「ガントチャート」とは、横軸に時間、縦軸にメンバーや作業内容を配置し、工程やタスク毎に作業開始日、作業完了日の情報を帯状グラフに表したものです。作業計画を視覚的に表現し、「全体の計画を見える化」できることから、プロジェクトの進捗管理に力を発揮します。この記事では、ガントチャートの概要を解説し、ガントチャートの「基礎から実践まで」を網羅した記事をまとめてご紹介します。
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目次
ガントチャートとは
ガントチャートとは、第1次世界大戦時にアメリカ人の機械工学者であり経営コンサルタントでもあったヘンリー・ガントによって考案された「プロジェクト管理」に用いられる表の一種です。
縦軸に作業単位、作業内容・担当者・開始日・終了日・作業間の関連などを置き、横軸に日時(時間)をとって、横棒によって行う期間と進捗状況などを視覚的に示します。
プロジェクトの各段階を細かく作業単位まで展開してツリー構造で階層を表示し、全体の作業の流れおよび進捗状況を表すことができます。ガントチャートに示す作業単位は、プロジェクトの全メンバーが作業内容を「具体的に〇〇をする」と理解出来るように分解するのが理想ですが、最低でも作業担当者とプロジェクト管理者の理解が得られる状態にしておくことが必要です。
プロジェクトの全体像を可視化して進捗状況を把握しやすいようにし、スケジュール、担当、作業工程などを正確に把握することは、プロジェクトの非常に大切な準備と言えるでしょう。
ガントチャートのメリット・デメリットとは?
ガントチャートを利用するメリットとデメリットを解説します。
ガントチャートのメリット
工程管理というと主に製造業等で使われる用語ですが、ガントチャートを利用して工程を管理することで、プロジェクトをより円滑に進行させることができます。
ガントチャートのメリットは、以下の3つです。
メリット1:プロジェクトのタスク可視化
ガントチャートのメリットは、プロジェクトに関わるすべてのチームのタスクを視覚的に捉えられることです。進捗をリアルタイムで共有できるため、タスクの遅延などの問題にもスピーディーに対応ができます。
メリット2:重要事項の共有
マイルストーンを入力しておくことで、プロジェクトの重要事項を全体に共有することが可能です。それぞれの担当者も記載されるため、責任の所在も明確になり、生産性や品質の向上にもつながります。
メリット3:進捗状況の把握
工程管理における個々の作業進捗は、PM(プロジェクトマネージャ)がメンバーと個別にやり取りして進捗状況を把握しているケースも多いでしょう。しかし、ガントチャートなら個々の作業進捗をプロジェクト全体で共有できるため、PMの負担を大幅に軽減できます。よって、PMは本来やるべきプロジェクト全体の管理に注力できるようになります。
ガントチャートは、急なトラブルへの対応や新たなタスクの振り分け、チーム外の協力会社・顧客への共有などさまざまなシーンで活用可能です。ガントチャートについてもっと詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:工程管理においてガントチャートを利用することの効果とメリット!
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ガントチャートのデメリット
ガントチャートのデメリットは、以下の3つです。
デメリット1:複雑なプロジェクトでは全体の把握が難しい
ガントチャートは、タスクの可視化や進捗管理に適していますが、多くのタスクがからむような複雑なプロジェクトでは、全体の把握が難しくなる場合があります。
プロジェクトに関わる人や機器などのリソースの利用状況などを含めて把握したい場合も、ガントチャート以外のツールや手法が必要です。
デメリット2:変更に対する柔軟性が低い
ガントチャートはあらかじめ計画されたスケジュールやタスクを可視化するものであり、計画の変更には柔軟に対応できません。スケジュールの変更が頻繁に発生する場合、その都度ガントチャートを修正する必要があり、大きな手間がかかる恐れがあります。
デメリット3:工数管理が難しい
ガントチャートのみでプロジェクト管理を行う場合、プロジェクトの工数(各作業にかかる作業量)管理が難しくなるデメリットもあります。
作業工数の見積もりが甘ければ、プロジェクトの遅延を引き起こす可能性があり、進捗管理を適切に行うためには工数管理が不可欠です。
工数管理の重要性について、詳しくはこちらの記事をご確認ください。
関連記事:工数管理を徹底解説!目的や重要性、簡単な始め方から分析方法まで
