新型コロナウイルスの影響でテレワークが普及し、今後もその利用を継続させる企業も多いのではないでしょうか。従来の働き方とは異なり、テレワークに合わせた業務管理方法が求められるようになりました。テレワークにおいては、従業員の活動を直接見ることができないため、業務状況や勤務状況の「見える化」が欠かせません。
近年は、ツールを導入し、自動で業務管理を行う方法と、手動で作業内容を入力して管理する方法が使われています。この記事では、自動・手動の業務管理についてそれぞれメリット・デメリットを整理します。
目次
1. ツールを活用した業務管理方法
まず、ツールを活用して自動的に業務管理する方法を解説します。
従業員のパソコンにツールを導入することで、PC操作ログから業務管理を行います。パソコンの起動時間、キーボード打鍵回数、ソフトウェア利用時間などを自動で取得するため、労力を抑えて管理することができます。
1-1. メリット
自動で操作データが収集されるので、導入や分析が容易な点が最大のメリットと言えるでしょう。特に、労務管理の観点で勤務実態を把握する際などに効果を発揮します。また、アプリケーションやファイルの操作履歴から実労働時間を計測し、長時間労働やサービス残業の実態把握に活用できる点もメリットです。また、残業時間の申請と、実際のコンピュータ利用時間を比較し、その相違を検証する使い方も考えられます。
1-2. デメリット
取得できるデータが限定的であり、何のアプリを使っていたかを測っても、何のタスクを実施したかは分かりません。そのため、生産性向上の観点では、改善の契機にするアイデアが生まれにくい点がデメリットと言えます。また、大企業向けのツールが多く、コストが高くなりがちな点もデメリットです。さらに、コンピュータの使用状況が逐一記録されるので、従業員が監視されているような印象を受ける場合がある点も注意が必要です。
2. 自動で業務管理する代表的なツール
自動で業務管理を行うツールは以前から開発されていましたが、新型コロナウイルスの感染拡大によって急拡大したテレワークによって、改めて注目が集まっています。ここでは、自動で業務管理する代表的なツールを紹介します。
2-1. MITERAS
従業員一人ひとりの勤務実態と仕事内容を「見える化」するツールとして、2万人以上の導入実績があります。
サービス残業や休日の隠れ仕事が検知できるタイムレポートや、アプリの利用状況を可視化するジョブレポートが提供されるのが特徴です。組織単位での勤怠未入力件数を一覧したり、パソコンの利用開始・利用終了時間を一括で取得したりする機能により、管理職や人事部の作業を効率化させます。
2-2. NEC 働き方見える化サービス Plus
コンピュータの利用時間やアプリの利用状況を計測する多彩な機能に強みを持つツールです。
使用したアプリケーションやファイルの利用時間の割合を、日・週・月・年度で分析し、業務内容の振り返りに活かすことができます。メンバーごとの状況を一覧するダッシュボードや、休暇計画の共有、短いコメントの共有といった機能を統合した、業務の円滑化を図ります。
3. 手動での業務管理方法
ここでは、手動での業務管理方法のメリット・デメリットを解説します。
近年、IT技術の進歩によりツールによる管理が拡大してきています。一方で、社内にITに精通した人材が少ないといった理由から、手動で管理する企業もまだまだ多い状況です。
アプリの利用状況だけではなく、実際に何のタスクを実施していたかを「見える化」するには、その組織の業務に合わせたカスタマイズが必要です。資料作成、顧客との打ち合わせといった各タスクをマスターに登録し、従業員が作業内容を自ら入力するようにします。
3-1. メリット
業界や職種、役割によって実施するタスクの種類は大きく異なります。したがって、ツールを使った管理の場合、企業によっては期待するデータが得られないケースがあります。
一方で、手動で作業内容を入力する方法であれば、自社のニーズに合わせて集計をできることから改善につなげやすいでしょう。
つまり、誰が何の仕事をいつまでに実施するのか(したのか)を明確にしやすく、組織として予実管理・進捗管理がしやすいという点がメリットと言えます。
