原価管理を行うことの重要性とメリット、事例について取り上げ、最後にある程度機能が豊富な上で、格安で利用できる原価管理ツールを2つご紹介いたします。
原価の考え方や原価計算などについて、基本的な部分から入るので、まずは原価という考え方に慣れていただき、その後で事例や製品の紹介という流れになっております。
原価管理が重要だということは頭ではわかっていたとしても、実行に移して、PDCAを回していくとなると、相応のパワーが必要となります。
今後の企業経営の改善点を洗い出すという意味でも、改めて、その重要性やメリットを認識していただき、行動に移せるように社内に働きかけていただければ幸いです。
※2019年9月17日更新
目次
1.原価管理の意味とツールの必要性
原価管理を行うことで、利益を上げることができます。
利益は、売上から原価を引いたもので算出されます。
そのため、なるべく原価を下げることが大切になります。
目標原価を設定し、実際の原価と比べて問題点の分析を行い、設計を変える、工程を改善するなど、対策を立てて目標原価を下げます。
原価は、仕入原価や製造原価に分けられます。
製造には、設備、材料、工程などが必要で、在庫を含めて原価計算を行います。
販売費、管理費、財務費、損失は原価に含めません。
原価に含めるか曖昧なものに関しては、それぞれルールを定めるようにします。
生産形態によって、計算方法は変わります。
生産管理における情報、会計の知識も必要です。
原価計算を行う目的は、以下の通りです。
1.財務諸表作成
損益計算書と貸借対照表を作成します。
2.価格の決定
製品・商品1個に対する売上原価と、適切な利益を考えて販売価格を決定します。
3.予算管理
売上計画、利益計画など、短期計画(年間)を立てます。
4.基本計画
設備計画、新製品計画、要員計画など、中長期の予測を行い、計画を立てます。
5.原価管理
目標原価を設定し、実際原価と比較し、改善点を考慮しながら原価低減を図ります。
仕入原価や製造原価を計算し、製品・商品の価格を決めるため、正確な原価が求められます。
為替レートが原材料などに影響するケースを考えると、正確な原価を把握することは困難と言えます。
アメリカでも議論となった直接原価計算法は、日本では外部報告のために使うことは認められていません。
製品原価を製造量に応じて増加する変動費、期間原価を製造量に応じて変化しない固定費、とするものです。
この場合分けの段階で、何らかの意図を生じさせないよう、外部報告には使用できないとされています。
しかし、利益の予測には必要なため、管理会計用に利用される状況になっています。
原価計算の労力を軽減し、問題点を改善するため、原価管理ツールが貢献します。
原価管理ツールは、原価計算を実行し、原価の低減に至るまでの助けとなります。
原価低減は各部門やチームだけでなく、個人としても意識を持つことが大切です。
原価管理ツールを利用することで、部門別、工程別の原価計算が行われ、工程ごとの原価を把握することができるようになります。
原価の見える化により、従業員全体に原価意識や改善意識が刷り込まれることで、組織として良い方向に向かう可能性が高まるという利点があります。
為替変動に対応し、海外での生産やアウトソーシングによる経営情報も見えてくるようになります。
基幹系システムと、タイムリーな連携ができるツールが望ましいと言えましょう。
シミュレーション機能があれば、景気変動で原価が高騰した場合など、急な変化に備えて対策をとることも可能です。
原価管理ツールを格安で導入できれば、コストパフォーマンスの向上につながります。
2.原価管理ツールの導入メリットと事例3選
2-1.製造業
原価の中でも、特に、製造原価の算出・管理をしたいという目的でした。
製造原価とは、原材料費、設備費、労務費、経費など、全ての原価を合計した数値のことです。
製造原価を元に目標原価を設定し、そのための調整手段を策定するため、原価管理ツールを導入しました。
解決するポイントは、費用の正確な計算に加えて、工数や出来高とのデータ連携を可能にすることです。
もう一つは、現場スタッフが使用できるシンプルな機能にすることです。
原価管理ツールを使うことで、試算が正確に行われ、現場とセールスデータを併せて分析できるようになりました。
統合的に分析を行うことによって、製造から販売まで、一連の流れをシミュレーションすることができて、リスク軽減と価格最適化の実現に至りました。
2-2.建設業
原価だけでなく、帳票データに関しても全社で統一した基盤が存在していなかったため、3つの課題がありました。
- 財務情報を一元管理すること
- 業務の効率化を行うこと
- 管理コストを削減すること
上記の課題を解決するために、ERPやワークフローと連携が可能な原価管理ツールを導入し、全社で戦略基盤を築く必要がありました。
