェアを維持して金の成る木へと育てていく必要があります。
金の成る木
成熟期に入ったプロダクトで、多大なコスト投資が必要ないため、多くの収益が生み出されます。
しかし、どんなプロダクトもいつしか衰退を迎えて撤退期に入るので、収益があるうちに問題児や花形製品に投資しておくことが大切です。
負け犬
問題児が成長期に入れなかったり、金の成る木が衰退したりすると負け犬となり、収益を生み出さないプロダクトとなってしまいます。
しかし、多くの経営者がこの負け犬に再起をかけて投資するのですが、それが仇となって大きな損失を生み出してしまうことも往々にしてあります。
PPMでは、上記のように4つの考え方に製品を分類し、投資すべきプロダクトの存在を明確にすることがポイントです。
他にもPPMの概念はいろいろとあるのですが、代表的な4つの考え方を理解しておくことで、ビジネスの幅も広がってきます。
PPMのメリットは、プロダクトのフェーズ確認を実現することでのコストダウンと言えます。
ダウンというより、無駄なコストを投資しなくて済むようになるという考え方をすることもできます。
デメリットとしては、システム導入費用が高価で自社サーバが必要なことが挙げられます。
つまり、情報システム担当者がいない中小企業では、導入が一筋縄ではいかないケースが多いでしょう。
続いて、PPMシステムを提供する主なサービスについてご紹介していきます。
主要PPMシステムサービス2選をご紹介
サービスの紹介をする前に、PPMシステムについてですが、具体的に何ができるのかというと、一つ一つのプロダクトを統合的に管理することができます。
例えば、一つのプロダクトに使用される原料やコスト、プロジェクトの進捗具合など、いわゆる各プロダクトをトータル的に管理することができるというものです。
もちろん、企画段階から製造・販売段階に至るまで一貫して管理することができます。
機能は各サービスによってまちまちで、以下に代表的なサービスを2つ、特徴とメリット・デメリットをご紹介していきます。
1.HP(ヒューレットパッカード)
HP社が提供するPPMシステムは、様々な業界に対応したオールラウンド的なソリューションと言えます。
メリット
HP社の情報システム部門で自社のPPMシステムを導入したところ、40億ドルの利益を上げることに成功したと言われています。
(2012年3月21日(米国時間)に発表されたリリースによる)
つまり、自らの経験を持ってPPMシステム運用のノウハウを熟知しているので、単なるシステムの導入だけでなくトータル的なサポートを受けることも可能でしょう。
初めてPPMシステムを導入する企業では、おすすめのソリューションと言えます。
さらに、プロダクトの管理数は数百~数千まで同時管理可能であり、プロダクト投入前の期間を短期化できる機能が充実しています。
加えて、オンプレミス型とクラウド型の2つの利用形態で提供しているので、情報システム担当者がいない中小企業でもクラウド型での導入がしやすいです。
デメリット
強いて言えば、インターフェースが初心者にはやや使いにくいことでしょう。
導入までに時間がかかることが想定されるので、あらかじめシステムの利用教育をしてキーマンを配置することがポイントです。
2.新日鉄住金ソリューションズ(NSSOL)
新日鉄住友ソリューションズでは、CA Technologies社が提供するCA PPMを用いて、PPMシステムを展開しています。
メリット
新日鉄住金ソリューションズが提供するPPMシステムでは、プロジェクト管理機能によって、実に詳細までプロダクトの管理を行うことができます。
プロジェクトを高度な単位でまとめて、より詳細に管理することによって投資コストの全体像を把握することができます。
必要に応じて、投資するコストの意思決定を迅速化します。
ちなみに、こちらもクラウド型で提供されているので、情報システム担当者のいない中小企業でも導入しやすい製品と言えます。
デメリット
デメリットとしては、自社オリジナルソリューションでないことから、サポート対応にやや不安が残る点でしょう。
迅速な対応が必要なトラブルが発生した時ほど、このデメリットが露呈するので、導入に際して製品担当者と話し合うなどして、十分に検討すべきポイントに入れておきたい項目です。
