ITエンジニアには時間がいくらあっても足りません。
プロジェクトの予算は潤沢にあるわけではなく、納期も余裕がないケースが多いでしょう。そのような中でも仕事熱心なエンジニアは残業をいとわず時間をかけて仕様書、ソースコードなどの成果物の品質を高めようと努力します。
時間の使い方はエンジニア個人にとってもプロジェクト全体にとっても極めて重要ですが、大切なのは計画的に密度の高い仕事をやり遂げることです。そのために主体的に時間の使い方をコントロールする「スケジュール管理」がITプロジェクトの成功の鍵を握ります。ここではスケジュール管理の解説やそこで役立つツールを紹介します。
目次
1. スケジュール管理とは
まず、スケジュール管理の目的について説明します。
1-1. スケジュール管理の目的
仕事の効率化
スケジュール管理は計画的に効率よく仕事をこなすために欠かすことができません。英語の「schedule」の語源をたどると「予定が書かれた紙片」がもともとの意味になります。
記録され管理されている予定がスケジュールなのです。
「時間が足りない」、「忙しい」と言っている人ほど時間を無駄に使っているのではないでしょうか?時間をうまく使うには、ダラダラと過ごさないのはもちろん、時間の使い方についてきちんと計画することが大切です。そのためにはプライベートな用事も仕事と区別することなくすべてスケジュールに組み込む必要があります。
進捗状況の明確化
スケジュールは進捗状況を判断する基準となるものです。明確なスケジュールが無ければそもそも作業が進んでいるのか遅れているのか判断しようがありません。計画したスケジュールに対して遅延が発生している場合、何らかの対処を行う必要があります。どのくらい遅延が発生したときにどのように対応するかあらかじめ決めておくこともスケジュール管理のです。
共同作業の円滑化
スケジュールを共有することで、チーム内の共同作業を効率的に進めることができます。
例えば、Aさんの作業の後工程としてBさんの作業がある場合、BさんはAさんの作業の進捗状況を確認しながら自分の作業の段取りを立てることができるのです。
1-2. スケジュール管理のメリット
適切にスケジュール管理を行うことで仕事の効率化ができます。具体的にどんなメリットがあるのでしょうか。
メリットとしては仕事の実行スケジュールを決めておくことで無駄な「空き時間」が無くなり、プロジェクトの進捗状況を明確に把握することができるようになります。
また、プロジェクトが滞っている場合にどの段階で何が原因となっているのか確認することができるので、迅速に対応できるという利点もあります。メンバー全員が状況を共有することでプロジェクトが円滑に進むのです。
2. スケジュール管理のポイントはタスク整理
スケジュール管理を上手に行うためには、併せてタスク管理をすることが必須といえるでしょう。抱えているタスクの期日もスケジュールに加えておくことで、仕事のもれやダブルブッキングといったミスを防ぐことができます。
ここでは、タスク管理をするときのステップを見ていきましょう。
ステップ1:タスクを整理する
- 全て書き出す
仕事量の把握を行うため、全てのタスクを書き出しましょう。「日」「週」「月」単位で書き出すと、抜けもれなく書き出せます。
- グループ分けをする
書き出したタスクをグループ分けして、仕事内容に合わせて柔軟にまとまりを作りましょう。バラバラだった仕事内容に一貫性が見えてくるでしょう。 - 優先順位をつける
スケジュールを立てるために、優先順位をつけましょう。「締め切り」「かかる時間」「上司/取引先への確認の有無」など緊急性と重要性を考慮しながら優先順位をつけます - やらないことを決める
スケジュールを立てる際、「今日/今週はやらなくて良いタスク」も書いておくようにしましょう。やらないことを決めておくことで、余計なことに時間がとられるのを防げるのです。
ステップ2:計画する
グループ分けや優先順位を参考にして、スケジュールを立てましょう。まずは今週やるべきタスクを計画し、「日」に割り当てていくと、抜けもれがなくなります。
また、期日が曖昧なタスクのは、緊急度や具体的なスケジュールについてヒアリングし、明確な締め切りを設けるようにします。
ステップ3:実行する
タスクを後回しにすることは、スケジュール管理の大敵です。優先順位に沿ってタスクのスケジュールを決めたら、先送りせずに取り掛かるようにしましょう。また、管理漏れを防ぐためにも、期日などのタスクの重要事項は、すぐにスケジュール管理ツールに書き込む癖をつけることも大切です。
3. プロジェクトにおけるタスク管理
次に、プロジェクトにおけるタスク管理の概要を解説します。
前述のタスク管理とは、一言でいうと「仕事の投入と進捗の管理」です。タスク管理は、主に個人の仕事を管理するものと、チームの仕事を共有し管理するものがあります。