ガントチャートを構成する要素
続いて、主にガントチャートを構成する6つの要素と、その概要をご紹介します。
要素 | 概要 |
タスク | プロジェクトの完了に必要な作業の最小単位。 ガントチャートでは、タスク単位で開始・終了予定日が設定される。 |
タイムスケール | チャート内に表示される時間の間隔。 主に「時間、日、週」などで表記される。 |
マイルストーン | タスク・プロジェクトのチェックポイント・中間目標地点。 主に、進捗状況の把握に活用される。 |
作業依存関係 | タスクの開始・終了にかかわる依存関係。 ※「タスクAが完了しなければ、タスクBが開始できない」など |
クリティカルパス | プロジェクトの全工程を最短時間で完了する作業経路。 クリティカルパスに注意することで、プロジェクトの遅延を防ぎやすくなる。 |
WBS | 作業工程を細かいタスクに分解し、構造化して管理する手法。 |
ガントチャートの作り方
ガントチャートの作り方の手順は以下の通りです。
- ステップ①:WBSを用いてタスク・作業の洗い出しと細分化を行う
- ステップ②:タスク実行の順序を決定する
- ステップ③:スケジュールを作成する
- ステップ④:タスク・作業の割り振りを行う
ステップごとに、重要なポイントや注意点を詳しく解説します。
ステップ①:WBSを用いてタスク・作業の洗い出しと細分化を行う
ガントチャートを作るには、WBSが必要です。WBSとは、「作業(Work)」「分解(Breakdown)」「構造図(Structure)」の略であり、プロジェクトのタスクを可能な限り細分化して管理する手法です。
WBSを作成することですべてのタスクの所要時間や担当者が把握でき、タスクの漏れを防ぐことができます。精度の高いWBSを作成できれば、ガントチャートはWBSの内容を入力するだけで作成可能です。
ただし、WBSの作成にはいくつかの注意点があります。ここからは、職種やレベル別にWBSの作り方を紹介します。
初心者向けWBSの作り方
初めてガントチャートを作成する場合、まずは、それぞれのタスクを所要時間が把握できるレベルまで分解しましょう。この際、担当者と作成者が考える所要時間にギャップがないように、必ず担当者の合意を得ることがポイントです。
続いては「この作業が終わらなければ、次の作業ができない」という作業フローを意識して、作業の順序を設定します。すべての順序を線で結んだときに最長となる経路を「クリティカルパス」といい、プロジェクトを進める上で最も重要となります。クリティカルパスは、ひと目でわかるように強調しておきましょう。
最後に、分解した作業をツリー型に構造化していきます。子要素の作業を足し合わせると親要素と同レベルになるようにまとめるのがポイントです。
WBSの作成では紙やホワイトボードではなく、ウェブツールを使用するのがおすすめです。これによって作成時だけでなく、チームでの共有時の効率も高まります。おすすめのウェブツールは後述するので参考にしてみてください。
初めてのガントチャート作りについては、こちらの記事でさらに詳しく解説しています。
WBSの基礎知識と作り方を徹底解説!無料Excelテンプレート付き!
若手SE向けWBSの作り方
システム開発のプロジェクトにおいて、若手SEがいきなり精度の高いWBSを作るのは困難です。まずは既存のWBSを参考にして作成しましょう。
一般的なWBSの作成と同様に、最初に作業工程を洗い出します。スケジュールや所要時間、工数などを把握しましょう。
続いてプロジェクトのメンバーで、タスク漏れがないか確認します。システム開発のプロジェクトは、大人数で進行することが多いため、作業の管理が属人化しやすいです。
若手SEは、タスクの前後関係や担当者のスキルセット、設定した所要時間の確認などもディスカッションしておくことが大切です。
WBSがまとまったら、ガントチャートに反映させていきます。洗い出しの段階で担当者や上長の確認が取れていれば、ツールに入力するだけで完成するでしょう。
若手SE向けのWBS、ガントチャート作成について詳しく知りたい方はこちらの記事を参考にしてみてください。
PM向けプロジェクト計画書の作り方
PMは、良いプロジェクト計画書のために必要なことを再確認した上で、経験と照らし合わせながら精度を高めていくことが重要です。
前提として、プロジェクト計画書作成には、「QCD(品質・コスト・期限の目標)」の明確化が欠かせません。その上で、重要なマイルストーンやクリティカルパスをまとめたスケジュールを作成します。
それらのスケジュール通りに進めるためには、誰がどのような役割を担うのかがひと目でわかるプロジェクト体制図も必要です。
