プロジェクトの計画時や、プロジェクトを推進する際にマイルストーンの設定は欠かせないものですが、マイルストーンの意味を正しく理解し、適切なタイミングに設定できているでしょうか。また、設定しただけで終わっていないでしょうか?ここでは、マイルストーンの意味や設定したときに得られるメリット、マイルストーン設定のポイントや設定後にすべきことについて解説していきます。マイルストーンを適切に設定し、プロジェクトを成功に導くツールとして身につけましょう。
目次
マイルストーンとは?
マイルストーンとは、プロジェクトの中間目標を意味します。チェックポイントと捉えて良いでしょう。マイルストーンは1つ設定するだけではなく、通常は複数設定します。
マイルストーンの語源は英語で、元々の意味は道路の1マイルおきに標石が設置されていたことから、ビジネスでも中間目標や中間地点と言う意味で使用されるようになりました。今ではビジネスで一般的に使われるため英語圏に限らず通じるビジネス用語です。
開発フェーズの中間目標に限らず、客先へのレビューやサーバを稼働するなどのイベントもマイルストーンとして扱います。
タスクとの違い
マイルストーンとタスクは混同されがちですが、役割が異なります。
タスクは、プロジェクトを達成するために必要な要素を、作業単位で細分化したものです。一般的には、作業内容一つひとつに対して、期限や担当者が設定されます。
一方でマイルストーンは、プロジェクトの重要な節目に設定される指標です。タスクがプロジェクトの進行に必要となる詳細な作業であるのに対し、マイルストーンは進捗の確認ポイントとして設定されます。
タスク管理のみでは、プロジェクト全体の進捗状況が見えづらく、正確なプロジェクト管理を行えません。設定されたマイルストーンは、プロジェクトの全体像を把握するうえで重要な役割を果たします。
※関連記事:プロジェクト成功の要であるタスク管理とは?
マイルストーンを設定することで得られる5つのメリット
プロジェクトを安全に進めるために欠かせないマイルストーンですが、設定することで一般的には下記のようなメリットがあるとされます。
- 進捗が把握しやすく報告もしやすい
- モチベーションを維持しやすい
- タスクの抜け漏れを防止できる
- 軌道修正、リカバリの機会になる
- スケジュール遅延のリスクを減らすことができる
詳しく解説していきます。
メリット1.進捗が把握しやすく報告もしやすい
プロジェクトを進める際、WBSやIssueなど開発者のタスクレベルに作業を分割し、スケジューリングを行っている事が殆どでしょう。全体のスケジュールに対し進捗状況を確認する場合、開発者レベルのものでは細かすぎて進捗がわかりにくくなることがあります。
例えば「機能A、B、C」が完了するところまでがマイルストーン1、「機能D、E、F」の完了がマイルストーン2、というようにしておくことで完了・未完了の判断がしやすく、進捗も把握しやすくなります。また、上司や顧客へ報告する際も同様の効果があります。
メリット2.モチベーションを維持しやすい
長いプロジェクトになる程ゴールまでが遠くなるため先が見えにくく、場合によってはチームが中だるみのような状態になることがあります。
マイルストーンを設定していると向かうべき目標が近くにあるためモチベーションを保ちやすく、マイルストーンという期日に対する意識も持てるため作業遅延を防ぐ効果もあります。
メリット3.タスクの抜け漏れを防止できる
マイルストーンを設定する時や、プロジェクト中にマイルストーンに向けての準備をする中で、タスクの前後関係や必要な作業、タスクの確認や検討が必要になるため、その段階で抜け漏れを発見できることが多くあります。
メリット4.軌道修正、リカバリの機会になる
マイルストーンは作業が順調に進行しているのか、仕様通りに開発できているのかというチェックポイントとしても働きます。
マイルストーンごとに成果物の状態を確認することで、仕様の誤認識や抜け漏れなどの問題を発見できるなど、軌道修正やリカバリのアクションを行う機会になります。開発工程の終盤やテスト工程になって問題が発覚するというような最悪の事態が発生するリスクを減らすことができます。