個人のタスク管理は、個人=自分への仕事の投入と進捗管理となり、スケジュール管理と進捗管理が中心となります。
一方、チームのタスク管理は、チームメンバー及び関係者(次工程や取引先)への仕事の投入と進捗管理となり、仕事のプランニング、割り当て管理、スケジュール管理、進捗管理、異常処置管理など多岐にわたる管理が必要となります。
個人のタスク管理とチームのタスク管理は、相互に関連付けて運用することが少なくありません。チームのタスク管理でスケジューリングしたタスクを個人のタスク管理に落として管理したりします。チームのタスク管理の中で担当毎の個人のタスク管理も同時に行うこともあります。
4. プロジェクトにおけるスケジュール管理の取り組み
プロジェクトを成功させるにはスケジュール管理が重要です。スケジュールの作成や管理には、色々な方法があります。大きな枠組みでとらえた場合には、プロジェクトにおけるスケジュール管理への取り組み方は、次のような5つのステップがあり、これを繰り返すことになります。
<ステップ>
- さまざまな事象の中から解決が必要なことを見つけ出す「発見」のステップ
- 課題を一覧にしてみんなで一緒に見る「共有」のステップ
- 課題の内容と優先順位について認識を合わせる「合意」のステップ
- 課題を解決するための具体的な行動に分解する「タスク化」のステップ
- タスクが完了するように見守る「フォローアップ」のステップ
詳しく解説していきます。
- 発見・共有・合意のステップ
このステップでは、「課題の内容」「対応方針」「重要度」「緊急度」などを一覧にし、内容と優先順位を合わせることが重要です。 - タスク化のステップ
「課題のタスク化」とは、課題の解決策を考え、一人で解決可能な単位まで分解して、「誰が」「いつまでに」解決するのか、担当と期限を割り振ることです。イメージとしては、上述の発見・共有・合意された課題一覧に、「解決策」「担当」「期限」の欄を追加する感じです。 - フォローアップのステップ
タスクが完了するまで見守り、経過と結果を一覧表に記録します。上述の「解決策」「担当」「期限」の欄を追加された課題一覧に挙げたタスクを、一つ一つ解決しては色を塗りつぶしていくイメージです。期限を過ぎても完了していないタスクがあれば、そのタスクの遅延による影響範囲を把握して、課題一覧に反映します。
5. スケジュール管理の実践テクニック
ここでは、スケジュール管理に関するテクニックやポイントを、「準備・計画(Plan)」「運用(Do)」の2つのフェーズに分けて解説します。
5-1. 準備・計画(Plan)
マイルストーン
長期間のスケジュールを作成する際には、ゴールまでの間にマイルストーンというチェックポイントを設定します。各ポイントまでにどの成果物がどのくらい出来上がっていないといけないか決めておくと良いでしょう。例えばシステム開発プロジェクトでは基本設計、詳細設計などの工程がマイルストーンとして設定されています。
成果物・タスクの洗い出し
マイルストーンごとに成果物とタスクを洗い出します。一つの成果物を完成させるのに複数のタスクが必要な場合がよくあります。
例えば詳細設計書の場合は既存プログラムの調査、設計書執筆、レビューなどのタスクが必要です。成果物とそれに関連するタスクを洗い出し実行順に並べることで前後関係が整理されたスケジュールができ上がるのです。
所要時間の予測
タスクの洗い出しと同時にやっておくべきことがあります。それは、タスクごとに所要時間の見当をつけることです。そうすることでタスクを定量的に把握することができます。
実行日時の設定
スケジュール管理において、タスクの洗い出しの次に行うのは実行日時の設定です。その際に重要となるのは、全てのタスクの実行予定日時を決めてしまうことです。これは無駄に過ごしがちな「空き時間」をなくすとともに、重要なタスクに使える時間を確保するための重要な要素と言えるでしょう。
担当者の割り当て
複数のメンバーが関わるプロジェクトでは、誰がどのタスクを担当するか決めておく必要があります。メンバーの予定の空き状態とスキルを考慮してタスクを割り当てます。
進捗管理のルール
スケジュールを組み立てたら、次に進捗管理のルールを決めておきます。まず進捗報告する間隔を決めておきましょう。
5-2. 運用(Do)
スケジュールを立て、進捗管理のルールを決めたらそれに従ってスケジュール管理を運用していきます。
進捗の把握
チームリーダーやプロジェクトマネージャーは定期的にスケジュール通り作業が進行しているか進捗を確認します。進捗の確認方法としては定例会議や朝会などでメンバーからヒアリングする、あるいはプロジェクト管理ツールで確認するなどがあります。
進捗は何ではかるか?
