企業が顧客に寄り添ったサービスの提供を実現するために業務フローは複雑化してきましたが、ビジネスに求められるスピード感は増す一方です。さらに、ニーズの多様化やDXの推進など、環境の変化にスピーディーに対応するために、業務プロセスの改善に対する重要度が高まっています。業務プロセスの改善を行うためには、現状のプロセスを正確に捉える必要があり、BPMNは最適な手法だと言えます。ここでは、BPMNとは何か、モデル図を書くメリットを解説し、どのように業務改善に役立てていくのかを紹介していきます。
BPMNとは
ここでは、BPMNとは何か、関連するBPM(ビジネスプロセスモデリング)とBPMSも合わせて解説します。
BPMNとは
BPMNとは、Business Process Model and Notationの略で「ビジネスプロセス・モデルと表記法」のことを言います。1989年に発足したコンピューターアプリケーションのアーキテクチャーテクノロジーに関する標準を推進する世界的な非営利団体であるOMG(Object Management group)によって管理されている国際標準の手法です。現在のバージョンは2.0です。
丸や四角など、フローチャートのような記号を用い、図にすることで業務フローを見える化します。
BPMNの書き方や業務改革・改善についての有効性を体系的に学ぶには、本を一通り読むことをおすすめします。
書籍:業務改革、見える化のための業務フローの描き方
BPM(ビジネスプロセスモデリング)とは
BPMとは、Business Process Managementの略で、業務プロセスの見える化し改善のPDCAサイクルを回すことで組織力を強化する管理手法で、BPMを推進するうえで強力なツールとなるのがBPMNです。
BPMSとは
BPMSとは、Business Process Management Systemの略で、BPMNで記述した業務プロセスを元にBPMを推進し、BPMを実現するための情報システムをBPMSと言います。
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BPMNの特徴
ここでは、BPMNの特徴である業務フローの表し方や、モデル図を作成する対象業務(機能)について解説します。
特徴1.業務フローを3種類の線種で書き分ける
下記の線種で業務フローを正確に表します。
- 実線:作業の流れを表す
- 破線:外部との連携を表す
- 点線:書類やデータの流れを表す
特徴2.階層で捉える
業務プロセスの見える化し、改善のPDCAサイクルを回すことで組織力を強化するBPM(ビジネスプロセスマネジメント)では、見える化する対象の業務プロセスを階層に分けています。BPMNでは下記のうちFL3〜6までを対象にします。
機能階層 | 機能階層名称 | 具体的目安 |
FL0 | 事業単位 | 事業単位または全社管理 |
FL1 | 事業機能 | 商品開発や営業など事業の基本機能。バリューチェーン機能区分が粒度の目安 |
FL2 | 詳細事業機能 | 事業機能の構成要素。商品やサービスの開発区分、チャネル区分、営業方式、サービス メニューなどが粒度の目安となる。組織ミッション的表現となる |
FL3 | 業務機能 | 詳細事業機能の実行単位として、カウンタブルな(数えられる)仕事の粒度。 具体的にはオーダーサイクル(受付、計画、実行、報告)、管理、企画の区分を粒度の 目安とする |
FL4 | 詳細業務機能 | 業務機能のマイルストーン、中間成果物確定単位、組織間のハンドオフを粒度の目安と する |
FL5 | 単位作業 | 担当レベルの役割単位でのハンドオフを粒度の目安とする。タスクリストに表示される 一件となる |
FL6 | 要素作業 | 単位作業の作業ステップに相当する。「何を使って何をする」をツール・メディアに着 目して区分する。連続する操作・動作の固まりとなり、作業分析の時間計測単位になる |
FL7 | 単位操作 | ファイルを開く、選ぶ、コピペするなど要素作業を分解した機能の区分。単位操作が RPAの適用単位となる |
FL8 | 要素操作 | クリックする、マウスをドラッグする、○秒待つ、など単位操作を行う人やRPAの動き を特定するための最も詳細な操作・動作 |
※出典:公益社団法人 企業情報化協会 「ビジネスプロセス・モデルの 階層(レイヤー)とステップ」P4
BPMNとUMLとの違い、BPMNでモデリングすべき理由
一般的なモデリング手法としてUMLがありますが、BPMNと何が違うのか、なぜBPMNを使うべきなのかを理解しておきましょう。
BPMNとUMLとの違い
BPMNは一見UMLと似ているように見えますが、BPMNとUMLは異なります。
UMLはシステム開発用のモデリング手法であり、業務プロセスをモデリングするには要素や記述法が不足しています。UMLでも業務プロセスを書くことはできますが、正確に表現したい場合はBPMNを採用するべきでしょう。
BPMNでモデリングすべき理由、メリット
BPMNやUMLを用いずに業務プロセスを整理することもできますが、各部署の人がアウトプットするものを統一的なフォーマットにすることや、統一的な理解を得ることは困難なため、世界標準で共通言語としてコミュニケーションができるBPMNを使う方が安全で効率的です。
また、先に紹介したBPM、BPMSとの繋がりと業務プロセスの改善という視点で考えると、BPMNで整理する方が体系的なモデルに従い進めることができます。
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BPMNの書き方|8つのポイント
わかりやすく正しいBPMNを書くことで、課題の発見やプロセス改善すべきポイントも発見しやすくなります。では、どうすれば正しくわかりやすいBPMNになるのか、書き方のポイントを解説します。
ポイント1.対象プロセスの範囲を明確にする
視点と終点を明確にし、対象プロセスの範囲を明確にしておきます。曖昧にしていると正しい理解ができない場合があります。
ポイント2.1ページに収めるようにする
複数ページにまたがると理解がしにくくなるため1ページに収めます。
ポイント3.プロセスの流れを統一する
業務フローは水平に記述し、部署をまたいだり関連したりするデータのフローは垂直に記述します。
シーケンスフローを水平に、関連とデータフローを垂直にレイアウトします。
ポイント4.文字を上手く使う
要素のラベルに文字を上手に記載することで、BPMNのルールを知らなくても文字を追うことである程度流れを理解することができます。
ポイント5.矢印の使い方に気をつける
配置の問題で矢印が複雑に交差していると、理解のさまたげになるため、矢印の重なりも考慮した配置を心がけます。
ポイント6.いろいろな記号を使いすぎない
利用する記号は少ないほど理解がしやすくなります。業務の規模や内容によりますが、なるべく少ない種類に留めることで見やすいBPMNになります。
ポイント7.時系列を意識する
時系列を意識した適切な記号を配置します。時系列が実際の業務と合っていないフロー図は業務理解がしづらくなるため、図形記号は必ず正しい時系列で配置します。
ポイント8.条件分岐の分岐先を明確にする
よく発生するケースに、条件分岐の一方の分岐先が明確になっていないことがあります。曖昧にしていた所が実は重要だったということもあるため、分岐した先のプロセスを明確にしておくことがポイントです。
BPMNの正しい書き方を習得したい場合は資格取得を検討してみても良いでしょう。
参考:資格 BPMN 2.0 認定資格試験 OCEB
まとめ
ここで紹介した書籍の中で、業務改革・改善とは”「売上を向上すること」「品質を向上すること」「顧客満足度を向上させること」「業務を効率的円滑に行うこと」”としています。クラウドログは工数管理ツールですが、売上・品質・顧客満足度の向上、業務を効率的円滑に行うこと、この全てに貢献できるツールです。無料期間などを有効に活用いただき、是非一度実際にお試しください。