メリット5.スケジュール遅延のリスクを減らすことができる
マイルストーンを設定することでメリット1〜4に挙げた効果を得る結果、スケジュール遅延のリスクを減らすことができるという大きなメリットがあります。
マイルストーン設定の流れ、方法
マイルストーンを設定する際は、タスクの洗い出しや納期の設定などの事前準備に加え、ステークホルダーとの調整が大切です。
また一般的には、実施すべきタスクを整理し、ガントチャートを作成してマイルストーンを設定しますが、開発の大枠スケジュールとリリーススケジュールは既に決定されていて、スケジュールありきの状態からプロジェクトがスタートすることもあります。
ここでは、マイルストーン設定の流れと方法について説明します。
1.事前準備
事前に必要な情報を洗い出すことで、効果的なマイルストーンの設定が可能となります。具体的には以下の情報を洗い出します。
納期・期限
プロジェクト全体のスケジュールを確認し、重要なチェックポイントにマイルストーンの期限を設定します。現実的で、達成可能な期限を設定しましょう。
ステークホルダー
プロジェクトに関与する全てのステークホルダーを特定し、それぞれの役割と責任を明確にします。
タスク
プロジェクトを完了するために必要な作業・タスクをリストアップします。また、各タスクの依存関係を明確にしておくことも重要です。WBSを用いたガントチャートを作成すると、依存関係を把握しやすくなります。
WBSの詳細については、以下の記事をご確認ください。
※関連記事:WBSの基礎知識と作り方を徹底解説!無料Excelテンプレート付き!
2.ステークホルダーとの調整
マイルストーンを設定する際は、ステークホルダーとスケジュールを調整し、設定する必要があります。
マイルストーンの設定に関して、全てのステークホルダーから合意を得ることが重要です。これにより、プロジェクトの方向性や優先事項に対する理解を得られるでしょう。
また、定期的にステークホルダーとコミュニケーションを取り、プロジェクトの進捗状況や課題を共有することも大切です。ステークホルダーからのフィードバックを受け入れ、必要に応じてマイルストーンを調整します。
3.ガントチャートの作成
プロジェクトの作業計画をガントチャートにすることでマイルストーンを設定すべき箇所が視覚的に捉えやすくなります。ガントチャートはエクセルなどのスプレッドシートでも作成できますが、プロジェクト管理ツールや工程管理ツールの機能として提供されているものも多くあります。
ガントチャートの書き方や無料のテンプレートについては検索すると多くの情報が得られるでしょう。下記では詳しいガントチャートの解説や書き方、テンプレートとして利用できるサンプルも掲載していますので是非ご利用ください。
エクセルでガントチャートのつくり方!無料エクセルサンプル付き
Excelガントチャートサンプル
また、ガントチャートの作り方のコツについては以下の記事で紹介していますので、あわせて参考にしてください。
ガントチャートの作り方のコツとは?メリットや注意点も解説!エクセルテンプレート付き
4.マイルストーンの設定
スケジュールから逆算する場合、このタイミングまでに機能A・B・Cが終了していなければならないという観点でマイルストーンを設定していきます。一般的にスケジュールから逆算するというこの方法は、トップダウンのプロジェクトでスケジュールが厳しいものであるというケースが多く、好ましいものではありません。
そのため、マイルストーンまでのタスクのボリュームが多すぎる場合は、人員の増加やシステム、ツールの導入などでリスク回避を行うというアクションが必要になるでしょう。
マイルストーンを設定するタイミング
マイルストーンを設定すべき適切な時期とはどのようなタイミングでしょうか。マイルストーンとは中間目標で、チェックポイントであるため、この時期にはこれが終わってなければいけない、これを確認したいというタイミングに設定することがひとつのポイントです。
マイルストーンを設定するタイミング
マイルストーンを設定するタイミングとしては以下のようなものが挙げられます。
・フェーズごとに設定