3-2. デメリット
手動による最大のデメリットは、その労力にあります。従業員全員が手作業で作業内容を入力しなければならないため、従業員の業務負荷の拡大につながる場合があります。また、時間の粒度を細かくし過ぎると、入力に要する時間が増え、管理作業の負荷増大を招く点もデメリットと言えるでしょう。ただし、昨今では手動ながら入力負荷を抑えて利用できるクラウド型のツールも登場しています。このようなツールは利用料も安いサービスが多く、大企業でなくても導入しやすい環境ができています。
4. 手動で業務管理するためのツール
ここでは、手動で業務管理する際に活用できるツールを紹介します。
手動の業務管理には、誰が何を担当するのかを可視化できる工程管理ツールが有効です。プロジェクト管理や生産管理の現場では頻繁に使われていたもので、テレワークを機に、多くの企業で導入が進んでいます。
4-1. エクセル
以前から工程管理にエクセルを使用する企業は多く見られました。誰もが使い慣れたツールのため、従業員が作業内容を登録したり、管理職が進捗管理を行ったりする際にも、導入や運用が容易に行える点が大きなメリットです。ただし、組織が大きくなると、複数人でファイルを共有する、あるいは、最新のバージョンを管理する、といった運用が困難になるという課題もあります。また、関数を使った集計作業を必要とする点もデメリットです。
4-2. クラウドログ
クラウド型のプロジェクト管理・工数管理ツールです。勤怠管理機能やガントチャート機能もさることながら、豊富なレポート機能が大きな強みと言えるでしょう。入力負荷を最小化するUI設計がされており、従業員の負荷を高めることなく運用することができます。
また、日報の登録や勤怠管理との連動も可能であり、労務管理と生産性向上の双方への効果が期待されます。
5. ニューノーマルにおける業務管理 〜時間の管理から成果物の管理へ
最後に、ニューノーマルにおける業務管理について考察します。
コロナ以前は勤務時間に基づいた業務管理が一般的でしたが、今後は成果に基づいた業務管理に移行していくことが考えられます。
5-1. 時間に基づいた業務管理における課題
例えば、提案資料を3件作成するタスクがあったとします。自動ツールを活用した業務管理では、パワーポイントを開いていた時間が計測されますが、それが売り上げに貢献する顧客向けの資料だったのかどうか、売り上げにはつながらない社内向けの資料だったのかを知る方法がありません。
労務管理に使うオフィスのタイムカードをテレワーク用のツールに置き換えただけで、仕事は「見える化」されておらず、生産性向上につなげるのは困難です。したがって、テレワークが当たり前となるニューノーマルでは、時間に基づいた業務管理は適していないと言えるでしょう。
5-2. 成果物に基づいた業務管理のメリット
同様に、3件の提案資料を作成するタスクに対し、手動の業務管理の場合、誰がいつまでにそのタスクを完遂するかを登録します。予定通りに進捗がなければ、管理職はその担当者に働きかけて、進捗を阻害する問題を解決したり、トレーニング・メンタリングを施したりできます。
作業中の仕事を可視化して、それが時間内に終わるようなアクションが取れるので、生産性向上に直結する点が最大のメリットです。従業員の評価を行う際にも、大口契約の資料作成に貢献した人や、記録された成果物の質や量が優れていた人を高く評価する、といった方法が取れるでしょう。したがって、成果物に基づいた業務管理が、今後の主流となるでしょう。
6. まとめ
この記事では、コロナ後のニューノーマル時代を見据えた業務管理方法を自動・手動の観点からそれぞれのメリット/デメリットを整理しました。
テレワークでは、従来とは異なる業務管理の在り方が求められています。
近年は、自動でコンピュータの操作ログを記録するツールがありますが、アプリの利用状況を見るだけでは、その生産性を測り、改善を図る余地が少ないというのが現実です。そのため、現時点では工数管理ツールなどを活用した業務管理方法が最適と言えるでしょう。