また、プロジェクトにはリスクが付きものです。そのため、考え得るリスクをあらかじめ洗い出し、発生確率や影響度、対応策を記載しておきましょう。
良いプロジェクト計画書の作り方について詳しく知りたい方はこちらの記事をご覧ください。
関連記事:
プロジェクト計画書に記載する項目
【無料資料】最適な工数管理方法の選び方と管理ツールの費用対効果
ステップ②:タスク実行の順序を決定する
次に、タスクの作業依存関係を明確にし、実施する順序を決定してガントチャートに落とし込みます。
順序決定の際にはクリティカルパスを意識し、タスクをどの順序で実施すれば最短でプロジェクトを完了できるかを考慮しましょう。
ステップ③:スケジュールを作成する
続いて、スケジュールを作成します。
タスクの依存関係を考慮し、各タスクの開始・終了日やプロジェクトにおけるマイルストーンを設定することで、精度の高いガントチャート作成が可能です。
また、タスクの作業時間を正確に見積もるには、工数管理が必要不可欠です。工数の概要については、以下の記事をご確認ください。
関連記事:工数とは?計算方法とスケジュール反映の4つのポイントを解説
ステップ④:タスク・作業の割り振りを行う
最後に、タスク・作業について、担当者の決定・割り振りを行います。
一人の担当者にタスクが偏らないよう、タスクの工数レベルで、担当者ごとの負荷が平準化するよう考慮しましょう。
プロジェクトを掛け持ちしている担当者がいる場合は、当プロジェクトに携われる時間を確認し、ガントチャートを作成する必要があります。
ガントチャートの作り方のコツ
ここからは、ガントチャートの作り方のコツを解説します。
ポイント1:タスクは細分化しすぎない
タスクを細分化した場合、正確なスケジュール把握が可能です。しかし、タスクの状況確認やガントチャートの更新など、管理工数が増えるという問題があります。
タスクの細分化は、プロジェクト管理者が管理できる範囲にとどめることが大切です。
ポイント2:タスク・作業間の関係性を考慮する
タスク・作業間の依存関係を考慮しなければ、ガントチャートのスケジュール通りに作業を開始できないタスクが発生する可能性があります。
プロジェクト全体の遅延を回避するためにも、作業依存関係の明確化は重要です。
ポイント3:使いやすいツールを使用する
ガントチャート作成の専用ツールを活用すれば、担当者の入力や、集計・進捗状況の可視化などの管理が容易となります。
エクセルでもガントチャートの作成は可能ですが、フォーマットの作成に時間がかかるほか、担当者の入力方法・使い方次第でフォーマットが壊れてしまう恐れもあるため、運用時には注意が必要です。
ガントチャートの活用方法
ここからはガントチャートをどのように活用していけばよいか、それぞれのシーンごとに紹介していきます。
タスク管理
チームで仕事をする際には、多くのタスクが同時に進行します。プロジェクトによっては一人で複数のタスクを持つ場合もあれば、複数人で一つのタスクを行うこともあるでしょう。
チームのタスク管理方法が最適化されていないと、タスク漏れや遅延、業務品質の低下を招くリスクが発生します。
タスクをガントチャートによって可視化してメンバーの負担を把握することで、タスクの平準化が可能です。
タスクを標準化できれば、キャパシティを超えるタスクの追加を避けられるため、品質低下などのリスクを回避できます。また、新たなタスクを適切に割り振れるようになり、チーム全体のパフォーマンス向上につながります。
ガントチャートを活用したタスク管理について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事:タスク管理の必要性とメリット
進捗の管理
プロジェクトの計画が完了して実際に動き始めたら、PMの責任は「プロジェクトを期限通りかつ予算内で仕上げること」に変わります。プロジェクトの計画と進捗を比較し、必要に応じてスケジュールや予算、作業計画を調整・変更しなくてはいけません。
ガントチャートでプロジェクトの進捗管理をすることで、チーム全体で共通の認識を持つことができます。進捗に合わせて調整された内容を可視化することができるので、プロジェクトが軌道上を進んでいるかを把握することができるでしょう。
PMは、期間内かつ予算内に目標を達成するためにも目の前の作業だけに集中するのではなく、ガントチャートを用いてプロジェクト全体の全体の監視・コントロールを行うことが重要です。進捗管理について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事:プロジェクトマネージャーの肝となる進捗管理とは?計画通りに進めるためのノウハウ紹介!
