近年、コスト削減や業務効率化の潮流に乗り、「日報」の文化を見直す企業が増えているようです。日報にまつわる業務は、作成側(メンバー側)・チェック側(マネジメント側)ともに負荷がかかるため、運用方法を効率化すべき業務のひとつです。特に、手書きやオフィスソフトをベースにしたアナログな方法では、コア業務に割くべきリソースを浪費してしまい、プロジェクト・事業の負担になりかねません。そこで目を向けるべきなのが日報管理ツールです。ここでは、日報管理の問題点やツールを利用するメリットなどを解説します。
1.なぜ日報管理ツールが必要なのか?
日報作成業務は、案件の進捗や人材の稼働状況などを把握するために必要です。しかし、その作成には多くの労力が割かれているだけでなく、管理コストも上乗せされています。これらは、決して無視できないものです。例えば、営業部門であれば、営業日報や業務日報は出先からの帰社後や定時後に作成することが多いでしょう。必然的に、勤務時間が延び、残業代や経費の無駄につながりがちです。ここで、手書きで日報を作成した場合のコストを試算してみましょう。
○アナログな日報作成・管理にかかるコスト
まず、日報作成・管理に1日あたり(1回あたり)1時間程度を要していると仮定します。このとき、作成側・管理側のコストを簡単に計算すると、以下のとおりです。
・1日1時間×20日で計算すると、1月あたり2.5人/日程度の工数が発生
・人材1人あたりのコストを30000円/日で計算すると、一ヵ月で7.5万円程度のコスト
・上記コストは人材の数だけ必要になる
厳密に言えば、自社に戻る時間や交通費などもかかるため、実際のコストはもう少し増える可能性があるでしょう。また、管理職が同じ業務を行った場合もコストが大きくなります。
○コスト以外の問題点も
アナログな日報作成・管理の問題点は、コストだけではありません。手書きであることから誤字・脱字で内容が上手く伝わらず、認識の齟齬や誤報告が発生するリスクがあります。また、日々積みあがっていく日報の管理コストや、提出や閲覧に物理的な移動が必要なことも含めると、業務全体に影響を及ぼすことがわかります。
これは、オフィスソフトを使った業務でも同様です。確かに電子化で、手書きよりは幾分効率化が進むでしょう。しかし、作成・管理の手間やコミュニケーションミスのリスク、提出・閲覧時の無駄は排除されません。
こういった日報作成の問題点を解決するためには、作成・提出・管理・閲覧の手間を省き、一元的に管理できる日報管理ツールの導入が望ましいと言えます。日報管理ツールを上手く活用できれば、コスト削減と報連相の精度を高めることも可能なのです。
2.日報管理ツールの特徴とメリット
では、日報管理ツールの特徴とメリットを整理して紹介します。近年はクラウドサービスの普及により、より安価で手軽な環境構築が可能になりました。日報作成業務はクラウドサービスとの親和性が高く、即効性のある業務効率化・コスト削減が見込めます。
○日報管理ツールの特徴
・クラウドベースのものであれば、導入費用がほとんどかからず、運用コストも低い
・画像投稿や共有機能など、報告・共有できる情報量が多い
・スマートフォンやモバイル端末からでも報告・閲覧できる
・案件や顧客ごとの個別報告が可能
・目標管理や進捗管理機能と連動している製品もある
・使用期間やアカウント数で無料プランが組まれているサービスが多い
○日報管理ツールを使用するメリット
・作成、閲覧のコスト削減効果
・移動時間の有効活用が促進される(移動中や出先から作成、報告、チェックなどが可能)
・リアルタイムかつ詳細な情報共有が可能になる
・日々データとして蓄積され、ナレッジ構築に役立つ
・定型フォーマットにテキスト、画像などを簡単に添付できる
・画像や表などを添付した日報を流用し、後々の資料作成に役立てられる
・目標管理、進捗管理に必要な元データが容易に収集できる
・リマインダー通知で作成、閲覧忘れが減る
・一元管理によって紛失、破損、改ざん、漏洩のリスクが減る
このように単純なコスト削減以外にも「情報共有」「ナレッジ化」「資料への流用」「情報の保管」といったメリットが生じることがわかります。特に情報共有やナレッジ化は、企業の情報資産を構築するために役立ちます。
○日報管理ツールで情報資産の構築を
企業の経営資源に「情報」が加わって久しいですが、その収集・管理体制の構築に課題を抱える企業は少なくありません。従業員が日々の業務で持ち帰る情報は、顧客の生の声やリアルタイムな市場動向を含んでおり、企業の将来を支える資産になり得ます。日報管理ツールの導入・運用によって、日報に単なる業務報告以外の価値を付与することも可能なのです。
3.日報管理ツールの利用シーン
最後に、日報管理ツールの利用シーンを紹介します。日報管理ツールは業界や業態に関わらず適用しやすい仕組みですが、次のような場合には特におすすめです。
○プロジェクト型ビジネス
ITシステムやアプリの開発プロジェクトなど、厳格で精緻なスケジュールに沿った進捗報告を兼ねる場合は、日報管理ツールの導入がおすすめです。プロジェクト型ビジネスは、成果物が完成するまでに長い時間を要し、関わる人材の数も多くなります。日々挙げられる膨大な情報を加味しながら課題管理や進捗管理を進めるには、日報管理ツールの機能が役立つでしょう。
○メンバーの外出が多い業務
Webサイトの制作など、顧客との打ち合わせ・プレゼンテーションが多い業務でも、日報管理ツールは役立ちます。メンバーの外出が多く、一同に会す機会が少ない業務こそ、リアルタイムな情報共有が肝要です。外出メンバーが帰社する前に報告を上げ、それをメンバー間で共有できれば、時間的な無駄を省きつつ認識の齟齬が発生するリスクを低下させられるからです。
○サテライト、在宅勤務
働き方改革や人手不足対策として、サテライトオフィス勤務や在宅勤務制度を導入する企業が増えています。こういった新しい勤務形態では、物理的にオフィスに出勤することがないため、稼働状況の把握が難しいという課題がありました。クラウド型の日報管理ツールであれば、遠隔地での稼働状況・進捗管理も容易に行える可能性があります。
4.まとめ
この記事では、アナログな日報作成・管理業務が抱える問題点と、その解決方法として日報管理ツールを紹介してきました。日報管理は、いわゆる「コア業務」とみなされず、効率化の対象外になっていることが少なくありません。しかし、日々必ず発生する業務であることから、実際にはコスト削減や情報共有、ナレッジベース構築の根幹にかかわっています。日報管理ツールを適切に導入すれば、コミュニケーションの質をあげつつ、コスト削減や情報資産の構築が進むかもしれません。アナログな日報管理からの脱却を目指し、日報管理ツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。