進捗とはまだ完了していないタスクについてどこまで進んでいるかを示すもので、「進捗率50%」などと表します。この進捗率の基準は何を基準にすればよいでしょうか?進捗をはかる目的を考えてみましょう。進捗率100%になるとそのタスクが完了した状態になります。タスクが完了したということはそのタスクに関連した成果物が完成したということです。したがって、成果物ベースで進捗をはかるのが最も確実です。設計書5ページ中3ページまで出来上がったら進捗率60%という具合になります。
作業の遅延や新たなタスクの発生など、計画したスケジュールからの変更が発生した場合は速やかに次のような対処を行うことでプロジェクトへの影響を最小限にするのです。
タスクの統合
複数のタスクを1つのタスクにまとめます。例えば詳細設計に遅れが生じている場合、計画では詳細設計の後工程だったコーディングを詳細設計と同時進行で行い、期限に間に合わせるようにします。
タスクの分割
遅れが生じているタスクを複数のタスクに分割します。分割する目的は複数のメンバーでタスクを分担するためです。一人で担当していたタスクを複数人で分担することでスピードアップが図れます。
タスクの実行順序の入れ替え
タスクの優先順位を見直して、後回しでも良いタスクは後ろにずらし、優先順位の高いタスクを先に実行するようにします。
6.スケジュール通りにプロジェクトを進める5つのポイント
スケジュール通りにプロジェクトを進めるためのポイントを5つ紹介します。
ポイント1:作業時間を想定する
前述のように、タスクごとの作業時間が想定できると、スケジュール管理はより明確になります。作業時間には個人差があるため、まずは自分の仕事のスピードを把握することが大切です。
そのため、日々の業務をする際には、タスク別にどれくらい時間がかかったのかを記録しておくことをおすすめします。また、タスク完了後に、想定より時間が掛った場合や、想定より早く完了した場合などの原因を振り返ることで、より正確な作業時間を想定できるようになります。
ポイント2:余裕を持って時間を計算する
時間の管理は、あまり切り詰めすぎないということも大切です。余裕を持たせたてタスクにかかる時間を計算しておくことで、予想外に作業に時間がかかってしまったときやトラブル発生時、緊急の仕事が入ったときなどに使える時間を確保することができます。
ポイント3 : 集中タスクと非集中タスクに分けて考える
仕事は、能動的で集中力が必要な「集中タスク」と、行動すれば終わる「非集中タスク」があります。この集中タスクと非集中タスクには別の能力が必要だとされ、一方のタスクばかりを行うのではなく両方の仕事をバランスよく行うことで、メリハリがついた効率のよい仕事ができると考えられています。
ポイント4: 進捗を常に最新にする
誰が今何をやっているのかを、必ずわかるようにします。プロジェクトメンバーがタスク管理ツールをプラットフォームにして、同期して動かなければうまくいきません。プロジェクトリーダーは、定期的に全部のタスクを確認し、進捗を常に最新にします。それを怠ると、進捗管理が“なぁなぁ”になって崩壊する可能性があります。
ポイント5: タスク化する前が最も重要
タスク化をする前にしっかり議論します。「このタスクは本当にやるべきなのか」「もっと重要なことはないのか」などの問いについて議論することで、一度決めたからやるのではなく、戦略的にやるべきタスクを見極めて、無駄なく生産的な仕事ができます。
7. ツールでスケジュールを管理する
最後に、ITプロジェクトのスケジュール管理に役立つツールを紹介します。
7-1. エクセル」でスケジュールを管理
「エクセル」でスケジュール管理ができます。エクセルのテンプレートを使えば、ToDoリスト、スケジュール表などを作成でき、自分なりのカスタマイズもできます。初心者でもわかりやすいテンプレートに「スケジュールテンプレート」があります。
