プロジェクトを成功させるためには、計画を建て、「ガントチャート」を作成し、「進捗フォロー」していくことが重要です。進捗フォローには様々な分析方法がありますが、「イナズマ線」は活用しやすく、プロジェクトの進捗管理能力に長けている方法です。
海図に船の位置と速度を毎日書き込んでいくように、ガントチャートにイナズマ線で現状を記載することにより、各タスクの遅れや先行が一目で分かります。
この記事では、プロジェクトの進捗状況を「イナズマ線」で把握するメリットとデメリットを解説します。併せて、「イナズマ線」のデメリットを補完する方法もご紹介します。
プロジェクトの遅延を把握するには
航海士が海図に自船の現在位置や進路・速度を一切記入しないとすると、無事に航海の目的を達成することはできないでしょう。同様に、プロジェクト管理者がガントチャートを作成した後に、スケジュール通りに進んでいるかどうか「進捗フォロー」をしなければ、目的通りにプロジェクトを完成させることは難しくなります。プロジェクトにおいては、レビュー、承認、テストや最終納品のたびに、ガントチャートの内容を改訂することが必要です。
ガントチャートと海図が異なる部分は、船の位置はたった一点で示される一方で、プロジェクトの場合はそれぞれのタスク毎に位置を示す必要があるということです。つまりガントチャートとは、一隻の船ではなく船団全体を表示した海図のようなものです。
進捗管理は、プロジェクトが進行し始めてから定期的に行う必要があり、様々な手法があります。せっかくガントチャートでスケジュールを組んだとしても、ガントチャートの進捗度をマクロ的に「見える化」していかなければ、活用はできません。「イナズマ線」を活用した進捗管理により、船団全体の進捗を「見える化」する方法をみていきましょう。
イナズマ線とは
ガントチャートにおいて、進捗状況を視覚化する際に便利な方法が「イナズマ線」です。
イナズマ線を作成する手順は次の通りです。先ず、各タスクを表す長方形内に、まったく進んでいない場合は左端、50%進んでいる場合は中央、完了した場合は右端というように、現在の進捗率を示すポイントを定めます。進捗ポイントをタスクの上から順に、下向きの直線でつなぎます。このようにしてできあがる折れ線が「イナズマ線」です。
イナズマ線は、現在時点よりも進捗が遅れている場合は左側に突き出す線となり、進んでいる場合は右側に突き出す線になります。イメージとしては、雷が落ちた時に出現する、イナズマのようなギザギザの線が描かれます。
イナズマ線が左側に突き出した“遅れているタスク”に着目して、「遅れを取り戻す施策」や「リスケジュールを行う」などの対処を行います。
プロジェクトの進捗管理をする上では、定期的にガントチャートにイナズマ線を追記していきます。プロジェクト全体のスパンに応じて適切な間隔でイナズマ線を書くことにより、ガントチャートのどこが遅れ、どこがうまく進んだかをフォローできます。特に、1つのプロジェクトで作成するタスクの件数が多い場合、イナズマ線はマクロ的に見て瞬時に進捗状況を判断できるという利点があります。
イナズマ線のメリット
タスクは増えれば増えるほど、管理がしづらくなり、対応するスピードも求められます。プロジェクトの遅れを可視化し、素早く対応できることが「イナズマ線」のメリットです。具体的には、次の3点が挙げられます。
メリット1:遅れているタスクをピンポイントで見つけやすい
前述の通り、タスクが多いプロジェクトにおいては、1つ1つのタスクの進捗管理は非常に困難です。「登録されたタスクが多すぎて遅れを見逃した」「遅れているタスクが複数あって対応しきれない」といったことを防ぐ上で、イナズマ線は効果を発揮します。線が左向きに突き出していることに注目することで、遅れをピンポイントで特定し、対応しなければならないタスクに焦点を当てられます。
メリット2:遅れや進みの度合いがイメージしやすい
各タスクの進捗状況ををイナズマ線で見た場合、線が大きく左向きに突き出していると、進捗が大幅に遅れていることが直感的にわかります。進捗度合いをパーセントなど数値のみで示すのでなく、可視化された「線」で示すことで、プロジェクトの進捗がどのくらい遅れているのか、どれくらい進んでいるのかのイメージがつきやすくなります。
