製造業などのものづくりに関わる業種では、いわゆる「工程管理」という考え方が浸透しているのではないでしょうか。
一つ一つの作業工程を、いかに無駄なく効率的に行えるかを考えて、日々の業務を行っていくことで、コスト削減や利益アップにつなげていくための管理です。
当然、一人一人の意識で変わってくる部分もありますが、システム等を用いて管理することで、より効率的な工程管理につながる可能性もあります。
本記事では、CIMや歩留まりシステムの概要、それぞれのメリット・デメリットについてご紹介していきます。
工程管理に行き詰まりを感じている方や、これから工程管理を開始してみようという方がいらっしゃれば、是非参考にしていただければと思います。
作業の効率化が求められている現代社会において、工程管理を推し進めていくのは、企業や組織にとってプラスになることが多いと言えるでしょう。
工程とは?工程管理に関する考え方!
工程や工程管理に関する概念
何かを製造する、いわゆる「ものづくり」に関して必ず出てくる言葉に、「工程」というワードがあります。
これはどういったことかと言うと、例えばプラモデルを作る時のことを思い浮かべるとわかりやすいかもしれません。
箱を開ける→部品を切り取る→組み立てる→色を塗る、アバウトに言うとこのような作業順序になります。
これらの「箱を開ける」、「色を塗る」といった一つ一つの作業のことを工程と呼びます。
そして、その流れ、つまり過程にあたるものを「プロセス」と呼びます。
この工程というのは、もっと細かい作業手順や作業効率も含まれています。
例えば、先程のプラモデルの「色を塗る」工程の場合、目や口を先に塗ると顔の塗料が付着するので顔から先に塗りましょう、などといった作業手順を守ることです。
一般的にものづくりの現場では、そういった作業手順書やトラブルシューティングが置いてあります。
これは、より作業を効率良く動かすための「工程管理」の一環だと言えます。
要は、同じプラモデルを作るのにAさんは1時間、Bさんは3時間必要となると、Bさんの作業が遅いということもありますが、Aさんの作業効率が良いということにもなり、メンバーごとにばらつきが出てきてしまいます。
そういった作業効率の悪さをなくすためにも、全員に同じ作業工程で作業するように展開していく必要があります。
こういった可視化のことを、製造現場においては「見える化」と言います。
見える化とは、別名「見える管理」とも言われていて、工程管理においても最も重要なファクターの一つとなっています。
どのような方法で管理するのか?
まず人員の配置という点においては、「作業工数」というものが必要になってきます。
作業工数とは、工程の作業において、どれだけ作業時間が必要かということを算出して、適正な人員をそこへ送り込むためのひとつの目安となる考え方です。
例えば、先程のプラモデルが人並みに大きなプラモデルだとしましょう。
「部品を切り取る」工程の作業時間が10分で人員は1人、「色を塗る」工程の作業時間が5時間で1人だった場合には、明らかにバランスが悪いと言えるでしょう。
これをもっと細かく、肩を塗るのに15分、足を塗るのに30分…などとした上で工数をたたき出します。
それにデリバリー(納期)も関わってくるので、そういったことまで把握する必要があるのです。
それが「作業工数」というものです。
当然、もっと効率の良い作業性に改善された箇所があるとすれば、それは作業工数にも関わってきます。
これを使うメリットとしては、大まかな人員配置や作業性を把握できるということです。
しかしその反面、製造現場において、品種の変化や生産数の変化もあり、これだけ見ていても非効率になってしまうので、他のシステムと並行して使用することがポイントです。
CIMデータを活用した工程管理
どの製造現場においても、必ずと言って良いほど使用されているのが、CIMデータによる工程管理です。
ちなみにCIMとは「Computer Integrated Manufacturing」といって、簡単に言うと製造情報の詳細を把握できるシステムのことです。
「見える化」にも一役買っていて、工程管理には必要不可欠なシステムの一つであると言えます。
特に工程が何工程にも及び、複雑かつ繊細な製造業においてはCIMデータからの情報が全て、という製造現場すら存在しているほどです。
CIMデータから見えてくる情報
先程述べた製造情報とは、具体的にどのようなものがあるのかについて説明していきます。
企業・製造業種によっても異なりますが、CIMデータからは主に製造された「製造開始時間・製造完了時間」「製造ライン」「製造装置」「良否判定」「識別情報」などを把握することができます。
CIMを使うことによって、ほぼタイムロスのない生きた情報をリアルタイムに得ることができるのです。
CIMのメリット
どの製造現場でもCIM情報というのはかなり信頼性が高いもので、正確な情報を瞬時に得ることが可能です。
装置の異常や、異常に気付かずに出荷されてしまった時の対処にも使用されるほどに信頼されているシステムです。
ニュースでも取り上げられることがあり、「食品関係の加熱不足とか時間が経過したものを使用しているからこの製造ロットを回収」などは恐らくCIM情報からロットを特定していると推測できます。
