プロジェクトを成功に導く要因として、どのようなものが挙げられるでしょうか。
チームメンバーのスキルやプロジェクト管理手法、プロジェクト予算など、プロジェクトの成功を左右する要素は無数に存在しています。なかでも、プロジェクトのスムーズな進行と、その先にある「プロジェクトの成功」を左右する重要な要因のひとつに、適切なタスク管理があります。タスク管理が適切に行われているプロジェクトでは、スケジュールやコンセプトの大幅な変更、致命的なトラブルがなく、成功への最短ルートを辿ることが可能です。
この記事では、タスク管理の基本やその必要性、タスク管理を適切に実行するノウハウなどを解説します。
1. タスク管理とは
まず、タスク管理の概要を解説します。タスク管理とは、プロジェクトにおけるすべての業務を把握し、適切に管理することを言います。ここでいう管理とは、単なるToDoリストの作成や実行とは異なり、タスクの洗い出しや担当者のアサイン、スケジューリング、進捗管理など、プロジェクトに関わるすべての業務調整を含みます。
ひとつのプロジェクトが完成するまでには、膨大な量のタスクが存在しています。
これらのタスクは複雑に関連し合っており、その中のたったひとつに不備があるだけで、時にはプロジェクト全体の進行が止まることすらあるのです。
したがって、プロジェクトのスムーズな進行を実現するには、膨大なタスクのすべてを把握し、適正に管理することが不可欠であるといえます。
2. プロジェクトのタスク管理はなぜ必要なのか
続いて、タスク管理の必要性を整理します。
プロジェクトの完成に向けて行うべき業務を実際の作業レベルまで細分化したものが、そのプロジェクトにおけるタスクです。有効なタスク管理を行うためには、一見すると細かすぎるレベルまでタスクを細分化するのは、次に挙げるような理由があるためです。
2-1. 必要なタスクを明確化し、抜け漏れを防ぐため
タスク管理の最も重要な目的として、プロジェクト全体のタスクを明確化することが挙げられます。前述の通り、ひとつのプロジェクトを完成させるために行われるタスク量は膨大です。また、そのうちのひとつに不備があるだけで、プロジェクトの進行に影響を生じさせるリスクがあります。そのため、プロジェクトの開始時には完成までに必要な業務をタスクレベルまで細分化し、明確化することで、業務の抜け漏れや不備を防ぐ必要があります。
2-2. タスクの優先順位や着手順序を明確化するため
業務内容をタスクレベルまで細分化し全体を把握することで、タスク同士の関連や順序を明確化することも目的のひとつです。
全体像を把握しないまま場当たり的に業務を開始した場合、先に済ませておくべき業務が未完了であるために次の工程に着手できない、あるいはさほど重要でない業務にリソースを割き、重要な業務が後回しにされるなど、プロジェクトの進行を妨げる事態が生じる可能性があります。その点最初の時点でタスクを適切に把握・管理できていれば、優先順位や着手順を明確にし、最適なスケジュールを作成することが可能です。
2-3. ゴールや全体のタスク量に対しての進捗を把握するため
タスク管理が適切に行われているプロジェクトでは、チームメンバーは常にプロジェクト全体のタスク量と残量、スケジュール、進捗を参照できるようになっています。
その結果、自分が現在行なっている業務が持つ意義や求められる進捗を俯瞰的に把握することができます。また、より上流工程の進捗を参照することもできるため、業務予定を立てることにも役立ちます。
プロジェクトでは、予定を変更せざるを得ないこともあります。そのような場面においても、タスク管理が適正に行われているプロジェクトでは、変更による影響を最小限にとどめることができます。
3. タスク管理の7つのステップ
必要なタスクが漏れなく抽出され、適切なスケジューリングや優先順位付けがなされていれば、タスク管理はどのように進めても良いでしょう。ここでは、タスク管理を適切に進めるためのノウハウを紹介します。