メリット3:情報を共有しやすい
進捗の遅れを把握した場合、なぜ想定通りにタスクが進まないのか担当メンバーに確認するなどして原因を突き止め、対策を指示します。原因と対策は様々ですが、いかに早くコミュニケーションを取り、原因特定するかが重要です。イナズマ線は「線」という可視化された分かりやすいツールであるため、遅れの原因を特定する際に他メンバーとコミュニケーションをスムーズに行い、素早く解決につなげることができます。
イナズマ線のデメリット
イナズマ線にはデメリットもあります。以下では、デメリットとそれを補う方法を説明します。
デメリット1:タスクの着手時点を把握できない
イナズマ線には各タスクの遅れや先行がマクロ的に一目でわかるメリットがある反面、遅れたタスクが実際にいつ着手されたのかがわかりにくい、というデメリットがあります。
イナズマ線を書く際は、直接ガントチャートの各タスクを表す長方形内に“進捗度”を記入します。「開始日」の遅れたタスクがいつ着手されたのかを把握できないため、ガントチャートに注釈を加えなければいけません。
イナズマ線のデメリットを補う方法として、「イナズマ線」と並んで進捗管理によく利用されるツールである「二重線」を併用するということが考えられます。
二重線法
「二重線」は、ガントチャートの各タスクに、計画線と実績線の2本の線を上下に重ねて引いて表現する進捗管理の方式です。
計画線は、着手予定日から完了予定日までを線で結び、実績線は、実際の着手日から完了日までを結びます。「進捗管理日」の時点で予定より遅れているタスクがある場合には、そのタスクの終了予定日まで線を引く必要があります。
「二重線」は、各タスクの予定と実績が一目で分かるというメリットがある反面、進捗管理日を基準とした時の全体の進捗状況が把握しにくい、というデメリットがあります。
二つの方法は一長一短ですが、いずれの方法もガントチャートを定期的にアップデートして予実管理を行う方法である点は共通しています。
デメリット2:タスクの依存関係を把握しづらい
イナズマ線は「タスクAが完了しないとタスクBが始められない」といったタスク間の依存関係を視覚的に捉えるには不向きです。
タスクの依存関係を把握できていない場合、計画通りに進捗しているように見えても、前後するタスクの遅延により遅れや手余りが生じるおそれがあります。このデメリットを補うために有効な方法が、クリティカルパスを特定することです。
クリティカルパス
クリティカルパスとは、プロジェクトチームがプロジェクトの完了に向けて必要な一連の作業のうち、最も多くの時間を要するタスクです。主に、各作業にかかる時間を特定する目的で使用されます。
重要なタスクの遅延はプロジェクト全体に影響します。クリティカルパスによって効果的にリソースを割り振ることで、ボトルネックの発生を防げるでしょう。
クリティカルパスの特定により、チームがプロジェクトや成果物を計画通りに完成・納品するための十分な時間を確保でき、各タスクを消化するまでのスケジュールを構築できます。
※関連記事:【プロジェクト管理】クリティカルパス対策に有効な手段と資源配分の要点!
デメリット3:エクセルでの管理に手間がかかる
イナズマ線をエクセルで管理する場合、プロジェクトが多くなればなるほど、管理工数がかかってしまいます。
管理工数がかさむと、現場からの報告を進捗表に反映するのに精一杯となり、プロジェクト完了までに残っているタスクの量や、完了までにかかる時間を十分に把握できません。
このデメリットを解消するために有効な方法が、バーンダウンチャートの活用です。
バーンダウンチャート
バーンダウンチャートとは、プロジェクトの残作業と必要な時間が一目でわかるチャートです。タスクの所要時間の推定や、課題の分析によってプロジェクトの完了日を決定するために使用されます。
バーンダウンチャートを作成する際は、チャート上にタスクの推定と実際の所要時間をあわせて記録します。これにより、作業の所要時間の予実を視覚的に表現することが可能です。
※関連記事:バーンダウンチャートとは?読み解き方や作り方を解説!
