プロジェクトにおいて、設定した目標について特定の人員、期間、予算の中で望ましい成果を生み出すにはどのようなことが求められるのでしょうか。
プロジェクトを実行するプロセスでぶつかるものには、予算やスケジュールといた問題もあると思いますが、特に大きな障害となるのは人との関わりです。
人間関係は厄介なものではありますが、人間関係を良好なものとすることでプロジェクトをより円滑に進めることができます。
そのため、まず初めにやるべきことはステークホルダーが誰なのか把握して、彼らを満足させることです。
プロジェクトに限らず、日常生活においても何らかの目標を設定して達成させる過程で様々な人と関わることがあるでしょう。
その人たちが自分とどのような繋がりを持っているか、行動する上でどのように関わっていくかを意識することで、次に自分がやるべきことや全体像も見えてくるでしょう。
主要ステークホルダーの特定と分類
「ステークホルダー」とは、企業にとって顧客等の利害関係者であり、プロジェクトの意思決定や行動に影響を及ぼし、自らも影響され得る個人やグループ・組織のことを指します。
企業においては、社内外の顧客や株主、プロジェクト・チーム、提携企業、地域住民等の特定の利害を持つグループなど、様々なステークホルダーが存在します。
例えば、化学プラントの建設プロジェクトではプロジェクトをともに進めるメンバー、プロジェクトを実行する建設業者、国や地方自治体の担当官、環境活動家グループなどが考えられるでしょう。
ステークホルダーごとに、①プロジェクトに対する組織内の権限、②計画や実行における影響力、③プロジェクトへの参加、④成果に対する関心の度合いも異なります。
さらに、プロジェクトに対して否定的な人や、自分よりも上位の立場にいる上司、経営層などが含まれることもしばしばあります。
プロジェクトを管理して効率的に実行していくために、彼らの中でも特にプロジェクト成功に関わる人たちを特定することが大切です。
ここで注意しなければいけないのは、同じ立場や関係にあると思われる人たちでもプロジェクトにおける立ち位置が異なるということです。
顧客であれば、プロジェクトの承認や変更の権限を持つステークホルダーや、状況報告にとどめるべきステークホルダーが存在し、適宜判断しながら行動することが求められます。
プロジェクト・スポンサーの支援を得る
ステークホルダーの中でも特に重要なのが、プロジェクト・スポンサーと呼ばれる人たちです。
プロジェクト・スポンサーは、プロジェクト実行の責任をプロジェクト・マネージャーと共同で負い、チーム全員の成功を支援してくれる「後ろ盾」となる存在です。
社内プロジェクトでは、経営陣など上位のマネージャーにあたる層が該当し、外部顧客向けプロジェクトでは、顧客組織の中で意思決定と資金提供の権限を持つ人が該当することが多いです。
「スポンサー」という言葉から金銭的なサポートをイメージされるかもしれませんが、プロジェクト・スポンサーの権限や貢献は多岐にわたります。
具体的には、プロジェクトの開始を宣言して必要なヒト・モノ・カネの権限をプロジェクト・マネージャーに付与するプロジェクト憲章の発行や、必要な要員確保への支援などを行い、組織的・政治的障害を対処するための手助けをしてくれます。
社外のプロジェクトでは、他部門の人や重大な利害のある顧客の代表者がスポンサーとなり、意思決定や仕事上の約束を果たす際に助力を得られるケースもあります。
その他にもプロジェクト・スポンサーの代表的な役割には、以下のようなものがあります。
- プロジェクトの成功について、最終的な権限、実行責任、説明責任を担う
- プロジェクト目標達成に向けた革新的な取り組み支援
- プロジェクト憲章や計画書、作業記述書を承認
- プロジェクトの成果物の承認
- プロジェクトのスコープ、スケジュール、予算の監視
- 社内政治など対立の解消
このように、スポンサーと良いパートナーシップの関係を築くことは、プロジェクト成功のカギとなります。
マネージャーの権限を超えた課題に直面した時は、スポンサーに上申するプロセスを確立しておくことが大切です。
しかし、スポンサーが助けてくれるといっても、プロジェクト進行中にサプライズ(不意打ち)を与えないよう、自分がどのような打ち手を考えているのかを予め説明するなど、プロジェクトにおいての共通認識を得ることも重要です。