以上が主要PPMシステムの紹介となります。
続いて、PPMシステム導入を成功させるために、気をつけておきたい4つのポイントについてまとめていきます。
PPMシステムの導入を成功させるための4つのポイント
PPMシステムの導入を成功させるためには、いくつかのポイントに注意しなければなりません。
そのポイントについてご紹介していきますので、参考にしていただければと思います。
1.スモールスタート
PPMシステムは、他の業務システムと違ってリプレースが難しいシステムです。
導入にかかるコストや構築までにかかる人件費、さらにシステムに蓄積されていくデータなどを考慮すれば、失敗は許されないでしょう。
そこで、PPMシステムではスモールスタートを切ることがポイントです。
具体的には、クラウド型PPMシステムを一部的に導入して、現状の課題を一つ一つクリアしていくことが大切です。
言わば、全社的に導入する際の下準備のようなものです。
最初から全社的に導入しようとすると、目の前に現れる課題に翻弄され、導入失敗となる可能性が高まってしまうためです。
2.クラウドを選ぶ
クラウド型PPMシステムを選ぶメリットは、スモールスタートを切ることだけではありません。
PCとインターネットさえあれば、どこでも利用できるというクラウド製品の特性上、外出先からもプロダクト管理を行うことが可能です。
さらに、拠点間でのデータ共有もシームレスなので、PPMの幅も広がります。
また、自社サーバを設置する必要がないので導入コストが安価であり、サーバ運用が必要ないことも大きなメリットと言えます。
オンプレミス型製品のようなカスタマイズ性はありませんが、クラウド型を選ぶことで、より多くのメリットを享受できるでしょう。
3.運用体制を整える
PPMシステムを導入すれば、確実に収益を生み出すものではなく、あくまでプロダクト管理を支援するためのツールという認識をしておくことが大切です。
したがって、これまでの業務を自動化できる部分もあれば、反対に今まで通りの管理手法で管理できる部分もあるでしょう。
そして、PPMシステムの導入を成功させるためには運用体制の構築が重要です。
これまでの管理手法とは異なるものになるため、運用体制も改めて構築し直す必要があります。
運用体制の構築が上手くできていないために、導入失敗となる企業も散見されるので、抑えておくべきポイントと言えます。
4.目的を明確にしておく
PPMシステムの導入に際して、目的が明確になっていない企業があることもあります。
目的が明確になっていないがために、システム選定基準にブレがあり、適切なシステム選定ができなかったり、導入後の運用が上手くいかなかったりと諸々の失敗要因を作り出してしまいます。
現状はどのような課題があるのか?
PPMでどう解決していけば良いのか?
どんな機能があれば良いのか?
など、目的を定めると共に、PPMシステムに対する要件を洗い出していきましょう。
そうすることで、本当にPPMシステムが必要なのか、実は他のシステムで代替できるのではないか、はたまた今はシステム導入の必要がないのではないかといった建設的な議論を行うことにつながります。
最終的にシステム導入に至った場合でも、話し合いの結果、導入することになるので、運用もよりスムーズにいく可能性が高まります。
まとめ
PPMについての基本的な考え方から、代表的なPPMシステムのご紹介、PPMシステム導入の際のポイントについてご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
ますます競争が激しくなっていくであろう今後のビジネス社会において、より安くより高品質の製品を提供できる企業が生き残っていくことは想像に難くありません。
そういった中で、製品製造の際の無駄なコスト削減を行っていくという意味でも、PPMシステムの導入によってプロダクトライフサイクルを一元的に管理していくという手法も一つのソリューションとして提案することができます。
一つの選択肢にこだわるのではなく、数ある選択肢の中から最適なものをチョイスすることで、企業の発展により貢献していくでしょう。