システム開発においてソースコードのバージョン管理は欠かせないものです。DevOpsの浸透もあり、ソースコードだけではなくデータベースのスキーマや、インフラ構築のスクリプトなど様々なファイルがバージョン管理の対象になっています。
バージョン管理のメリットは大きく、システム開発部門に留まらず企業全体での利用にも大きなメリットがあります。ここでは、バージョン管理とは何か、メリットに加え、開発部門以外で利用する意義や代表的なシステムを紹介します。
目次
バージョン管理システムとは
パージョン管理システムとは、ファイルの編集履歴を管理するシステムのことです。編集履歴や、日時、編集者、編集内容、コメントなどを管理することができます。
バージョン管理方式
バージョン管理の管理方式には二種類あります。
集中管理方式
集中管理方式は、管理対象のファイルをサーバーで一元管理する方式です。サーバーとクライアントが繋がっていることが前提のため、オフラインではサーバーのリポジトリにあるファイルの更新などが行なえません。cvsやsvnがこの方式にあたります。
分散管理方式
分散管理方式は、サーバーで管理しているファイルをクライアントそれぞれがコピーして作業を行う方式を言います。クライアントはローカルにコピーを持っているため、オフラインでも更新作業などを行うことが可能です。GitやMercurialなどがこの方式にあたります。
【無料資料】工数管理を軸にした生産性向上・業務改善の5つのステップ
バージョン管理システムを利用する5つのメリット
バージョン管理システムを利用することでどのようなメリットがあるのでしょうか。ここでは主なメリットを解説します。
メリット1:全ての変更履歴を残せる
バージョン管理を使用していない場合、過去の変更を全て確認することは困難です。全ての変更履歴があるということは企業の情報資産管理としても有益だと言えます。
メリット2:ファイルの5W1Hが明確になる
バージョン管理を行うと、ファイルの5W1Hを明確に残すことができます。
- いつ(When) :更新日時
- どこで(Where) :更新対象のファイル
- 誰が(Who) :更新者
- 何を(What) :何を更新したのか
- なぜ(Why) :なぜ更新したのか
- どのように(How) :どのように更新したのか
これらが明確になることは、下記のような利点があります。
- 複数人が修正し運用するようなファイルの場合、履歴で周知できる
- 担当者が変わっても過去の履歴を見て経緯などが理解できる
- なぜ修正したのか備忘録になる
メリット3:古いファイルを誤って利用することを回避できる
バージョン管理を行っていない場合、同じようなファイルが並ぶことが往々にしてあるのではないでしょうか。このような管理をしている場合、最新が不明確で、古いファイルを利用してしまうことがあります。
バージョン管理では最新のファイルが明確になり、また管理対象のフォルダも綺麗に整理されるため、誤って利用するようなミスなどを回避できます。
メリット4:いつでも古いバージョンに戻せる
全ての変更履歴が残せるため、過去の状態へも容易に戻すことができます。変更履歴を見てどの時点のものに戻せば良いのかもわかりやすく、システムによってはエクセルやワードなどのファイルでも差分が確認できるため間違えにくいでしょう。
メリット5:同じファイルを複数人で編集し、マージできる
複数人でファイルの編集作業を行う場合、通常は各人が順に編集作業を行う必要があります。バージョン管理システムを利用する場合は各々で同時に編集を行ったあとシステム側でマージを行うことができるため効率的に作業を進めることができます。
バージョン管理を開発部門以外でも使う
様々な部門でバージョン管理を行えば、企業全体で前項のメリットが得られ、業務効率化による生産性の向上が期待できると言えます。
ここでは、開発部門以外で導入を進めるにあたり理解しておくべき点を解説します。
【無料資料】プロジェクト生産性を高めて利益を最大化するには?
