業務改善とは?進め方や主な改善手法・フレームワークを解説

人手不足や働き方改革の推進を背景に、業務改善は企業の重要な取り組みとなっています。一方で、業務改善は難易度が高い取り組みでもあります。業務改善を成功させるためには、進め方や有用な業務改善手法を十分に理解したうえで取り組むことが大切です。
この記事では、業務改善を行う上で知っておくべき点について幅広く解説を行います。

業務改善とは

業務改善とは、業務内容やフローを見直し、改善することです。そもそも企業において業務を実施する目的は主に商品やサービスなどのアウトプットを作成することにありますが、業務改善によって現状よりも効率的にアウトプットを出せるようにすることが目標となります。

業務改善が必要な理由

それでは、なぜ業務改善が必要なのでしょうか。当然ながら、非効率な業務を放置していることで、最終的には商品やサービスの価格に反映されます。同業他社がより効率的に業務を進めている場合、非効率な業務を放置することは企業の競争力の低下に直結します。競争力を確保するためにも、業務改善は重要な取り組みとなります。
また、人手不足や働き方改革を背景に、限られたリソースで効率的に業務を実施することが求められている状況もあります。徐々に活用できる人的リソースが確保しにくくなっている現状があり、業務改善により業務を効率化していかなければなりません。

業務改善の効果

業務改善を行うことによる効果は以下の3点です。業務改善は、その実施内容によりいわゆるQCDを改善できる取り組みとなります。

  • コスト削減:業務改善により、同等のアウトプットであってもコストを下げられる可能性がある。
  • 生産性の向上:業務改善により、同等のリソースであってもアウトプットを増やせる可能性がある。
  • 品質の向上:業務改善により、アウトプットの品質を向上できる可能性がある。

 

業務改善の進め方・5つのステップ

以下では、業務改善の一般的な進め方について解説します。

対象業務の選定

まずは、業務改善の対象とする業務を選定します。自社業務を棚卸し、そのうち改善が必要と思われる業務をピックアップします。
業務改善を行いやすい業務としては、繰り返し行われるような定型業務が挙げられます。このような業務は改善を実施しやすいうえに、実施回数が多いため高い改善効果が期待できます。
対象業務の選定にあたっては、現場の意見も参考にするとよいでしょう。現場でも改善が必要だと感じている業務については、改善策の実効性や定着率が高まる傾向にあります。自社業務を棚卸するなかで、現場でも苦労している業務や非効率な部分を感じている業務をヒアリングすることをおすすめします。

業務の可視化

業務改善を行う前に、業務改善の対象とする業務を可視化します。可視化のためには、業務フローを作成することをおすすめします。既存業務のマニュアルなどを参考にして業務プロセスのフローを作成するとよいでしょう。場合により、業務担当者へのヒアリングを通して現状を把握することも有効です。
業務フローの作成と並行して、業務における課題の洗い出しも行います。課題の抽出には、主観的な意見と客観的な意見の両方からアプローチするとよいでしょう。業務を知らない人から業務フローを見ることで、明らかに無駄に思える作業が見つかるかもしれませんし、実際に作業を行っている人が普段感じていることからも課題を抽出できます。

業務分析と改善ポイントの検討

次に、業務分析を行い現行業務の改善ポイントを検討します。業務における課題や非効率ポイントを解消するために、どんな手法が有効かを分析します。業務改善に利用できる手法としては、後述するように業務の簡素化や削減、システム化やアウトソーシングといった手法が挙げられます。
ここでのポイントは、定量的に実施することです。現状の業務はどの程度の頻度でどの程度の時間がかかっており、今回検討する改善手法を用いれば、それがどの程度削減できるのかを、数字で示すことが大切です。
例えば、ある部署が月次で実施している集計処理に延べ100時間もかかっており、業務改善を検討しているとします。集計処理を削減するため、各部署で入力した内容を自動で集計できるツールを導入しようと考えましたが、その結果各部署での入力作業が増え、各部署での処理時間を合計したら150時間かかってしまう予想となりました。これでは、業務改善の効果はありません。改善策を実施する前に、必ず定量的にその効果を検証するべきです。

新業務マニュアル・フローの作成

業務の改善ポイントを明確にしたら、次に新しい業務の進め方として、業務改善後の業務マニュアルや業務フローを作成します。新業務フローを作成する際には、現行の業務フローをベースにしつつ、業務の変更ポイントをマークするなどしてどの部分を変更するのかが分かるようにするとよいでしょう。
新業務マニュアル・フローの作成に当たっては、実際に作業する業務の担当者から意見をもらいつつ、現実的な内容とすることが重要です。また、新たな業務の進め方を実施するために必要な機材や人的リソースなどについても同時に用意する必要があります。