7-2. 「ガントチャート」でスケジュール管理
ガントチャートは、スケジュールを棒グラフで表した表です。表の左側には作業内容、担当者、期日などの項目が縦に並んでおり、作業スケジュールは横棒のグラフで表示されます。
ITプロジェクトのように人を巻き込む仕事の場合、ガントチャートを参照することで、タスクの全体の進捗や担当者の対応状況を俯瞰できます。
進捗管理には、プロジェクト管理ツールが活用できます。プロジェクト管理ツールではスケジュール管理・工数管理が簡単にできるようになっています。また、ガントチャートで予測値と実績値を並行表示して比較できるので、対処すべきタスクが瞬時に把握できるというメリットがあります。
「進捗管理」「タスク管理ツール」といったワードだけでなく、「課題管理ツール」「プロジェクト管理ツール」「工数管理ツール」などのワードも取り入れて広くツールを探してみることをお奨めします。
7-3.プロジェクト管理ツール紹介
クラウドログ
クラウドログは直感的な操作で簡単に工数を登録できるクラウド型のプロジェクト管理ツールです。
工数管理に特化しており、作業別や工程別、企業別、商品別など自社に合った軸で工数を登録できます。
また、ガントチャートやカレンダー形式で工数の登録や確認ができ、プロジェクトに応じて選択できます。
出力できるレポートが豊富なのも魅力の一つです。売上や工数原価、損益など各種レポートが即座に取得できます。
14日間の無料トライアルがあるので、ツールの使い勝手を十分に試せます。
Wrike
Wrikeはプロジェクト管理をはじめ、マーケティングやクリエイティブ、商品開発など横断的なソリューションを提供しています。
ガントチャートや予実管理、作業にかかった時間を集計するタイムトラッキングなど豊富な機能が備わっています。
多機能のため価格が比較的高めになっていますが、機能にこだわるならWrikeがオススメです。
プランごとに無料で試せるトライアルに申し込むことが可能です。
Backlog
Backlogは開発だけでなく、人事や総務まで様々な職種で使われているプロジェクト管理ツールです。
使いやすさはもちろんですが、コミュニケーションを促進する「いいね」機能や300種類以上のキャラクターアイコンが使えるといったユニークな特徴があります。
プロジェクトのスケジュールもガントチャートで可視化でき、タスクの期限や進捗状況も把握できるので、プロジェクトをリアルタイムで把握できます。
Brabio!
Brabio!はガントチャート作成に特化したプロジェクト管理ツールです。
ガントチャートの作りやすさに加え、フリープランでも無制限にプロジェクトを作成できます。
また他ツールにはない「プロジェクト横断ビュー」機能が唯一搭載されており担当者ごとの負荷状況を一括で
管理することが可能です。
Jooto
Jootoは、カンバン方式のタスク・プロジェクト管理ツールです。
付箋を貼ったりはがしたりする感覚で使える為、直感的で操作しやすいところが特徴です。ChatworkやSlackとも連携ができるのでタスクが変更されると通知を受け取ることも可能です。
8. まとめ
この記事では、ITプロジェクトにおけるスケジュール管理、それに役立つツールについて解説してきました。
スケジュール管理は計画的に効率よく仕事を進めるためには必須です。プロジェクトのマイルストーンをチェックポイントとしてスケジュールを作成し、スケジュール管理を運用していきます。しかし、ITプロジェクトは不確実な要素が多く、状況も日々変化するのでスケジュール管理には困難も伴います。
プロジェクト管理ツールを利用することによってスケジュール管理を効率化してみてはいかがでしょうか。