働き方改革関連法案の成立や少子高齢化に伴う労働力確保の難化により、多様な働き方を支えるテレワークの導入が国家レベルで推奨され始めています。
一方でテレワークの導入はまだ多くの企業で進んでいません。その理由の一つとして、テレワークという働き方の認知が進んでいないということがあります。総務省が平成27に発表したデータによるとテレワークの認知度は40.9%に留まっています。
そこで今回の記事では、今注目のテレワークについて詳しく解説します。
目次
1.テレワークとは
1-1.テレワークという働き方
テレワークとは、例えば、「家からノートパソコンを使って会社のシステムに接続して手続きを行う」、「会社の会議に家からインターネットを使ってリモートで参加する」。このように、ICTを活用して、遠隔地から業務を遂行することをテレワークといいます。
一般的にテレワークというと、在宅で勤務をしている人や個人でインターネットを介して仕事を請け負うフリーランサーのような人を想像するかもしれません。しかし、それだけではなく、サテライトオフィスなど会社の保有する施設を利用して、テレワークを行う場合もあれば、月のうち何日かをテレワークで過ごす場合もあります。つまり、テレワークとは効率を考えて柔軟な場所で仕事をしようということなのです。
また、このテレワークという働き方は政府が推進する働き方改革実行計画における9テーマの1つとされており、国会レベルで推進されている「これからの働き方」でもあるのです。
1-2.テレワークに適した仕事
一般的には以下のような仕事がテレワークに向いていると考えられています。
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具体的にいうと、事務職、ITエンジニア、クリエーター、インサイドセールススタッフ、コールセンタースタッフといったような職種が該当するでしょう。ただし、上記のようなテレワークに向いている仕事というのはどのような仕事にも少なからず含まれています。そのため、すべてテレワークで業務を遂行することが困難でも、部分的であればほとんどの業種で適用可能であるといえるのではないでしょうか。
2.テレワーク導入によるメリットとデメリット
テレワークを利用した場合、実際にどのようなメリットやデメリットがあるが、会社と従業員、2つの視点で考えてみましょう。
2-1.会社にとってのメリットとデメリット
厚生労働省が公開している「テレワークの導入・運用ガイドブック」によると、会社のメリットとして以下などがあげられています。
- 優秀な人材の確保、雇用の継続
- 資料の電子化など業務改善
- 通勤費、オフィス維持費の削減
- 非常時の事業継続性の確保
- 離職率の改善
- 企業イメージの向上
このように多くのメリットがあります。
ただし、メリットだけではありません。テレワークで仕事をする人の姿が見えないため人事評価や労務管理が難しいという問題があります。また、セキュリティの確保やパソコンなどの端末準備などICTインフラの整備のための費用が発生するといったデメリットもあります。
2-2.従業員にとってのメリットとデメリット
従業員のメリットについても厚生労働省がデータを公開しています。
- 家族と過ごす時間や余暇時間の向上
- 仕事の効率性アップ
- 自律的に仕事を進めるスキルの向上
- 仕事の満足度の向上
一方、デメリットとしては、仕事の状況を上司が見ていないため、上手く成果を見える化できなければ正当な評価を得ることができない可能性があります。また、一人で作業を行うため自己管理が難しい、周囲とのコミュニケーションが不足して孤独感を感じるといったこともあるでしょう。
3.テレワーク導入に必要な環境の整備とは?
3-1.ICT環境の整備を行おう
テレワークを実現するためには、ICT環境の整備も必要不可欠です。ここでは、代表的なICT環境である労務管理システム、コミュニケーションツール、仮想化デスクトップについてご説明します。
3-1-1.在籍管理ツール
まず、労働時間の不正を防ぐための仕組みが必要になります。具体的には、在籍確認機能を持った勤怠管理ツールやコミュニケーションツールなどが必要となります。
3-1-2.コミュニケーションツール
コミュニケーションツールの代表としては、Eメールやチャットサービスといった文字ベースで簡単に情報をやりとりできるツールが有名でしょう。しかし、文字情報だけでは十分なコミュニケーションをとることはできません。そこで、音声によるインターネット電話サービスや、映像を見ながらコミュニケーションをとることができる会議システム、ビジネスフォンなども利用されています。
3-1-3.仮想デスクトップ
テレワークでは、社外から社内システムにアクセスして業務を行うことも少なくありません。よって、セキュリティ性が担保されたアクセス環境が必須となります。
これを実現する代表的なツールが仮想デスクトップです。これは仮想デスクトップサーバーへアクセスし、サーバー上で社内システムにアクセスするという方法で、手元の端末上では操作をしていない(サーバーへのアクセスのみ)ため、端末にデータが残りません。
よって、データ漏えいなどのリスクを低減することができるのです。
3-1-4.進捗管理ツール
テレワークでは、各社員が異なる場所で業務を行うことになります。よって、各社員の進捗を共有するツールが必要不可欠です。近年では、クラウド型の進捗管理ツールが一般的で、製品によっては勤怠機能まで有している製品もあります。このようなツールを活用することで、効率的に管理することができるでしょう。
3-2.社内ルールを見直そう
環境を整備しただけで、テレワークを開始することはできません。社内ルールも合わせて見直す必要があるからです。
例えば、就業規則において、既存の就業規則で対応できない場合は新たにテレワーク勤務規定などを策定する必要があります。また、テレワークでは社外にパソコン端末を持ち出して仕事をするため、情報セキュリティルールや管理ルールを見直す必要もあるでしょう。このように、テレワークを導入するにあたっては社内ルールの棚卸しを行い、テレワークに対応できるように見直しを行う必要があるのです。
4.従業員の意識改革が鍵
テレワークを導入しても社内に浸透しないという課題を持つ企業も少なくはないでしょう。テレワークを浸透させるためには、ICT環境や最低限の社内ルールを整備しただけではいけません。従業員の理解を深め、誤解を解き、不安を解消する必要があるのです。
例えば、よくある不安として、テレワークを利用すると正しく成果を評価してもらえないのではないかというものがあります。このような不安に対しては、仕事の成果を評価できるように人事制度を見直し、徹底することで不安を解消していく必要があるでしょう。また、テレワークを利用する社員と利用しない社員の間に不公平感があれば、テレワークの浸透は進みません。そのため、不公平感を払拭するような取組も必要となります。このように、テレワークを浸透させるにあたっては、仕組みを整え、根気よく正しい理解を社内に広めていくことが大切です。
5.まとめ
今回はテレワークの概要やメリットやデメリット、必要な環境整備などを解説しました。テレワークの利用といっても全ての仕事をテレワークに移行する必要はありません。社員の希望や社会状況に応じて働き方を柔軟に調整できる仕組みを作っておくことが大切です。
そのためにはシステム整備、規定整備、従業員の意識改革などが必要です。総務省や厚生労働省がテレワークに関する情報を多数公開していますので、こちらもぜひ調べてみてください。