プロジェクト管理手法として、よく利用されるのがPMBOKという考え方ですが、今回はそのPMBOKについて、概要から入り、その限界、有効的な活用方法に至るまでをご紹介していきます。
PMBOKというフレーズを聞いたことがあっても、なかなか勉強する機会がないという方や、これからプロジェクト管理について学んでいきたいという方向けに、PMBOK学習の簡易版としてお読みいただければと思います。
知識を身につけておいて損をすることはないので、まずは実践前に概要だけでも知っておくことで、いざプロジェクト管理を行う立場になった時に、役立つことが出てくると思います。
目次
1.知識集PMBOKとはどういうものか
PMBOKはProject Management Of Knowledgeの頭文字をとったもので、プロジェクトマネジメントの手法やノウハウをまとめた資料です。10の知識エリアと5のプロセス、3のパートに分かれており、プロジェクトマネジメントに必要な要素がまとめられています。
プロセスにはプロジェクトのライフサイクルに合わせて実施すべき作業が定められています。パートでは実施作業を行う方法について、材料となるインプット、インプットを加工するツールと技法、最終的な成果物であるアウトプットが示されています。
アメリカに本部を置く非営利団体のPMI(Project Management Institute)が作成したもので、PMI日本支部も設置されています。プロジェクトマネジメントの世界標準となっており、4年ごとに内容が改訂されています。
1-1.10の知識エリアと5つのプロセス
まず、PMBOKによってプロジェクト管理は「10の知識エリア」と「5つのプロセス」に体系化されます。
10の知識エリアは、 以下の通りです。
- 総合管理
- スコープ管理
- スケジュール管理
- コスト管理
- 品質管理
- 組織管理
- コミュニケーション管理
- リスク管理
- 調達管理
- ステークホルダー管理
5つのプロセスは、以下の通りです。
- 立ち上げ
- 計画
- 実行
- 監視・管理
- 終結
これらを図にまとめると、以下のようになります。
各プロセスで何を管理するべきかという知識やノウハウの定義が体系化されています。
例えば、統合マネジメント1つに着目した場合でも、立ち上げ、計画、実行、監視・コントロール、終結の5つのプロセスそれぞれに統合マネジメントに特化したノウハウがまとめられているのです。そして、プロセスにはさらに
- 入力
- ツールと実践
- 出力
が定義されます。
これらは何からどのような手段で目的とするものを作り出すかという定義です。
重要なのは、プロセスもコントロールする必要があるということです。
プロジェクト管理の3つの要素であるQuality(品質)、Cost(原価)、Delivery(納期)はQCD管理とも言われており、最終的な目標とされています。
PMBOKでは目標を達成するまでの経過もマネジメントすることに意義があるとし、モダンプロジェクトマネジメントと呼ばれることもあります。
業界を問わず、世界で通じる知識とノウハウなので、プロジェクトに携わる際に具体的な手段を考える基盤となります。
PMBOKが知られるようになるまで、プロジェクト管理は統一されておらず、人によって様々な手法で行われていました。
また、QCD管理中心のプロジェクトマネジメントが通常とされ、プロセスを対象とすることに重点を置いていませんでした。
PMBOKは具体的な目標達成方法を記すものではないため、その手段は自ら考え、使用するツールを用意することが必要となります。
PMBOKを有効に活用するためには、プロジェクトマネジメントの教育や実践における取り組みを参考とするなど、利用方法を知っておくことがポイントです。
PMBOKの概要をまとめたものにPMBOKガイドがあり、プロジェクトマネジメント知識体系の中で一般的に認められている部分を特定することや、普段から良い実務が行われることを目的とし、プロジェクトマネジメントのテキストとして幅広く活用されています。
また、以下の記事では10の知識エリアそれぞれに必要な基礎知識と実施作業を丁寧に解説した10記事をまとめておりますので、PMBOKについてさらに詳しく学びたい方はぜひご覧ください。
【PM初心者必見】プロジェクト管理に必要な基礎知識や手法を包括的に学べる記事15選
2.PMBOKの限界やデメリットについて
2-1.PMBOKの限界
あるコンサルタントによると、PMBOKはプロジェクトメンバーの共通認識やプロジェクトについての把握が明確であることは良いが、普段とは違う、あるいは想定していた結果とは異なる事態が生じた場合の対処方法は定められていないことが、PMBOKに対する不安の原因になっているとのことです。
また、プロジェクトマネジメントが標準化され、経験の浅いプロジェクトマネージャーであっても成果を出せるようになった反面、経験豊富なプロジェクトマネージャーは型に縛られ、経験で身に付けた独自のスタイルや判断の有効性が問われる恐れがあるとも指摘しています。
PMBOKで効果が得られる反面、臨機応変な対応や柔軟性のある考え方や対処、自分自身で判断する能力の低下を懸念する声もあります。
共通概念と用語で世界共通としたPMBOKは、イレギュラーなケースに対しては効果が見えにくいという意見が挙げられることもあります。
プロジェクト管理には正解がないという事実も、PMBOKを限界たらしめている一因と言えるでしょう。
PMBOKは、各プロジェクトにおける絶対的な答えを記しているわけではないからです。
2-2.PMBOKのデメリット
また、標準に従うことで改善意欲が低下するという懸念の声も挙げられています。
そして、プロジェクト固有の決まりごとや習慣、言葉などを標準化するための翻訳作業が必要となり、そのために時間や労力が費やされるケースもあります。
プロジェクト自体に個々の特徴があるため、多くのことを統一する概念に不自然な点が現れることもあります。
しかし、デメリットとなることの多くは、標準化にあると言えるでしょう。
臨機応変な対応が必要となる場合はコミュニケーションを図り、違った角度からプロジェクトを見直す必要があります。
そういった時こそ、熟練のプロジェクトマネージャーに相談し、対応事例として残しておくことが大切です。
また、翻訳作業は大変なことですが、統一した状態になれば便利です。
世界標準となるものは、物理の単位のように他にも存在します。
PMBOKにあるプロセスのうち、立ち上げと計画は特に綿密にプロジェクト関係者と意識を合わせることが重要です。
そして、確認しながら作業を進めることは品質の向上にも繋がります。
イレギュラーなケースはPMBOKに関わらず発生することもあるので、作業工程に時間をかけることは避けた方が無難でしょう。
一方で、メンバーや作業関係者とプロジェクトを成功させるために、ミーティングを開いてアイデアを出し合うことも次へのステップとなる可能性も十分にあります。
他国でのプロジェクトも認識のずれがないように、コミュニケーションを重視します。
PMBOKからプロジェクトに関する手法を学び、良い所を採用する方法が望ましいと言えるでしょう。
自分のチームやプロジェクトに合った考え方や手法を取り入れていくことが大切です。
3.WBSを用いてPMBOKを有効的に活用!