なぜバージョン管理が生産性の向上に寄与するのか
バージョン管理を行うことは生産性向上に寄与すると考えられますが、その背景のひとつとして下記のような点があります。
書類の検索に使う時間は週平均4.5時間
米国IDCの2005年の調査によるとIT従事者が情報検索に費やす時間は一人当たり週に9.5時間、年間約144時間という結果が出ています。
また、同様に2012年の調査では1,200人のIT従事者とITプロフェッショナルを対象とした世界規模の調査結果では、平均4.5時間を書類の検索に費やしています。
バージョン管理を行うことでファイルを見つけやすく、全文検索などもしやすくなるため利便性の向上や生産性の向上が期待できます。
全社的にバージョン管理を行うことで得られること
従来通りのドキュメント管理では、同じようなファイルが存在するなどノイズが多くファイルの5W1Hが不明確で非効率です。
適切にバージョン管理を行うことで前章にあげたメリットを確実に得ることができます。
導入の際に考慮すべきこと
バージョン管理システムの導入には考慮すべき点も存在します。導入の際は下記を認識し、自社にあった対応を検討したうえで進めると良いでしょう。
学習コストがかかる
開発部門以外のメンバーには、まず「バージョン管理とは何か」「どのように使うのか」という理解が必要となり、導入時は学習コストがかかります。
ルール化とPDCAの継続が必要
バージョン管理使い始めると最新のファイルは明確にできるものの、コメントを残さないなど各々自由に運用してしまう場合があります。
コメント以外にもタグ付けのルールなど、必要に応じてルール化していくことでバージョン管理の恩恵をより多く享受できるでしょう。
全てを管理対象とする必要はない
最初から全てのファイルを管理対象にすると、かえって業務効率が下がる可能性もあるため、更新頻度の高いものや重要なファイルから管理対象にしていくと良いでしょう。
【無料資料】最適な工数管理方法の選び方と管理ツールの費用対効果
代表的なバージョン管理システム
ここでは、どのような種類のバージョン管理システムがあるのか代表的なシステムを紹介します。
ソースコード管理に向くバージョン管理システム
Git
Gitは、分散型バージョン管理システムです。例えば、Gitを使用した開発プラットフォームのGitHubは、2021年時点で5,600万人以上のユーザが利用しており、最も利用者の多いシステムと言えます。
Subversion(svn)
Subversionは、集中型バージョン管理システムです。分散型バージョン管理が一般的になるまでは多くの開発プロジェクトで利用されていましたが、これからバージョン管理を始める場合、あえてSubversionを選択する必要性はないでしょう。
Mercurial
Mercurial (マーキュリアル) は、Linuxの開発に携わっていた、マット・マッコール氏がリリースした分散型バージョン管理システムです。Subversionのコマンドを踏襲しているため、Subversionユーザーは容易に利用することができるでしょう。
文書管理に向くバージョン管理システム
楽々Document Plus
楽々Document Plusは、開発部門以外でも親しみやすいGUIに加え、契約書・電帳法対応の支援機能も豊富で2022年のITトレンド上半期ランキングの文書管理部門で1位を獲得しています。
invoiceAgent
invoiceAgentは、帳票の管理を目的にしたシステムで、あらゆる帳票の仕分け、保管、検索、他システムと連携が可能です。厳密には、バージョン管理システムというより企業間の電子帳票を管理する「文書管理ソリューション」で、管理部門や営業部門などに向くシステムと言えます。
PROCENTER/C
PROCENTER/Cは、二要素認証やファイル暗号化により、取引先やテレワーク環境からも高いセキュリティで安全にファイルにアクセスできます。企業間の取引に有用な「配布・受領確認」を確実に行うしくみが提供されるなど、開発部門以外の業務に適した機能が提供されています。
まとめ
ここまでバージョン管理について解説してきました。DXの推進や電子帳簿保存法・インボイス制度への対応などにより、ファイルの電子化とデジタル文書の管理は避けて通れない道になると考えられます。大量の電子ファイルを効率的に管理・運用するために、この機会に導入を検討してみることをおすすめします。