チーム外のステークホルダーを巻き込む
プロジェクトを進めていく上では、社内外のチームの外側でも様々なステークホルダーを巻き込むことが大切です。
チーム顧客の代表者などを含めた何人かのステークホルダーを集め、プロジェクトのスケジュールや関連文書などを承認・同意する委員会を構成しましょう。
このような機関には、プロジェクトから生み出された製品やサービスを活用する顧客の代表者に参加してもらいます。
その他に、承認をする立場であり、主に技術・マーケティングといった部門の責任者などからなる機能部門マネージャー及び経営陣にも入ってもらいます。
また、プロジェクト終了後にビジネス上の効果を結びつけるために、マーケティング・IT・経理等の部門を巻き込んだ委員会を別でつくり、チームごとに技術上の選択肢や成果物のビジネスへの影響の評価をしてもらいましょう。
機能部門マネージャーなど主要なステークホルダーに、メンバーを推薦してもらうのも良いでしょう。
機能部門マネージャーはプロジェクトにメンバーを送ってもらう立場であるため、よく連携して、最善のメンバーを送ってもらうようにすることがポイントです。
プロジェクト・マネージャーはプロジェクトの進捗状況や、メンバーのパフォーマンスをステークホルダーに報告する必要があります。
問題点があれば解決を支援してもらうこともできますが、反対に報告を怠るとプロジェクトを脱線させられてしまう恐れもあるので注意が必要です。
このように、プロジェクトを円滑に進めていくためには、チーム外でプロジェクトに対して「権限」や「影響力」の高い人からの関心を集めることが大切です。
承認や調達プロセスを円滑にするために、公式な権限を持つ人を特定することに加えて、非公式な拒否権を持つ人も特定する必要があります。
こういった人々もまた、重要なステークホルダーとなってくることがあるためです。
ステークホルダーをまとめあげる
ステークホルダーを結集させて、プロジェクトの重要な点についてプロジェクトの合意形成を図るのは、プロジェクト・マネージャーの責任となります。
先述したように、権限や影響力の高いステークホルダーと関わることが重要であるため、プロジェクトの管理者として、マネージャーよりも上位の人に対して指示することも求められます。
上の立場の人に意見を言うのは中々難しいことかもしれません。
しかし、組織全体として良い方向に向かっていくためにも、言うべきことはきちんと言う姿勢が大切です。
その際には、マネージャーとしてのリーダーシップや、良好な人間関係を構築することが大切であり、プロジェクトの各フェーズでステークホルダーを調整・指揮する必要があります。
これを、「上をマネジメント」すると表現されることもあります。
この「上をマネジメント」することを円滑に行うことが、プロジェクト成功のための秘訣となります。
まとめ
プロジェクトを上手く管理して効率的に実行し、成功へと導くためには、そのプロジェクトの大局を把握することが大切です。
その過程で、ステークホルダーを把握することの重要性についておわかりいただけましたでしょうか。
プロジェクトの立ち上げ→計画→実行→監視・コントロール→終結というプロセスにおいて、彼らは目標設定・計画策定などに大きな影響力と権限を持つので、初期段階だけでなく全期間でステークホルダーが誰であり、どのような役割であるのかを捉えることが大切です。
そこで、プロジェクトにおいてより高い生産性のもとで、アウトプットを出すために必要なステークホルダーのおおまかな分類や対応方法についてご紹介しました。
実際に、主要なステークホルダーを分析する際には次のような質問を設けてみると良いでしょう。
- プロジェクトにより影響を受ける人や部門は?
- プロジェクトについてその人の責任、権限は?
- プロジェクトの影響を及ぼす人は?またその人はどう影響を及ぼすか?
- その人にはどんな情報を伝え、どんな技術を使うのが効果的か?
- 主要ステークホルダーからどのようにフィードバックを受け取るか?
そして、ステークホルダーには以下のものが必ず含まれることは押さえておきましょう。
- プロジェクト・マネージャー
- 顧客
- スポンサー
- 機能部門マネージャー
- チームのメンバー
このように、プロジェクトに関わるステークホルダーを特定することで、プロジェクト全体を見渡しながら計画して、高い生産性で実行していくための橋渡しとしましょう。