デジタル化が進む中、企業には多くのデータが蓄積され続けています。多種多様なデータ形式や各所に散在しているデータの活用に頭を悩ませている方も多いのではないでしょうか。最近では、ノーコードで簡単に様々なデータの抽出や統制、配信を行えるシステムも増えているため、以前よりデータマネジメントがしやすい環境になってきています。ここではデータの利活用を行うにあたり、データマネジメントを進める際に重要となるDMBOKの概要をわかりやすく解説します。
DMBOKとは
DMBOKとは「Data Management Body of Knowledge」の略で、日本語での読み方は「ディンボック」とされています。
DMBOKはデータマネジメントに関する知識体系をまとめたもので、多くのデータ専門家によって組織された国際的な団体であるDAMA「Data Management Association International」により策定され、2022年4月現在、第二版が出版されています。DMBOKのデータマネジメントとは何なのか、次項で解説していきます。
日経BP:データマネジメント知識体系ガイド 第二版
データマネジメントとは
データマネジメントとは、データを管理することですが、ただデータを管理するだけではありません。
JDMC 一般社団法人日本データマネジメント・コンソーシアムでは、データマネジメントを下記のように定義しています。
データマネジメントとは、ビジネスの成長と成果のために「データをビジネスに活かすことができる状態を継続的に維持、さらに進化させていくための組織的な営み」によりデータを利活用すること
このように、データマネジメントは、ビジネスの効率化や成長させるためのデータ設計、蓄積、運用、データ品質の維持・向上などを視野に入れ、管理、実行を行うことを言い、広い視点でデータの管理を行うことで、ビジネスを成長させるためにどのようなデータが必要なのかを検討、推進します。
データマネジメントには、DAMAが認定している国際資格があります。
CDMP(Certified Data Management Professionals)
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データマネジメントはなぜ必要なのか?7つのメリット
日々蓄積されるデータを保管しているだけの場合、そこから何かが生まれることはありませんが、データマネジメントを行うことで下記のようなメリットを得ることができます。
メリット1.データの信頼性、セキュリティ向上
データマネジメントが正しく行われると、アクセス権限や履歴の管理も行われるようになるため、データの信頼性やセキュリティが向上します。また、ツールを利用することでデータ整形の人為ミスが減るなど、データ品質も向上します。
メリット2.属人化の防止
業務を進める上で発生しやすいことのひとつに、データをそれぞれで抱え込むという状況があります。データマネジメントでは適切な場所にデータを集約、保存し、情報を更新していくため、属人化を排除する効果もあります。
メリット3.ニーズへの素早い対応が可能になる
データマネジメントを進めるにあたっては、散在しているデータをBIツールなどで集約、分析、再整形するなどを行います。そのため、ニーズに応じたデータの操作を迅速に行うことができます。
メリット4.生産性の向上
データの見える化、属人化の排除、データの鮮度維持などのデータマネジメントを行うことで、必要なデータを探し回る必要がなくなります。また、メリット3のようなBIツールの利用により、欲しいデータがすぐ取得・生成できるなど大幅な生産性の向上が期待できます。
メリット5.データ利活用の土台ができる
データマネジメントを行う際には、目的を明確にしたうえでデータの集約などを進めます。第一の目的に対する利活用はもちろん、それらを進めるなかで様々な利活用方法が出てくるでしょう。このように、データマネジメントに着手することで利活用の土台ができていきます。
メリット6.経営戦略や課題を導くことができる
データを集約し、適宜必要なデータを取り出し、分析することで、根拠のあるデータを基に経営判断や経営戦略の材料にしたり、課題を発見したりすることができます。データを根拠にアクションを取った場合、その結果もデータとして比較できるため、論理的な客観性のある成果として捉えやすいというメリットもあります。
メリット7.データガバナンスを図ることができる
ガバナンスとは「統治、管理、支配」を示す言葉ですが、データマネジメントを行うことは、データを集約し、管理、再形成するなど、この「統治、管理、支配」が実行されることになり、データマネジメントを行うことは、データガバナンスを図れていると言ってよいでしょう。
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データマネジメントを進める際に重要となるDMBOK、11の知識体系
データマネジメントを進めるには、DMBOKのフレームワークに則って進めることが重要です。まずは11の知識体系の概要を知り、どのような概念で何をするのか、全体のイメージを掴むと良いでしょう。
データアーキテクチャ
企業のデータニーズを明らかにし、ニーズに合わせ、マスターとなる青写真を設計します。戦略的なデータ要件を定義、投資を行い、データ資産を維持します。
データストレージとオペレーション
データの運用にかかる保守の面やコスト、速度などを考慮しながらシステムを導入したりチューニングをしたりするなどで、データの価値を最大化するためのサポートを行います。
データ統合と相互運用性
ニーズに応じた時間とフォーマットでデータを提供することを考慮し、さらに、サポートや保守も視野に入れデータの全体最適と個別最適のバランスを取りながら、ELT(抽出、変換、取込み)のプロセスによってデータを統合します。
データモデリングとデザイン
データの流れや構造を図式化するなど、目に見える形にすることで全体像を把握できるようにします。これをひな形とし、あるべき構造に変更したり、分析を行ったりします。
参照データとマスターデータ
データの管理方法を定義します。マスターデータと参照データをシステム間で一貫した取り扱いがされるよう、継続的に保守します。
ドキュメントとコンテンツ管理
データベースに保存されていない非構造のメディア、データを適切に管理し、利用できるように計画、統制を行います。例えば、法律や規制に準拠するためのドキュメントなどが該当し、これらのドキュメントについても高品質であることが望ましいとされます。
データセキュリテイ
データのセキュリティを管理します。データの中で機密性の高いデータを分類し、セキュリティポリシーを策定します。適切なアクセス権限の付与や認証を行い、データのセキュリティを確保します。
データ品質
企業内で利用するデータの適正を測定、評価、改善します。品質管理技術(※)を用い、データの品質を保証するための計画や実行、統制を行います。
※参考:データ品質管理ガイドブック
データウェアハウジングとビジネスインテリジェンス
ビジネスインテリジェンスとは、企業のデータを利活用し、経営の意思決定に役立てることをいい、そのためのデータをどのように管理するのか、ハウジング、すなわち物理的な観点でAWSやGCPなどを用いるなどの検討を行います。
メタデータ
データの正確性や一意性、一貫性などを備えた高品質で統合されたデータにアクセス可能にするための計画や実行、運用、統制するための活動を言います。
高品質なデータとは、上記に加えてニーズに合うデータを整備できていることも含まれます。
データガバナンス
データ資産を管理するにあたって意思決定の権限を明らかにし、それによりデータマネジメントの計画、実行、運用を監督します。
まとめ
ここまで、DMBOKの概要を解説してきました。デジタル化が進み、企業内に蓄積されるデータの活用がしやすい環境になってきています。戦略的なビジネス立案や課題発見、生産性の向上に至るまで、様々なメリットがあります。これを機会に一度、自社のデータの利活用を検討してみては如何でしょうか。