プロジェクトの進捗把握に工数管理ツールを活用するメリット
イナズマ線は、プロジェクト全体の進捗状況を視覚的に把握するのに有用です。しかし、プロジェクトを成功させるためには、さらに詳細なスケジュール管理が必要です。
プロジェクトの詳細な管理とリアルタイムの更新、リソースの最適化を実現するのに役立つのが、工数管理ツールです。ここでは、プロジェクトの進捗把握に工数管理ツールを活用するメリットを説明します。
メリット1:タスクの依存関係を把握しやすい
工数管理ツールでは、タスクの依存関係やマイルストーンをあらかじめ設定することにより、プロジェクトの全体像と進捗状況を一目で把握できます。
プロジェクトの規模が大きくなるほど、多くのタスクやサブタスク、依存関係などが生じ、人の手で管理すると抜け漏れが起こりやすくなります。
工数管理ツールによって依存関係を適切に管理、追跡することで、効率的な管理が実現できるでしょう。
メリット2:多様なグラフで進捗を可視化できる
プロジェクトの状況や段階によって、管理・把握したい内容は異なります。工数管理ツールでは、様々なグラフを用いてプロジェクトの状況を可視化することが可能です。
プロジェクト管理に最も多く使われるガントチャート以外にも、WBSやパレート図、円グラフ、棒グラフなど幅広いパターンから最適なグラフを選択できます。
メリット3:アラート機能で抜け漏れを防止できる
工数管理ツールのなかには、タスクの管理機能として、作業漏れや期限超過を防ぐためのアラート機能が備わっているものもあります。
アラートを設定することで、タスクの抜け漏れや期日忘れを防止できます。納期の一週間前、前日などアラートの期日を適切なタイミングに設定すれば、タスク完遂の一助となるでしょう。
メリット4:コメント機能で補足情報を連携できる
タスク管理においては、タスク作成、割り当て、進捗の追跡など基本的な機能に加え、コメント機能による補足情報の連携も可能です。
プロジェクトのメンバーで直接顔を合わせずとも、詳細な情報共有を円滑に行えます。課題やタスクの重大さをメンバー同士で共有するなど、使い方も柔軟にカスタマイズできます。
メリット5:出力によって報告資料として活用できる
工数管理ツールには、入力されたデータから業務に要した時間や工数を可視化できるレポート機能が備わっています。レポートには、売上・原価・損益率など様々な項目を表示でき、報告資料としても活用可能です。
社内メンバーや外部メンバーごとに必要な情報を選択して、瞬時に出力することもできます。エクセルでの作業に比べて、分析や報告資料作成にかかる工数を大きく削減できるでしょう。
※関連記事:【プロジェクト管理ツール5選】プロジェクト管理にはツールの導入が不可欠!プロジェクト管理ツールのメリットと選び方を理解して導入しよう!
クラウドログの特徴
プロジェクトの進捗把握に活用できる工数管理ツールとして、クラウドログの特徴を紹介します。
ガントチャートと工数の管理を同時にできる
メンバーが入力した工数が即時にシステムへ反映されるため、工数とプロジェクトの進捗をリアルタイムに可視化できます。従来のシステムに比べて入力しやすく、メンバーの工数入力作業の定着も容易に行えるでしょう。
また、入力された情報をプロジェクト、メンバー、工程別など管理したい項目ごとに様々な軸から把握できるため、プロジェクトの状況を多角的に確認できます。
リアルタイムでの状況把握が可能となれば、プロジェクト全体の軌道修正にも早期に着手できるでしょう。
タスクのグループや依存関係を可視化できる
クラウドログでは、タスク同士の依存関係の設定やタスクグループの作成、マイルストーンの設定など、ガントチャートに必要な機能が網羅されています。各メンバーの進捗を可視化することで、業務の透明度が上がるため、進捗状況の把握にかかる工数を削減できます。
また、ドラッグ&ドロップによる直感的な操作でガントチャートを作成でき、管理者が一からフォーマットを整える必要はありません。タスクの進捗管理など、より本質的な業務に集中できるため、生産性の向上にも寄与します。
複数プロジェクトを同時に表示できる
クラウドログでは複数プロジェクトを一度に表示し、メンバーごとに携わるタスクを一覧化できます。プロジェクト単位だけではなく、タスク単位での工数の予実も管理することが可能です。
タイムシート上にタスクの期日と工数実績を表示できるため、メンバーのプロジェクト全体や担当スケジュールに対する意識の向上にもつながります。
タスクはインポート機能によって、複数プロジェクトにわたり一括登録でき、ガントチャートの複製も可能です。登録したデータを参考情報として社内に蓄積すれば、類似プロジェクトの工数見積もり精度の向上にも役立ちます。
※関連記事:クラウドログ サービス紹介資料
まとめ
「プロジェクトの進捗状況」を正確に把握するためには、ガントチャートをアップデートし、進捗を一目でわかるようにするための工夫が必要です。今回紹介したイナズマ線や二重線、クリティカルパスやバーンダウンチャートは、プロジェクトやタスクの進捗状況の把握に効果的な、非常に使いやすいツールです。
プロジェクトの成否は進捗管理に大きく影響するということを念頭に、ガントチャートと工数管理が同時にできるツールをベースとして、様々な管理手法を活用してみてはいかがでしょうか?