要件定義、設計、開発、テストなど、各フェーズが終わるタイミングにマイルストーンを設定します。しかし、これだけでは問題発生に対するリカバリが遅れてしまうため、マイルストーンがフェーズごとだけにならないようにした方が良いでしょう。
・フェーズを更に分解して設定
フェーズを更に分解し、機能単位や区切りの良いタイミングにマイルストーンを設定します。
機能A・B・Cのように機能単位で区切ったり、例えば、アジャイル開発ではイテレーションという一定の期間を設け、2週間〜1ヶ月などの単位でマイルストーンを設定して開発を進めたりなど、チームの開発スタイルに合う方法で設定します。
・イベントに設定
顧客との打合せやデモを実施するタイミング、仕様FIX、ドキュメントの提示やサービスの環境構築、レビューなど、区切りとなるイベントにもマイルストーンを設定します。イベント的な要素に対するマイルストーンを設定することでチームメンバーは更にスケジュールを意識することができ目標に向かいやすくなります。
マイルストーンを設定する際のポイント
マイルストーンを設定する際に押さえておきたい、4つのポイントを解説します。
- マイルストーンとタスクを分けて管理する
- 達成可能な目標を明確に設定する
- 定期的に進捗確認を実施する
- 必要に応じてマイルストーンを変更する
マイルストーンとタスクを分けて管理する
前述のとおり、マイルストーンとタスクは、プロジェクト管理において異なる役割を果たします。マイルストーンはプロジェクトの重要な節目を示し、進捗率を判断するための材料となります。
タスクとマイルストーンを明確に区別して管理することで、プロジェクトの全体像を把握しやすくなり、効率的な進捗管理が可能となります。
ガントチャート上にマイルストーンとタスクの両方を記載する場合、マイルストーンは視覚的に目立つように設定し、タスクとは異なる形式で表示すると、違いを認識できるでしょう。プロジェクト管理ツールや工数管理ツールなどを使用すれば、タスクとマイルストーンを別々に管理しやすくなります。
また、定期的に進捗報告を行う際に、マイルストーンとタスクの状況を分けて報告することで、関係者全員がプロジェクトの進捗を理解できます。
達成可能な目標を明確に設定する
マイルストーンは、現実的かつ達成可能な目標を設定する必要があります。無理な目標設定は、プロジェクトチーム全体のモチベーション低下につながりかねません。
SMART原則(Specific、 Measurable、 Achievable、 Relevant、 Time-bound)に基づいて、目標を設定しましょう。
各要素の詳細は以下のとおりです。
要素 | 概要 |
具体性(Specific) | 「プロジェクト計画の完成」や「第一段階のフェーズ完了」など、具体的な成果を設定する。 |
測定可能性(Measurable) | 完成度やテストのパス率など、進捗を具体的な数値で測定できる基準を設定する。 |
達成可能性(Achievable) | リソースとプロジェクト期間を考慮し、現実的に達成可能な目標を設定する。 |
関連性(Relevant) | 設定したマイルストーンが、プロジェクトの達成にどのように寄与するかを示す。 |
明確な期限(Time-bound) | 明確な期限を設定し、その期限内に達成できるように計画する。 |
上記の要素を意識し、明確な目標設定を行うことが大切です。
定期的に進捗確認を実施する
マイルストーンの進捗確認を行うことで、プロジェクト全体の進捗状況を把握できます。また、問題が発生した際にも迅速に対処でき、スケジュール遅延やリスクを最小限に抑えることが可能です。
具体的には、週次や月次の定期ミーティングを設け、タスクとマイルストーンの進捗状況を確認します。進捗確認の際に得られた意見やフィードバックをプロジェクト計画に反映し、必要に応じてマイルストーンを調整することも重要です。
プロジェクトの遅延リスクが発覚した際は、早期に対応策を講じることで軌道修正が可能です。
マイルストーンの進捗確認を行うことで、プロジェクト全体の進捗状況を把握できます。また、問題が発生した際にも迅速に対処でき、スケジュール遅延やリスクを最小限に抑えることが可能です。