実業務への適用と定着化

優れた業務マニュアルや業務フローを作成しても、現場に適用されなければ意味がありません。業務改善策を実業務へ適用し、定着化まで行って初めて業務改善は成功となります。
よくあるのが、業務改善を実施したのにもかかわらず、次第に過去の業務のやり方に戻っていくケースです。特に現場の納得感が得られていない場合に起こりがちな事例であり、このような事態を避けるためにも業務改善の押しつけは避けるべきといえるでしょう。
業務改善の効果が発揮できているかは、定期的にモニタリングして確認します。ここでも、定量的な評価がポイントとなります。業務にかかる時間やコスト、人的リソースなど、業務改善の効果を計る指標を設定したうえで、モニタリングにより効果を測定してくとよいでしょう。例えば、過去は100時間かかっていた業務が80時間に削減できていれば、業務改善は成功といえます。

主な業務改善手法の紹介

業務改善のために利用できる手段は多々あります。以下では、業務改善に活用できる主な6つの手法について解説します。

業務の簡素化

まず検討すべきは、業務の簡素化です。現行の業務フローの中で不要な作業や付加価値創出に役立っていない作業を見つけ出し、その部分を簡略化していきます。現状と同等のアウトプットを出しつつも、業務を簡素化して効率を上げることが業務の簡素化の目指すところとなります。
業務の簡素化は、業務改善を実施する際に最もイメージしやすい手法ではないでしょうか。業務においてアウトプットに影響しないような作業が発生している場合に有効な手法となります。

業務の削減

次に紹介するのが、業務の削減です。アウトプットに与える影響が少ない業務については、完全に削減することを検討します。業務の削減を適用できるケースは少ないものの、適用できれば業務の効率化に大きく寄与します。
業務の削減は、過去の習慣などで実施しているものの、現在ではあまり意味がなくなっている業務に対して有効な手法となります。また、業務を実施しているものの成果が上がっておらず、投入リソースに対してアウトプットが不十分であるような業務も、削減の対象となるでしょう。

業務のシステム化

特に高頻度・大量の作業を実施するケースなどでは、業務のシステム化が有効な業務改善手法となります。システム化により人からシステムに処理を移すことで、必要な人的リソースの削減が実現できます。また、処理を自動化することで手作業と比較してミスを減らす効果もあります。
システム開発にはコストがかかるため、コストメリットが生じる業務について有効な手法となります。一般的な業務内容であれば、パッケージシステムやクラウドサービスを利用することで、システム導入コストを削減できる可能性もあります。
近年では、RPAやノーコード型の内製化ツールなど、簡易的かつ低コストのシステム化手法も登場しているため、必要に応じて利用をおすすめします。

業務のアウトソーシング

業務をアウトソーシングして、自社→他社に処理を移すことも業務改善策の一つです。近年では、オフショアのように低コストでアウトソーシングを実施できる手段も選択肢となっており、検討対象の幅が広がっているといえるでしょう。
業務のアウトソーシングは、総務・事務・コールセンターなど、どの企業でも共通で発生するがノウハウが必要である業務に対して有効な手法となります。

業務の標準化

業務の標準化もまた、有効な業務改善手法の一つです。業務を標準化し、実施内容を統一することで、作業の効率と品質を向上させます。標準化のためには、詳細に作業手順をマニュアル化し、作業者へ実施方法の教育を行います。
業務の標準化は、現状で属人性が高くなっており、将来的にノウハウが失われるリスクがある業務に対して有効な手法となります。また、品質にばらつきが生じやすい業務にも有効な手法である。

業務の集約化

センター化などにより、複数の部署・拠点にまたがって実施されている業務を集約するのが業務の集約化です。一般的に同じ内容の業務であれば、一つの部署・拠点でまとめて実施するほうが効率的となります。
業務の集約化は複数の部署・拠点で実施されている共通業務に対して有効な手法であり、ノウハウや担当者を集約することで効率的に業務を行えるようになります。

