中堅企業向けのERP製品は多数販売されていますが、その中からどのように製品を選定すればいいのでしょうか。ERP製品には提供機能や提供方式、コストなど様々な比較ポイントがあり、それらが自社の業務や特性と一致するかを確認することが大切です。
この記事では、主に中堅企業向けのERP製品を対象として、製品の比較ポイントを紹介します。さらに、主要なERP製品について取り上げ、各製品の特長について解説します。
目次
1.ERPの概要と導入メリット
ERPとは「Enterprise Resource Planning」の略称で、企業の基幹業務である製造・流通・販売・在庫管理・人事給与・財務会計などの機能を備えた統合的なシステムのことです。
過去、基幹システムは業務分野ごとに個別に導入されるケースが多く、共通的に必要となるデータについてはシステム間でデータ連携を行い共有するのが一般的でした。しかし、そのような構成では各システムのデータが最新化されなかったり、リアルタイムで情報を把握できなかったりといった問題が生じてしまいます。そこで、経営に必要な情報をリアルタイムで把握でき、経営全体の効率化を実現する仕組みとして、ERPが注目されるようになりました。
近年では、多くの企業でERPの導入が進んでいます。
2.ERP製品の比較ポイント
以下では、ERP製品を選定する上での比較ポイントについて解説します。
2-1.提供機能範囲と業務への適合性
ERP製品はパッケージやSaaS等の形態で提供されるため、機能は製品により固定のものとなっています。オンプレミスでの導入のケースでは、カスタマイズを加えることができるケースもありますが、範囲は限定的であり、かつ将来的な保守性の観点からはあまり推奨されません。
よって、自社業務と各ERP製品の適合性を確認の上、導入する製品を検討することが大切です。
2-2.提供方式
ERP製品の提供方法は、オンプレミス向けのパッケージや、IaaS等へのクラウド環境向け、SaaSといった種類が存在します。
オンプレミス・クラウドなどの提供方式の違いにより、導入の容易さやコスト体系、カスタマイズ性が異なるため、自社の特性に合わせた選択が必要となります。
2-3.コスト体系
オンプレミスで提供されるERP製品は、主に初期費用としてライセンス費用を支払うコスト形態となっています。場合により、保守費用という形で年度ごとにコストがかかるケースもありますが、システム構築費を含めた費用全体のほとんどは初期費用として発生します。
一方で、SaaS等のクラウドで提供されるERPは、月次での利用料払いとなる形式が多いです。この場合、ユーザ数やCPU・メモリ等のリソースの利用量などに応じて課金される契約となります。
2-4.使いやすさ
ERP製品は全社的に導入されるものであり、多くのユーザが高頻度で操作することになります。システムの使い勝手の良さはユーザの満足度に直結するものなので、ERP製品を選定する上での重要なポイントとなります。
使いやすさを確認する最も良い方法は、実際に製品を触ってみることです。可能であれば、デモの実施や試用などを行い、操作感を確認するとよいでしょう。
2-5.サポート体制
企業活動の中心に位置するERPシステムの停止は、企業の業務停止に直結してしまいます。ERPシステムを安定的に利用し続けるために、サポート体制が充実しているかは重要な要素となります。
さらにクラウド型のERP製品においては、システム障害時のサポート体制はもちろんのこと、可用性等のサービスのSLAを確認することも大切な観点です。
3.中堅企業向けの主要なERP製品
以下では、中堅企業向けの主要なERP製品について解説します。
SAP Business One
SAP Business Oneは、ERP業界で最大手のSAP社が提供する、中堅・中小規模企業向けのERP製品です。
全世界で多数の企業に導入されていることもあり、豊富な機能群で多くの企業の業務範囲をカバーすることができます。SAP Business Oneはオンプレミス向けの製品ですが、クラウド版のSAP Business One Cloudや、SAP社のインメモリDBである「SAP HANA」上で動作させるための「SAP Business One, version for SAP HANA」といった種類があり、様々な環境で動作させることができます。
Oracle NetSuite
Oracle NetSuiteは世界的な最大手IT企業であるOracle社が提供する、中小企業向けのERP製品です。SaaS型の製品であり、ERPだけではなくCRMやEC向けの機能も備えることが特徴です。
SAP同様に世界中の企業で採用されている製品であり、多数の導入事例があります。SaaS型ERPの特徴である、短期間での導入、安い初期費用というメリットがあり、特にスタートアップや小規模向けの企業におすすめしやすいERP製品です。
クラウドERP freee
クラウドERP freeeは、会計分野に強い企業であるfreee社が適用する中小企業向けのERP製品です。freee社は2012年設立の比較的新しい企業ではありますが、いち早くクラウド会計システム分野に参入し、現在では主に中小企業向け会計システムで大きなシェアを持っています。
他の統合型の製品とは異なり、会計や人事給与分野に特化した機能を持ちます。その分、他社製品より価格は低く抑えられています。製造・物流等のサプライチェーン管理が必要ないようなビジネス分野においては、特に有効な製品といえるでしょう。
Dynamics 365 Business Central
Dynamics 365 Business Centralは、Microsoft社が提供する中堅・中小企業向けのERP製品です。生産管理から販売までといった一連の機能に加え、CRM機能も備えるカバー範囲の広いサービスです。
本製品はオンプレミス版、SaaS版の両方で提供がされています。さらにデータのみをクラウド上に保管し、Power BI等のMicrosoft製品と連携できるハイブリット運用にも対応しています。
機能単位で料金が発生するコスト体系となっており、必要な機能を選択して利用できることもメリットです。SAPやOracleといったERPパッケージの最大手企業と比較するとコストは安めに抑えられており、十分に採用の選択肢となりうる製品といえるでしょう。
まとめ
この記事では、ERP製品の比較ポイントをまとめつつ、比較ポイントを踏まえ、主要な中堅企業向けのERP製品について紹介しました。
ERP製品は各社から多数リリースされているため、様々な観点から検討をしたうえで、製品を選ぶべきです。ERPの導入は全社的なプロジェクトとなり、影響範囲は大きいものです。さらに、一度導入したERPは簡単に別システムに移行することはできないため、ERP製品の選定は慎重に検討することをおすすめします。