プロジェクト管理に役立つ資格と選び方

プロジェクト管理の効果を高めるためには、プロジェクトマネージャがしっかりと知識を身に着けることや、学習に終わらず現場でのマネジメントを実践することが大切です。プロジェクト管理で求められる知識やスキルは範囲も広いため、体系的にノウハウが整理された資格学習が効果的です。この記事では、プロジェクト管理関連の資格の種類や、適切な選び方について紹介します。

 

1.プロジェクト管理とは

「プロジェクト管理」とは、ビジネス上の目的達成に向けて、特定のプロジェクトにおける品質・コスト・納期(=QCD)が目標通りに達成されるように管理することや、その手法を意味します。

「管理」をわかりやすく表現するなら「観察と調整」であり、「プロジェクト管理を学ぶ」とは、プロジェクトにおいて何を見て、どのように調整するかを学ぶことです。

プロジェクト管理はQCDの管理だけでなく、プロジェクト中の意思決定や、以降の新規プロジェクトをより効率的に進めるための情報や材料を提供する効果もあります。

プロジェクト管理はQCDの達成や生産性向上に有用ですが、プロジェクトの進行と本来は関係のない、管理のためのデータ収集作業や分析作業が発生します。そのため、管理が目的にならないよう注意する必要があります。

 

2.プロジェクト管理のスタンダード「PMBOK」

プロジェクト管理に関するノウハウとして、世界的に事実上のスタンダードになっているのがPMBOK(Project Management Body of Knowledge)です。「ピンボック」と読み、正確にはノウハウがまとめられたガイド本のことを表します。

PMBOKではプロジェクト管理を結果からではなく、プロセス中心に管理することを大切にします。最新版のPMBOKガイド第6版では、49個のプロセスを5個のプロセス群と10個の知識エリアに分類し、どのような観点で何を管理すべきかをアドバイスしています。

現在、プロジェクト管理における認定資格や、多くのプロジェクト管理ツールがこのPMBOKの考え方に基づいて作られていますので、プロジェクト管理を学ぶなら一度は触れておいた方が良いでしょう。

PMBOKの5つのプロセス群

・立ち上げ

プロジェクトの目的、目標、予算、成果を定義し、プロジェクト憲章の作成やステークホルダー(利害関係者)の特定を行います。

計画

プロジェクトの目的、目標を達成するための作業計画を立案し、ドキュメントとして作成する段階です。

実行

立案した計画に基づき、人員と資源を確保・調整し、プロジェクトを実行に移す段階です。

監視・管理

プロジェクトの進捗や予算などの状況を継続的にチェックし、計画との差異があれば是正を行います。

終結

各プロセスの完了を確認・検証し、実際に納品するなど、プロジェクトを終結に結びつけるための段階です。

 

PMBOKの10個の知識エリア

PMBOKには、管理を行うべき分野として「統合マネジメント」「スコープマネジメント」「スケジュールマネジメント」「コストマネジメント」「品質マネジメント」「資源マネジメント」「コミュニケーションマネジメント」「リスクマネジメント」「調達マネジメント」「ステークホルダーマネジメント」の10個が設定されています。

これらを適切に管理することによって目標であるQCDが達成されるとしており、相互に関連・作用し合うプロセスに特に注意を払うことが大切です。たとえば、スコープマネジメントに属する「スコープの定義」プロセスは、全体の作業量に与える影響が大きく、コストやスケジュール、資源、調達などさまざまな面に影響するため、しっかりと管理することが求められます。

基本的に、PMBOKは単一の、比較的大規模なプロジェクトを想定した管理手法であるため、案件の規模によっては過剰管理になり、業務を煩雑にしてしまいます。PMBOKを導入すべきか、案件ごとによく考えて判断することが大切です。

 

3.プロジェクト管理に役立つ資格

プロジェクト管理に関する資格の種類や、難易度、受験料、スキルレベルなどについて、ITスキル標準(ITSS)をもとに紹介します。

PMP(PMI Japan)

プロジェクトマネージャのプロジェクト管理知識について世界中で証明できる資格で、所定の実務経験に加え、35時間以上の公式の研修が受験のためには必要です。試験問題はPMBOKの内容に加え、多様なプロジェクトマネジメント業務から出題されます。

ITSS:レベル3(ミドルクラス。職種において一人前と評価されるスキルレベル)

受験料:555ドル(約60,000円)、PMI会員は405ドル(約43,800円)

合格率:非公開

プロジェクトマネージャ(IPA)

高度IT人材としてプロジェクト管理のスペシャリスト人材であることを示す国家資格です。プロジェクトの計画から要員・資源の確保、QCDの達成に責任を持つ立場を想定しているため、難易度は高めです。基本的にPMBOKの内容をベースに、IT関連のプロジェクト管理を想定した内容になっています。

ITSS:レベル4(ミドルクラス。後進の指導にも携わるリーダーレベル)

受験料:5,700円(税込)

合格率:13.2%(H30年)

CompTIA Project+(CompTIA)

グローバルにIT規格や政策の提言を行う業界団体CompTIAのプロジェクト管理分野の認定資格で、業種を問わず、世界中でスキル証明に使える資格です。PMBOKのようなプロジェクト管理の知識だけでなく、「このような場合はどうすべき?」という実際のアクションにまで踏み込んだ出題がされるのが特徴です。

ITSS:レベル3(ミドルクラス。職種において一人前と評価されるスキルレベル)

受験料:40,424円(税込)

合格率:非公開

P2M(日本プロジェクトマネジメント協会)

P2Mは日本で発祥した官製のプロジェクト管理手法で、PMBOKの手法に加えて複数のプロジェクトを連携・統括して考えるのが特徴です。システム開発だけでなく、より大きなプラント開発やインフラ開発などを想定して作られたもので、業界を問わないプロジェクト管理の知識やスキルを証明します。PMC、PMSプログラム、PMS、PMRの4つのレベルが設定されています。

・PMC

ITSS:非対応

受験料:16,700円(税込。決済手数料込)

合格率:68.3%(H30年)

・PMSプログラム

ITSS:非対応

受験料:22,100円(税込)

合格率:60.0%(2019年6月実施回)

・PMS

ITSS:非対応

受験料:38,500円(税込)

合格率:61.5%(2019年6月実施回)

・PMR

ITSS:非対応

受験料:216,000円(税込)

合格率:66.7%(H29年)

NPMO認定資格(日本PMO協会)

日本PMO協会の認定資格で、業種・業態を問わないプロジェクトマネジメントの知識を証明します。プロジェクト管理における各種の概念や考え方、実務で使える書類作成の知識や技術を身につけることができます。入門資格のPMO-Aと、上級資格のPMO-Sに分かれています。

・PMO-A

ITSS:非対応

受験料:一般は13,000円(税別)、PMO協会の会員は9,000円(税別)

合格率:66.7%(H29年)

・PMO-

ITSS:非対応

受験料:一般は13,000円(税別)、PMO協会の会員は9,000円(税別)

合格率:66.7%(H29年)

 

4.まとめ

プロジェクト管理に資格は必須ではありませんが、広範囲に及ぶプロジェクト管理のノウハウを体系的に学び、現場で活用するために資格学習は効果的です。最新のプロジェクト管理ツールはPMBOKを意識して作られていて、プロジェクト管理におけるデータ収集や集計・分析を効率化し、知識を現場に適用しやすくしてくれます。プロジェクト管理の資格学習・取得を通じ、プロジェクトの生産性向上を実現しましょう。

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