製造現場での合理化やコスト削減などの課題が発生した場合には、改善する必要性が出てきます。
そういった改善を行うことによって得られる結果や計時変化を、CIMデータから得ることができます。
こうした信頼性の高い情報をどういったシチュエーションでも活用できる、ということが最大のメリットではないでしょうか。
CIMのデメリット
しかし、反面デメリットもあります。
特に比較的工程が少なく、人による作業が多いような製造現場においては、過信すると商品事故の原因になりかねません。
CIMデータばかりを頼りにすることによって、現場をおろそかにしていると、予想もつかないような場面に遭遇することもあります。
例えば、作業手順を誤って捉えた作業者が、異なるマニュアルで製造を行っていた場合には製造ロスとなってしまいます。
もちろん、CIMデータを見ていれば把握できることもあるかもしれませんが、数時間経たないと得られない情報だった場合には取り返しがつかないこともあります。
つまり、正確なデータだからと言って、本来CIMでは得られないような場面でもそこから情報を得ようとする癖が出てしまうのです。
他には生産情報があまりにも多いと、情報を出すのに時間が必要となることがあることもデメリットとして挙げられます。
スピーディーな意思決定が必要な場合、生産情報が多すぎると、CIM情報だけに頼っていると時間がかかってしまうので、その他の指標も準備しておくことが大切です。
歩留まりシステムやExcelを使った工程管理
歩留まりシステム
歩留まりシステムとは、各ラインの大まかな製造情報を共有するためのシステムです。
この情報があると、前後の工程の情報もリアルタイムに把握することができます。
このように説明すると、CIMとは違うの?と思われる方もいるかもしれません。
実際には、CIM情報を基にしたデータなので、同じカテゴリには含まれるでしょう。
CIMの場合はこちらから欲しい情報を選択して、その情報をExcelファイルなどのフォーマットに反映させて送られてきます。
一方で歩留まりシステムの場合は、常に大まかな情報が表示されていて、かつ全体の情報を得られるので、前後の工程まで視野を広げることができるのです。
簡単に言うと、要求してデータとして送信するのか、最初から表示されているのかの違いです。
生産管理においても、CIMデータと双璧を成すシステムと言っても過言ではありません。
歩留まりシステムのメリット・デメリット
例えば、前の工程から製品がラインに乗ってこない場合があるとしましょう。
CIMでデータを収集しようとすると、どの工程かを把握するために前工程全ての情報を集めようとします。
そうすると、データが重くなる上に、必要のない情報まで送られてきます。
反面、このシステムを使えば歩留まりの悪さから、一目でどの工程でトラブルや問題が発生しているかというのがわかります。
基本的には全ての工程において共有されている情報なので、まさに「見える化」を象徴するようなシステムだと言えます。
デメリットはCIMほど詳細なデータを収集するのは不可能なので、細かい情報を得ようとするのには不向きと言えます。
Excelを活用する
製造現場において基礎とも言えるのが、Excelの活用です。
ご存知の通りMicrosoft Officeソフトの一つですが、製造現場の中でも特に工程管理という点では必須と言えるでしょう。
というのも、どれだけCIMデータや歩留まりシステムを使いこなしたとしても、それらの情報を処理しなければ意味が無いからです。
データを一つ一つメモに起こしたり、膨大なデータを電卓で計算したりするわけにもいきませんので、Excelを使う必要性が出てきます。
特に、膨大な製造数を誇るような現場では、僅か1時間でも何千・何万という生産数があるため、当然、製造情報もそれ以上になります。
そういった情報を瞬時に処理するためには、Excelが必要となります。
特に、グラフやピボットテーブルなどを駆使して、より把握が簡単な形式に置き換えることによって、人が見た場合でも瞬時に判断が可能となります。
Excelのメリット・デメリット
最大のメリットは、様々な情報を処理することができるところです。
同じ情報を処理する場合、どれだけ膨大なデータでも少ないデータと変わらない時間で処理することができます。
使い方を理解していれば、誰が見てもわかるような形式に変換することも可能です。
デメリットは、Excel自体マクロ(動作の記録)を使用したとしても、所詮人が行っている動作です。
Excelの特性上、マニュアルもある程度までしか作成できません。
つまり、ミスが発生する可能性があって、利用する人によって情報が活かされないケースが出てくることがデメリットと言えるでしょう。
まとめ
製造現場における工程管理には様々な課題があります。
そういった課題を解決するのに不可欠なシステムがCIMや歩留まりシステムで、本当に便利だと言えます。
しかし、どれだけ正確な情報を得たとしても、最終的な処理は人員によるものです。
システムに対して過信することや自身を過信すると、本当に必要な情報を見落とすことにも繋がりかねないので注意が必要と言えます。
飽くまでツールは利用するものであって、ツールに振り回されてはいけません。
必要な情報を切り取り、そこから分析・改善を重ねて、より良いものづくりにつなげていくことが大切です。