テレワーク時代 「ジョブ型」雇用による競争力の強化方法

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新型コロナをきっかけに、営業や事務・企画系の職種を中心として、多くの企業にテレワークが導入されました。テレワークを実行してみて、「仕事はオフィスの外でもできる」ことを経営者から一般社員までの方々が気づいたことは、雇用の考え方に変化をもたらしました。それまで当たり前と思ってきた仕事の慣行が、実は必要なかったこともわかってきました。

業務そのものおよび勤務制度の見直しが進むと、雇用における考え方も変わってくるでしょう。具体的には「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に変わっていくと考えられています。

この記事では、テレワーク下で注目されている「ジョブ型」雇用の導入のメリットや事例について解説します。

1. メンバーシップ型からジョブ型への移行

これまで日本では「メンバーシップ型」が主流の雇用形態でした。

1-1. メンバーシップ型とは

メンバーシップ型は、人に対して仕事を割り当てます。職場は運命共同体であり、終身雇用を約束された年功序列のピラミッド型組織で、仕事の範囲は曖昧です。

会社の視点からすると、環境や戦略が変化しても人の入替りが起きにくいため、構造的に戦略と要員にギャップを生じさせやすい雇用形態です。個人の視点からすると、自らどのような能力を伸ばしキャリア形成をするのか、という自律的意志を持ちにくい雇用形態といえます。

2020年(中小企業は2021年)から同一労働同一賃金ルールによって「同じ仕事に就いている限り、正社員・非正社員であるかは関係なく、同一の賃金を支給する」ことになりました。仕事の内容によって賃金が決定するので、「メンバーシップ型」雇用の維持は難しくなります。さらに、既に終身雇用や年功序列の制度は崩壊しつつあるため、「メンバーシップ型」から「ジョブ型」に雇用形態が移行していく可能性は高いでしょう。

1-2. ジョブ型とは

「ジョブ型」とは、職務を明確にした上で最適な人材を配置する、欧米などで一般的な雇用形態です。 職務に必要な能力を細かに記載した「職務定義書(ジョブディスクリプション)」を示し、社内外から人材を募ります。企業が求める能力を明確にして雇用契約を結ぶため、勤務時間ではなく「結果に応じた報酬」を基本にしています。

会社の視点からすると、要員のスキルアップや入替えなど、戦略やオペレーションの変革は格段に行いやすい形態です。なぜなら、事業・戦略の方針により組織と必要なジョブが定義され、あるべき要員を配置するからです。個人の視点からすると、契約関係が対等であるため自己裁量の余地が広がる一方、それが生涯続く保障はなくなります。社外の機会を含め、将来にわたりどのようなキャリアを形成し、どのように稼ぐかを考える必要があります。

2. 「ジョブ型」雇用のメリットとデメリット

「ジョブ型」雇用のメリットとデメリットを、企業と個人に別けてまとめると、以下の通りです。

2-1. 企業のメリット

専門分野に強い人材を採用できること。そして、専門分野の人材を育てていきやすいことがメリットとして挙げられます。やり遂げなければ評価を得られないので、自律性や責任感を求められるテレワークとの相性もよいといえます。テレワークによる従業員の通勤負担等の軽減、労務管理負担の軽減なども期待できるでしょう。

2-2. 個人のメリット

専門職の仕事に集中しやすいことで、「スキルを磨きやすい」「得意分野、学んでいきたい分野に集中しやすい」というのが最大のメリットです。専門分野ができるので、働き方の選択肢が広がり、市場価値に基づいた高い報酬を得られることもあります。

2-3. 企業のデメリット

より条件のいい会社に転職されやすい、というのが最大のデメリットでしょう。社員のキャリア設計に影響するので、総合職のように、会社側の都合で転勤や異動をさせにくい、という要素もあります。

2-4. 個人のデメリット

「仕事がなくなった時に、他の仕事がやりにくい」という点です。総合職と違い「他部署に回してもらう」ことはできずに、失業することが懸念されます。「選択の自由と収入の増加」を得ることと引き換えに「リスクの抑制」を手放す可能性があります。

3. 企業への「ジョブ型」雇用の導入

大企業で「ジョブ型」雇用の導入が進んでいます。主要企業が「ジョブ型」に移行することで、時間管理をベースとする日本の労務管理のあり方も変わりそうです。

  • 富士通は2020年度から国内の課長職以上の約1万5000人を対象に「ジョブ型」雇用を導入し、その後他の社員にも広げます。時田隆仁社長は「新しい働き方では職責に応じた評価に変わらざるを得ない」と語ります。
  • 日立製作所が約2万3000人を対象に2021年4月から「ジョブ型」雇用の導入を表明しました。テレワーク定着をきっかけに、転換を加速させたい考えです。

IT企業ではテレワーク専用人材の採用が始まりました。テレワークの広がりは、相性の良い「ジョブ型」雇用導入の広がりにつながると予測します。

  • ソフト開発テストを受託するSHIFT(シフト)は、自宅環境準備のために100万円を支給する「テレワーク専門の正社員」エンジニアの採用を開始しました。「働く場所を限定しないことで、広く優秀な人材を採用できる」と意図を説明します。
  • さくらインターネットは、オフィスに通えない遠隔地に住む人材も採用できるように、出社を前提としない雇用契約を新卒社員と結べるようにします。
  • サーバーなどを手掛けるGMOペパボは、6月から約330人の社員全員が原則テレワークへと移行しました。「国内ならどこに住んでもいい」と採用条件も変えました。

参考:
在宅勤務エンジニア募集|株式会社SHIFT
雇用制度、在宅前提に「ジョブ型」や在宅専門の採用 | 日本経済新聞

4. ジョブ型を導入する際に必要な制度改革

「ジョブ型」を効果的に運用するため、各企業はさまざまな制度改革に取り組んでいます。

4-1. テレワーク制度

オフィスに集まらなくても遂行できるように業務プロセスを見直し、使用ツールを電子化するなどが必要です。オフィス外からアクセスできるインフラを整え、テレワークに応じた手当の改廃や新設も行います。更に、フレックスタイム制度の拡充や、週休3日制の検討といった勤務制度についても見直すべき要素が出てきました。

4-2. 評価と給与体系

実際に「どのような成果」を出したかによって評価が決まり、評価に伴って報酬が決まる仕組みにする必要があります。人材の流動性が高まるため、外部の給与水準に対する競争力も重要になります。

4-3. 採用

新卒一括採用から中途採用および通年採用に移行します。仕事内容や勤務地が限定され、専門的なスキルを評価する「ジョブ型採用」になります。

5. まとめ

この記事では、「ジョブ型」雇用の導入のメリットや事例を紹介しました。

戦略やオペレーションの変革に適した「ジョブ型」導入が、大企業から始まっています。大手だけでなく専門人材の割合が高い企業は、テレワークから始まり、「ジョブ型」の導入が増加すると予想されます。

アフターコロナにおいて競争力を発揮するために、経営戦略の実行に最適なかたちで「ジョブ型」を組み込んだ「自社型」の雇用形態を、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。[/vc_column_text][/vc_column][/vc_row]

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