具体的には、週次や月次の定期ミーティングを設け、タスクとマイルストーンの進捗状況を確認します。進捗確認の際に得られた意見やフィードバックをプロジェクト計画に反映し、必要に応じてマイルストーンを調整することも重要です。
プロジェクトの遅延リスクが発覚した際は、早期に対応策を講じることで軌道修正が可能です。
必要に応じてマイルストーンを変更する
プロジェクトは常に変化するため、状況に応じてマイルストーンを見直すことが重要です。
問題が発生しても、随時マイルストーンを調整すれば、プロジェクトの目的や目標に最適なアプローチを維持できます。マイルストーンの変更を容易にするためにも、プロジェクト計画には柔軟性や適切なバッファを持たせることが大切です。
また、マイルストーンを変更する際には、全てのステークホルダーからの合意を得なければなりません。関係者全員が理解できるように、なぜマイルストーンを変更するのかの理由を明確に説明しましょう。
そのうえで、マイルストーンの変更がプロジェクト全体に与える影響を確認し、適切に調整してください。
設定したマイルストーンを迎えた時にすべきこととは
マイルストーンは、設定しただけでは期待する効果を得ることは難しく、リスク回避としても有効に機能しないでしょう。マイルストーンを設定するメリットを享受するには、マイルストーンに向けて行う作業やマイルストーンを迎えた時に取るアクションが重要です。
マイルストーンを迎えた時にすべきこととしては以下のようなものがあります。
マイルストーンが達成できたのか判断、共有
チーム内で達成状況を判断し、共有しましょう。目標であるマイルストーンを達成できた場合は達成感が得られ、次のマイルストーンに向けてまた頑張ろうという士気を高めることができます。
クリアできていない場合、原因の究明、リカバリプランを立てる
スケジュールが遅延や成果に不足があるなど、マイルストーンをクリアできなかった場合、原因の究明と対策、取りこぼしたタスクをいつまでにどうやって達成するのかというリカバリプランを策定し、新たにマイルストーンを設定します。
クリアできている場合、うまくいった理由を共有し今後に活かす
プロジェクトではスケジュールの推進が重要になるため、ネガティブな事象に目が行きがちですが、ポジティブな事象にも目を向けることでチームのスキルやスケジュールなど様々な面でプラスに働きます。
以降のマイルストーンで必要なこと、不足しているものがないか確認
プロジェクトを進める中で仕様が変わったり、当初想定していたものと違う技術を採用したり、◯◯があればより効率的になるなど状況は変わっていくものです。この先のマイルストーンでリスクとなるもの、必要なことや不足しているものがないかを改めて確認し、必要な場合は新たなマイルストーンを目標として設定します。
【無料資料】プロジェクト生産性を高めて利益を最大化するには?
クラウドログを利用したマイルストーンの設定
クラウドログは、工数入力・管理・分析機能やガントチャートなど、さまざまな機能を用いてプロジェクト管理の円滑化を実現できる工数管理ツールです。
ガントチャートにはマイルストーンの設定はもちろん、タスク同士の依存関係やグループの見える化、複数プロジェクトの同時表示など、プロジェクト管理者にとって便利な機能が豊富に備わっています。
工数ベースでの正確な管理ができるため、プロジェクトの遅延リスクを限りなく低減できます。
※参考:株式会社クラウドワークス「クラウドログ」
まとめ
プロジェクトの推進にマイルストーンの設定は必ず行うべきものです。
マイルストーンを設定する際は、タスクと区別して管理するほか、SMARTの原則に基づき達成可能な目標を明確に設定する必要があります。また、定期的に進捗を確認し、プロジェクトの状況や必要に応じてマイルストーンを変更することも大切です。
マイルストーン設定のメリットを理解し適切に設定・運用することでプロジェクトの成功率を高める一助にしていきましょう。
クラウドログではスケジュールの作成や工数管理に加え、マイルストーン設定の際役に立つガントチャートも見やすく表示することができます。無料の試用期間もあるため是非お試しいただき導入をご検討ください。