具体的に、受注から請求、施主管理まで、建設業に特化した業務フローに対応できる、柔軟なパッケージ型のシステムを導入することです。
原価計算だけでなく、業務フローの中で、他の管理カテゴリーと連携できる統合管理を行い、データベース化を実現しました。
この方法で、原価コストを抑えることができ、売上拡大にもつながりました。
2-3.製造業
製品の販売価格は、取引先との交渉や競合他社の製品と比較を行って決定します。
販売価格はいくらで、どれくらいの販売をすれば利益が生じるか、といった試算をツールに入力することで、容易に実現したいという課題がありました。
これは、シミュレーション機能が搭載された原価管理ツールを導入することで、解決しました。
原材料の価格変動を考慮した、製品価格の検討に役立ちます。
損益分岐点分析により、どの製品をいくつ売るか、といった販売計画の策定を、迅速にサポートします。
新製品の適正な販売価格を決めるためには、原価、販売数量、収益などをトータルにシミュレーションすることがポイントとなります。
販売目標数についてもシミュレーションにより決めることができます。
原価管理ツールを導入することで、各企業が抱えていた課題を解決につなげることができます。
問題点を改善させるためには、課題となる内容を明確にしておくことが大切です。
格安が望まれますが、導入によって問題解決と更なるメリットが生じるケースもあります。
3.使いやすさと機能を格安で提供する原価管理ツール2選
3-1.工事原価管理GkWin / 株式会社イチホコンピュータ
経理/総務部、工事部など情報共有が可能で、サーバ専用機は必要ありません。
請求書データは工事台帳で閲覧、修正ができます。
月末・月初に集中する事務処理の作業をシステム化しており、複雑な計算も自動化されます。
データ入力後すぐ、各種管理帳票の出力が可能で、タイムリーに資料を提供することができます。
多彩なグラフ作成機能が搭載されており、様々な分析を行いやすくなります。
契約金額に対する入金状況と、工事進捗に伴った収支状況の確認を行えるようになります。
日報入力機能により、自社労務、自社機械、経費等の計算を自動で行います。
社内セキュリティ機能により、端末ごとに工事の閲覧やデータ入力を制限できます。
見積書・実行予算書作成システムMtWinProと連携が可能です。
MtWinProで作成した工事の情報、実行予算、業者発注データをインポートできます。
見積りから原価管理まで、一連の作業が効率的に行うことができて、表計算ソフトとの連携も可能です。
ライセンスは1年間で64,800円となっており、バージョンアップは無料です。
<メリット>
事務処理の作業が効率化されます。
タイムリーな帳票出力によって、コストコントロールに向けた会議などに活用することができます。
工事収支バランスを確認することで、代金回収の促進や長期の資金計画を支援します。
発生した原価が明確化され、問題の発生原因を把握することができます。
<デメリット>
サポートは、メール対応のみとなっています。
3-2.J-GAIA SUITE 生産原価管理システム / 株式会社ガイア
海外拠点での利用を目的としたクラウドERPです。
IFRS(International Financial Reporting Standards:国際財務報告基準)に対応しています。
多言語・多通貨/税金に対応し、生産管理、原価管理を行います。
多品種小ロット・受注生産型へ対応しています。
原価計算をはじめ、在庫管理機能、製造検査機能、マネージメント機能が搭載されています。RFM分析(R:最新購入日、F:購入頻度、M:購入金額)による顧客分析を支援します。
専門的な知識を必要としないカスタマイズが可能で、帳票作成、レイアウト変更、照会画面作成を行うことができます。
クラウド上でのサーバロジックの変更を行うこともできます。
既存システムとの連携が可能です。
価格帯は、1万円~10万円となります。
<メリット>
幅広い業種で利用することが可能です。
製品の品質管理や経営分析に活用できます。
アジア、アメリカ、ヨーロッパなど、全世界で運用できます。
<デメリット>
ユーザ数が多くなる場合、費用面も含めて検討が必要となります。
4.まとめ
原価管理を行うことのメリットと、格安で利用できる原価管理ツールのご紹介などを行ってきましたが、いかがでしたでしょうか。
企業には多くの管理系業務が求められますが、原価管理もその中の一つとして、重要な意味を持つ管理業務です。
“売上-原価=利益”という図式の中で、利益を上げるための方法は、売上を上げるか、原価を下げるかの2パターンのみです。
その1つである原価を下げるために必要な考え方が原価管理であり、企業経営においては欠かせない業務と言えます。
すでに、原価管理を行っている企業も多いと思いますが、今一度、その管理体制に改善点がないか見直してみるのも良いでしょう。