ステップ1:プロジェクト完成までの業務をすべて書き出す
この時点では、タスクレベルまで細分化する必要はありません。
「市場調査」「ツールの開発」など、大項目レベルで列挙していきます。
ステップ2:業務内容をカテゴライズする
必要な業務をすべて洗い出すことができたら、次はその業務を大まかにカテゴライズします。
担当部署毎や業務の性質(マーケティング、開発など)などの項目でカテゴライズするとスムーズです。
ステップ3:業務内容をタスクレベルまで細分化する
洗い出した業務内容を、実際に行うタスクのレベルまで細分化します。
ステップ4:タスクの優先順位を決める
次にそれぞれのタスクの優先順位を設定します。実際に手を動かす順序ではなく、業務の重要度を明確化することを意識して行いましょう。
ステップ5:タスクを時系列に並べる
タスクの性質や関係性に合わせ、タスクを時系列に並べていきます。
ステップ6:タスク毎に着手予定日・期限を設定する
個々のタスクの実行に必要な工数と、プロジェクト全体の完成日から逆算した納期をもとに、実際のスケジュールを設定します。不測の事態が生じる可能性も考慮し、バッファを持たせたスケジュールとすることが重要です。
ステップ7:すべてのタスクとスケジュールをプロジェクトメンバー全員に共有する
作成したスケジュールやタスクリストは、メンバー全員が常に参照可能な形で共有しましょう。
いずれもシンプルな内容ですが、上記のステップを踏むことで、タスク管理の精度を高めながら始めることができます。
4. タスク管理で忘れてはならない3つのポイント
タスク管理を適切に行い、その効果を最大限に発揮するため、あるいはタスク管理を失敗しないためには、どのような点を考慮すべきでしょうか。ここでは、プロジェクトにおけるタスク管理のポイントを解説します。
ポイント1:必ずチーム全体で共有する
洗い出したタスクリストやスケジュールは、チームメンバー全員に共有する必要があります。
プロジェクト全体のタスク量やスケジュールを可視化することで、チームメンバーは自分の担当する業務がプロジェクト全体に対してどのような意味を持つのか把握することができます。
その結果、業務に対するモチベーションが向上し、プロジェクトにとって最適な成果物を想定・作成できるようになるでしょう。また、担当業務において変更やスケジュール調整が必要になった際も、影響範囲を正確に把握し、適切に対処できるといったメリットもあります。
ポイント2:タスク管理の責任者を明確にする
プロジェクト全体のタスク管理について責任を負う人材を設定し、プロジェクトメンバー全員に周知することも重要です。進捗管理の責任者を明らかにすることで、担当業務でトラブルや不確定要素が生じた際、担当者は誰に相談すべきなのか迷うことなく、適切な報告を行うことができます。さらに、タスク管理の責任者が全体的な現状把握・調整を定期的に行うことで、プロジェクト全体のタスク管理の品質向上に努めましょう。
ポイント3:タスクやスケジュールの洗い直しを定期的に行う
プロジェクトにおいて、変更や遅延は避けられないものです。そのため、全体のタスクやスケジュールについて、定期的に見直しを行う必要があります。タスクは抜け漏れなく洗い出されているか、新たに対応すべきタスクや、逆に不要になったタスクはないか、進捗とスケジュールに大きな乖離はないかなど、定期的にチェックします。もちろん、必要時にはスケジュールを変更し、全体に周知も行います。
5. まとめ
プロジェクトのスムーズな進行に向け、タスク管理の担う役割は非常に重要です。タスク管理が適切に行われていれば、プロジェクトの進行管理はわかりやすくかつ効果的なものになるでしょう。また、不測の事態が生じた場合にも影響範囲をすぐに洗い出すことで、その被害を最小化することも可能です。近年では、タスク管理はクラウド型のツールを活用して効率化する手法が一般的です。タスク管理を行う際は、ここで紹介したポイントだけでなく、ツールの活用も合わせて検討すると良いでしょう。