本サイトではIT業界でのノウハウに関するコンテンツが多いですが、プロジェクトマネジメントやロジカルシンキング等のビジネススキルに限らず、日々の業務を向上させる方法には様々なものがあります。
タスクやプロジェクトを管理するためのソフトウェアを導入することや、外部の企業に業務改善のコンサルティングを依頼することなどが挙げられます。
特に日常業務でのトラブルは接客・サービス業や医療関係の仕事で多く起こりやすいものでしょう。
トラブルや現状の問題への対処の事例として、今回はそれらの中で株式会社電縁が取り組んだシステム開発を通じた病院や介護施設での業務改善コンサルティングについてご紹介します。
ITとは直接的にはあまり関係ないと思われがちですが、SIer(システムインテグレーター)で新たなシステムを開発する場合などにも学ぶべき点はたくさんあります。
見落としがちな日々の業務の課題へITシステム導入ソリューション
とある要介護高齢者向けの住宅型介護施設では、ケアスタッフが常駐して入居者の生活のサポートを行っていました。
情報共有のために、施設内で朝、夕方、夜の定期ミーティングを行っていたのですが、会議の内容・連絡事項などは一つ一つ紙に書くことやホワイトボードへの記入により伝達されていました。
ポストイットカードのような紙媒体やホワイトボードの利用は手軽に始めることができて一定の効果があります。
しかし、可能な内容には限界がありますし、リスクも伴います。
例えば、紙媒体では伝達事項を記入した紙を紛失してしまう恐れもありますし、ホワイトボードでは追加で記入されたことに気づかない場合もあるでしょう。
このようなトラブルは業務のミスにつながりますし、特に介護のような重大性や緊急性の高い仕事においては致命的なマイナスファクターとなります。
この問題はシステムエンジニアが独自作成した専用アプリの導入によって解消されました。
一般に向けて配信するものではなく、固有のパソコンやタブレット端末で利用できる仕組みとなっています。
アプリによって、情報共有のためのプラットフォームを形成しました。
業務の引き継ぎやタスクの状況など発信したい情報を投稿することで他のユーザーにも通知され、更新された際もわかるようになります。
前のシフトに入っていたスタッフのからの伝達事項を見逃してしまうことや紛失してしまうことなどもなく、また一度で一人だけでなく複数の人に伝達できるようになりました。
しかし、グループチャットや既読通知のような機能が備わっていたこともあり、一部のスタッフ間で悪口が投稿されるといったトラブルがあったそうです。
システムや制度を導入してから思いがけない使われ方をされてしまうこともあるので、後から保守・修正していくことも欠かせません。
この事例からの教訓は、会社で何かプロジェクトを進める際にも、問題点があれば現場社員が使いやすくなる形でシステムを転換するなど、当たり前と思っているようなことでも少し手を加えることで、チーム全体のパフォーマンスが大きく向上するということです。
ただ、とにかくシステムを導入すれば良いというわけではありません。
実務上においては、仮に良いシステムが取り入れられても、使いこなすことができなければ効果が発揮されないからです。
高度の技術や最新のテクノロジーを駆使したシステムを使いこなせるよう従業員を教育することが理想的ですが、リテラシーが十分でないならばユーザーとなる人々が使いこなせる形に変更することが大切です。
利用者が操作に慣れてきた場合や、現場から機能追加の要望があれば、拡張していくことも効果的でしょう。
介護施設の事例では、スタッフに高齢者が多かったこともあり、多少システムの性能が低下してもボタン操作で簡単に利用できるような形となりました。
また、業務改善を行う際の注意点としては、このような変更を伴う決定においては意思決定主体が複数関わると実行が難しくなることです。
もしグループの責任者などが改善する内容やシステムについて詳しくなければ、それについて詳しく説明するところから始まり、改善案によるかかるコストやベネフィットの説明などを通してようやく決定となるでしょう。
一人であっても中々大変なことですが、複数の人が決裁に絡む場合には最初の人が了承してもその後で要望が通らずに頓挫してしまう恐れもあります。
重要で緊急なトラブルに対して効果的なITソリューション!
次いで、介護施設においてレントゲン写真の放射線読み取りシステムを導入しました。
基本的には周辺の医療機関と協力してサービスを提供しているため、夜間の対応に苦労していました。
例えば、レントゲン写真は施設内の機器で撮影をすることはできても、撮影したものを読み取ることのできる医者が近隣の提携医療機関にはいない可能性があります。
そこで、緊急時の対応を円滑にするために、外部のどの医師に対してどの写真を送るべきかを判断するシステムを導入しました。
外部を含めた医者の勤務情報やスキルを登録し、該当レントゲン写真を読み込むことで送信可能なものは素早く実施され、難しいものはプールしておくようなシステムです。
この機能はもともと備わってはいたのですが、従来のものでは不備を起こしてしまうような状況であり、小さなミスが一大事につながる医療の場合は修正していくことが求められました。
既に導入されたシステムであっても、第三者から見ると改善可能な事柄が多いこともあります。
導入当時には最適であった者も人員や組織の変化によってはシステムの再構築をすることが望ましいケースもしばしば存在します。
ユーザー目線と安定性を意識したシステム構築に
別の事例は、病院向けのアプリや管理サービス導入です。
病院に入院されている方は多くの時間を病床で過ごします。
面会の時間などがあっても、入院期間が長くなると特に用事はなく退屈に感じる時間が増えると思います。
ゲームアプリやニュース情報などを取り入れたタブレットを各ベッドに設置することで利用出来るようにするとどうでしょうか。
タブレット等の電子機器の設置は患者の娯楽になるだけでなく、病院側の情報管理や緊急事態への対応にも大きく役立ちます。
患者の情報はベッドにつけられた名札や座席表などアナログの形で管理されていることが多いかもしれませんが、ベッドの入れ替わりや記入間違いなどの不備で誤った情報が記録される恐れがあります。
そこで、病院内のサーバーに接続させて患者の電子カルテとしても利用できるようにすると、患者のタイムリーな情報も記録して職員が把握できるようになります。
注意点として、このようなシステムは稼働保障の担保が非常に大切です。
この事例ではシステムが不具合を起こしている間に患者の体調に異変があった場合には一大事になりかねません。
そのような事態を避けるために、サーバーインフラを強化するだけでなく、システムを2台用意することでより安全に利用できるようになります。
この医療システムに限らず、労働時間の工数管理や出勤・休暇状況の勤怠管理など継続的にサービスを利用する必要があるものは複数導入を行うことで精度を高めています。
まとめ
介護や医療において日々の業務を改善するためのシステムコンサルティングについて取り上げてきましたが、いかがでしたでしょうか。
サービス業の労働者やユーザーが抱える課題に対するソリューションがメインでしたが、IT関係のビジネスでプロジェクトを進行する際にも共通する部分は多かったと思います。
繰り返しになりますが、働いている場に備わっている設備やシステム・制度は、「今ある仕組みだから」「一度システムとして取り入れたものだから」現在のプロジェクトやタスクに適しているとは限りません。
既存のものに問題点はないか・こんな機能があったらもっと良くなるのではないかといった視点を持って、自社だけでなく場合によっては業務改善に強みを持つ会社と協力しながら様々な仮説を試していくことが、生産性の向上に繋がるでしょう。