課題の管理
「課題」と「タスク」には大きな違いがあります。「課題」とは「解決しなければプロジェクトの目的を達成できないこと」であり、「○○である」などの事象のことです。一方でタスクは、「やらなければいけないこと」であり、「○○をする」などの作業のことです。個人で解決できない事象を「課題」、それらの課題を解決するために細分化された個人の作業を「タスク」と認識しておきましょう。
プロジェクトにおける課題は、5つのステップで解決できます。解決すべき事象の「発見」、チームでの「共有」、解決方法や優先順位への「合意」、具体的な「タスク化」、完了まで見守る「フォローアップ」を繰り返すことで、効率的かつ確実に課題を処理できます。
課題の管理もガントチャートを活用することで、効率的に行うことができます。課題の管理について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事:発見・共有・合意のステップ
アジャイル開発での活用
アジャイル開発とは、ビジネス価値の最大化を目的とした柔軟で継続的なソフトウェア開発です。常に変化し続けるビジネス環境や顧客の要求に対応するために、複数のアプローチの中から組織の文化や企業規模、開発方針に合った手法を選択する必要があります。
たとえば、ガントチャートを活用することで、アジャイル開発の円滑化が可能です。柔軟で継続的なソフトウエア開発において、誰がいつ何を担当するのかを可視化でき、プロジェクト全体を見通しながら計画と実績を比較することは重要です。
中にはエクセルで工数管理をする企業もあるようですが、エクセルはバージョン管理や変更管理が難しく、シート上と実際の進捗に時差が生じやすいというデメリットがあります。
そのため、チームの情報をリアルタイムで閲覧・編集できるオンラインのガントチャートの利用が望ましいでしょう。
アジャイル開発でのガントチャートの活用方法について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
ガントチャート活用の注意点
ガントチャートを活用する際は、以下のポイントに注意が必要です。
- ガントチャートの目的はタスク完了日の予測
- 進捗状況を報告しやすい雰囲気づくりが大切
プロジェクト管理の目的は、「完了した業務」の把握ではありません。そのタスクが「いつ完了するのか」を把握あるいは予測することが最大の目的です。そのため、ガントチャート利用の際は、「あと何日」「あとどのくらいの費用」「あとどのくらいのリソース」が必要なのかを把握できているか注意しましょう。
また、ガントチャートで管理されているプロジェクトの進捗の報告方法にも注意が必要です。なぜなら、メンバーの心理やタスクに対する認識によって「進捗率」は大きく異なるためです。たとえば、上長に怒られないために進捗率を高めに報告したり、なんとなくの感覚で報告したりする可能性があります。進捗を確実に共有するためには、進捗率計算のルールづくりやごまかす必要のない雰囲気づくりが大切です。
それらのポイントを抑えることでより円滑にガントチャートを利用でき、チームのパフォーマンス向上につながるでしょう。その他、ガントチャート活用の注意点について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
関連記事:進捗管理は「これまでやってきた業務の内容」を把握するのではない
ガントチャートが作成できるツール3選
チームの規模やプロジェクト内容に合ったガントチャートを使用することで、パフォーマンスや顧客満足度の向上につながります。ここでは業務効率化につながる3つのおすすめツールを紹介します。
BeingProject-CCPM
「BeingProject-CCPM」は、主に建設業向けのツールであり、複数の工事であっても一元管理が可能です。全体の進捗を把握して問題を早期解決することで、工期の短縮につながります。
Koutei STARTER
「Koutei STARTER」は、エクセルをベースとしたシステムのため初めてでも操作がしやすく、幅広い業種・業務で活用できます。
クラウドログ
「クラウドログ」は、工数管理に特化したツールですが、ガントチャート作成にも対応しています。売り上げや工数原価、損益などさまざまな種類のレポートを出力できるため、作業別・工程別・企業別・商品別など幅広く活用できます。また、14日間の無料トライアルで使い勝手を試してから入会できる点もメリットです。
こちらの記事では3つのツールをより詳しく紹介しています。
関連記事:工程管理で工程を見える化することのメリットと工程管理ツール3選!
エクセルの無料ガントチャートテンプレート
ガントチャートの作成・運用について、まずはエクセルで始めてみたい方も多いでしょう。
エクセルでガントチャートを作成する際は、テンプレートを活用することでフォーマット作成の時間を削減できます。
エクセルの無料ガントチャートテンプレートを用意していますので、以下のURLからダウンロードし、ぜひ活用してください。
関連記事:ガントチャートサンプルExcel|お役立ち資料
まとめ
この記事では、ガントチャートの概要を説明し、ガントチャートのメリットや作り方、活用方法についてまとめた記事を紹介しました。
それぞれの記事では、さらに詳しい内容を解説しているので参考にしてみてください。
ガントチャートは、各作業の開始・終了時期、作業の流れ、進捗状況などが把握しやすく、プロジェクト管理者やメンバーにとって非常に有効な管理手段です。
日々の仕事に活用して、ガントチャートによるプロジェクトの進捗管理を自分のものにしていきましょう。