3-1.WBS(work breakdown structure)とは?
プロジェクトマネジメントの計画において、WBS(work breakdown structure)と呼ばれるタスク管理手法があります。WBSは、仕事の詳細を区分して段階構造に表した図表を作成し、作業を体系的に把握するためのものです。
プロジェクトで実施される作業を全て考慮し、工数の見積り、日程計画、調達管理、役割分担、コスト管理やリスク管理など、コントロール単位を明確にします。
まず、プロジェクトの目的を定め、最終的な成果物を具体的に決めます。
そして、成果物に至るまでの中間成果物に分割し、プロジェクトを開始する段階で不確定の場合は、大きな分割を定義しておいて、プロジェクトの進行状況によって細分化します。
WBSが完成すると、実際に行わなければならない全ての作業が定められたことになり、それらが全て完了すれば、プロジェクトの完了となります。
WBSによって作業の不足や重複、プロジェクト関係者の間での誤認を防ぐことが可能となります。
図表では不十分な場合、誤解やあいまいさを排除するためにWBS辞書を備えておきます。
WBSテンプレートなどのツールを用意しておくことで、作業の効率化を図ることができるでしょう。WBSについてさらに詳しく学びたいという方は、こちらの記事も是非ご活用ください。無料のExcelテンプレートも配布しております。
【WBSをこれから作成する人必見】WBSの基礎知識と作り方を理解しよう!Excelテンプレート付き
3-2.PMBOKやWBSを活用してプロジェクトを成功させるまで
システム開発企業を例にすると、PMBOKの5つのプロセスで立ち上げについては開発関係者との信頼を築きながら、プロダクトやサービスの最終形を決めます。
プロダクトやサービスの最終形はスコープと呼ばれ、PMBOKでは立ち上げではなく計画段階で定義されますが、予算やスケジュールも考慮し、最終的な成果物を立ち上げで定義します。
次に、計画ではプロダクトやサービスの機能一覧とスコープ定義書からWBSを作成し、WBSの各作業に対する人員が不足した場合は、パートナーや協力会社から人員を増やします。
ここまで終えたら、計画で定義したWBSに従って、プロジェクトを実行していきます。
この段階では、チームによるマネジメントが重要で、監視・コントロールでは変化に対応できる仕組みを築いておくことが成功率を上げる秘訣と言えます。
クライアントから、スコープの変更依頼や仕様に問題があれば、その点について変更を行います。
また、見積額に大きな変更がある場合など、変化に応じて対処することがプロジェクトの円滑な進行にあたってのポイントとなります。
開発プロジェクトでは様々な変更が日々のように生じます。
具体的に、変更管理をコントロールするチームを作っておくという手段があります。
変更があればWBSも改訂し、納品と検収を経て終結となります。
KTP法(Keep, Problem, Try)に基づいて、継続したい点や問題点、試したい内容を次のプロジェクトのために残しておくと良いでしょう。
対処プロセスの構築など、各プロセスでアウトプットしたものを次へとつなげることで、PMBOKはより有効となります。
まとめ
PMBOKについて、その概要から、デメリット、有効的な活用方法などをご紹介してきましたが、いかがでしたでしょうか。
PMBOKはあくまで、プロジェクト管理手法の一つの考え方であり、それに頼りすぎることなく、プロジェクトを進めていくことが大切です。
当然、PMBOKを頭に入れておくことで、プロジェクト管理の基本的な考えは理解できるので、その基本をもとに応用的に活用していくことが大切だと言えるでしょう。
プロジェクトは生き物であり、一筋縄ではいかない部分も多くありますが、まずは管理知識から身につけることで、経験をカバーできる部分もあるので、一度PMBOKに関して理解を深めておくことをお勧めします。
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