業務改善の実施に役立つ4つのフレームワークとは

業務改善を実施する上では、一般的に知られているフレームワークを活用することも有効な手段となります。以下では、業務改善に役立つフレームワークを紹介します。

BPM・BPR

BPM(Business Process Management)とは、PDCAサイクルを回すことによって業務を継続的に改善していく手法のことです。
また、BPR(Business Process Reengineering)とは、抜本的に業務プロセスを改革することです。
どちらも、業務プロセスの改善に役立つフレームワークとして知られており、多数の利用実績があるものです。BPM・BPRの手順に沿うことで、ベストプラクティスを活用した業務改善の取り組みを実現できます。

バリューチェーン分析

バリューチェーンとは、価値の連鎖を意味する言葉です。例えば、製造業であれば「材料調達~製造~出荷~販売~アフターサービス」までの一連の流れがバリューチェーンとなります。バリューチェーンを分析することで、プロセスのうち価値を生むポイントを明らかにし、どのプロセスを重視すべきか、またコストをかけるべきかを検討することができます。
例えば、プロセスのうち価値を生み出さないポイントであれば、簡素化や削減を検討する余地があるといえます。

KPT

KPT(Keep Problem Try)とは、業務で実施したことを「継続(Keep)」と「問題(Problem)」に整理し、今後実施すべき「挑戦(Try)」をまとめる取り組みのことです。KPTは近年注目されているアジャイルの中でよく利用されるフレームワークとして知られています。定期的にKPTを整理することで、継続的に業務改善を行うことができるため、特に業務改善の定着化などのフェーズにおいて有効な手法といえるでしょう。

ロジックツリー

ロジックツリーとは、課題の解決策を分析するにあたって、要素を詳細化していく手法のことです。例えば、「作業品質が悪い」という課題は「工具の劣化」や「熟練工の退職」が原因であるといったように、詳細な要素として分解することができます。業務改善の中では、特に業務の課題分析に有効であり、ロジックツリーを作ることで課題の解決策を見出すことができる可能性があります。

業務改善を行う上での重要ポイント

以下では、業務改善を行う上で注意すべき3つのポイントについて解説します。

QCDを意識する

業務改善においては、QCD(品質・費用・時間)を改善できるように取り組むことが大切です。
例えば、業務改善により費用を削減できたとしても、それにより品質が悪くなり売上が落ちては意味がありません。QCDは一般的にトレードオフの関係にあり、例えば品質を上げようとすればその分時間や費用はかかります。これらの3つの観点のうち、ビジネス上で重視すべき点と妥協できる点について念頭に置いたうえで業務改善を進めると効果的といえます。

現場と協調して進める

いくら優れた業務改善策を考えたとしても、業務を実際に行うのはその業務の担当者ですから、担当者の意向を無視した業務改善は失敗する可能性が高いといえます。
これまで解説してきた通り、担当者へのヒアリングを通じて、現場の意思を確認しつつ、業務改善策を検討することが大切です。現場との良好な関係性を維持することは、業務改善を進める上での最重要ポイントといってもよいでしょう。

実績を正確に把握する

業務改善の第一歩は、正確な実績の把握にあります。実績が把握できなければ、改善すべき点の検討や改善による効果予測も行うことができません。
そもそも、それぞれの業務にどの程度の工数が発生しているのかを把握できなければ、業務改善の対象とすべき業務の洗い出しも困難です。また、業務改善の効果を測定する際にも、改善前・改善後でどの程度変化があったかを計測しなければなりません。
業務改善のための第一歩として、業務に費やしている工数などの実績を把握できる環境を整えることが必要です。

実績把握の実効性向上のポイント

業務改善の第一歩として工数の実績把握は重要です。工数の把握のためには、各担当者に日々工数の入力をお願いする必要がありますが、一方で日々の工数入力作業は手間となり、避けられがちでもあります。
そこで検討したいのが、工数入力の手間を削減してくれるツールの活用です。当社の工数管理ツール「クラウドログ」では、ドラッグアンドドロップを中心とした直感的でグラフィカルな工数入力が可能です。忙しい業務の中でも、短い時間で工数の登録が可能となり、各業務に費やしている工数把握の実効性を高めることができます。

まとめ

この記事では、業務改善の手順や有効な手法、注意すべきポイントなど、業務改善のために知っておくべき知識について解説を行いました。業務改善は難しい取り組みではありますが、うまく実現できた場合には高い効果を発揮する取り組みでもあります。
業務改善のファーストステップは実績の把握にあります。現時点で業務にかけている時間や工数が把握できていない場合は、まず実績の計測から始めてみることをおすすめします。

 

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