IT人材は今後も不足することが予想されているうえ、昨今のDXの高まりも加わり、ますます人材の確保は難しくなる一方です。そのためオフショア開発に目を向けている企業も多いのではないでしょうか。リソース確保の問題だけではなく、オフショア開発はコストメリットが大きい点もその理由のひとつです。そこで、ここではオフショア先としてどの国が人気なのか、どのようにオフショア開発先を探すのか、進め方などを解説します。
目次
オフショア開発とは
オフショア開発とは、海外の開発会社や子会社にシステム開発業務を委託することを言います。
ニアショア開発との違い
ニアショア開発は、海外ではなく国内の地方の会社にシステム開発業務などを委託することを言います。オフショア開発では発注側のPMやブリッジSEの負担が大きいことや、トラブル発生やスケジュール遅延のリスクを考えた時、総合的に考えるとニアショアの方がコストメリットを得られる場合があり、オフショア開発と合わせて検討されることも多いです。
オフショア開発の契約形態
オフショア開発をする際には一般的に下記契約形態いずれかで行います。
受託契約
あらかじめ開発するものを決めて開発単位ごとに契約する形態です。日本の企業間で発注する際と同じ形式です。
ラボ契約
ラボ契約は、オフショア開発先に専門のチームを作り、一定期間リソースを確保する契約形態です。
ラボ契約では、仕様変更や別の作業を依頼したい状況になっても臨機応変に依頼できるため、社内リソースと同じイメージで開発を依頼できます。
例えば、将来に備えオフショア開発先を確保しておきたい、開発体制を整えておきたいという場合にラボ契約でスタートし、社内の開発の一部から徐々に依頼しながらチームを育成していくという方法があります。また、システムのバージョンアップを定期的に行うような長期的なプロジェクトの場合、ラボ契約は固定メンバーで開発を行うことができるため、盤石な体制づくりができるというメリットがあります。
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2022年版|オフショア開発先の国ランキング
オフショア開発はどの国が良いのでしょうか。「オフショア開発. com」のオフショア開発白書2022によるとオフショア開発先のランキングは下記順となっています。
1位 ベトナム 48%
2位 フィリピン19%
3位 インド 12%
4位 中国 7%
5位 バングラデシュ 5%
6位 カンボジア、インドネシア、ミャンマー、韓国 2%
ベトナムが人気になっている理由
ここ数年はオフショア開発先としてベトナムを希望する日本企業が多く、継続的に高い人気を維持しています。その理由として下記などがあげられます。
新日で国民性も日本に近い
ベトナムは親日派の人が多く、真面目な国民性であることが大きな理由としてあげられます。これらは仕事の進めやすさや関係性構築に大きく影響します。
国策でITが推進されている
ベトナムでは国策により、1998年に成立した教育法により英語教育やコンピューター教育を小学校3年生から実施しています。
TOPDev社の「Vietnam IT Market Report2022」によると、ベトナム国内には48万人のIT技術者がおり、年間5万7千人のIT人材を排出しています。
2年前の同社レポート「Vietnam IT Market Report2020」では、国内のIT技術者は40万人でしたが、2年間で8万人増加していることから今後もIT人材は純増することが予想され、安定したリソースが期待できます。
最新技術に長けている優秀な人材が多い
コンピューター教育に力を入れていることもありブロックチェーンやAI、フィンテックなどの最新技術やアジャイル開発などの開発手法にも長けている若い人材が多くいます。
- 得意言語、人気のある言語
1位 JavaScript 79.1%
2位 Java 52.4%
3位 PHP 41%
4位 C#/.Net 39.4%
4位 Python 39.4%
6位 Swift 17.7%
7位 Objective-C 16.2%
出典:Vietnam IT Market Report2022「THE MOST POPULAR VS ON-DEMAND TECH STACKS?」
単価と技術力のバランスとメリットが大きい
ベトナムの単価自体が安く、また、ベトナムは少子高齢化の日本と異なり、人口構造がきれいな三角形を描いています。技術者は教育を受けた若手が多く、若手は単価が安くなるため、一定の技術力のある技術者を安く得られるというメリットがあります。
- IT人材の年齢構造
15-19才 8.19%
20-24才 28.68%
25-29才 25.29%
30-34才 16.74%
35-39才 10.24%
40-44才 5.84%
45-49才 2.89%
50才以上 2.12%
出典:Vietnam IT Market Report2022「DEVELOPER DEMOGRAPHICS | PERSONAS」
以前は1位だった中国が4位になっている理由
一昔前はオフショアといえば中国が一般的でしたが、選択肢から外されることが多くなっているようです。理由としては下記などが考えられます。
コストメリットが低くなっている
中国の単価は上がる一方で、以前は30万円から発注できたリソースも、今では40万以上、技術を持ったエンジニアになると50万以上というように単価が上がっています。
スキルの高いエンジニアが多くいるものの、中国に発注するメリットが少なくなっていると言えます。
エンジニアの転職サイクルが早く、同じ会社に長くいない
中国のエンジニアは比較的転職サイクルが早く、2、3年で転職してしまうことも少なくありません。これまで築いた関係性の再構築や、現場のナレッジの蓄積・引き継ぎ不足など余計な負担やリスクになると言えます。
優秀な人材はいるが国民性の違いが大きい
中国に限ったことではありませんが、日本人のように行間を読むというようなことはありません。例えば、テスト段階になって製品レベルのスピードが出ないなどが発生し失敗することも往々にしてあります。
根本的な考え方が異なることが根底にあるため、総合的に判断したとき他国を選択する企業が増えているのでしょう。
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オフショア開発先の見つけ方
オフショア開発会社はどのように見つければ良いのでしょうか。ここでは開発会社の見つけ方をリスクの少ない順に紹介します。
オフショア開発サービスを利用する
「オフショア開発」で検索すると多くのオフショア開発サービス企業を見つけることができます。これらの企業は最適な企業のマッチングやブリッジSEのサービスを提供している場合が殆どで、初めての場合安心して進めることができるでしょう。
他社の知人など、発注経験者による紹介
既にオフショア開発を行っている他社の知人などに紹介してもらう方法があります。実際の費用感や良し悪し、注意点やオフショア開発先の様子など現場感覚を知ったうえで発注できることは大きなメリットになるといえます。
展示会などで探す
思い切って日本の展示会ではなくベトナムのIT系の展示会に出向くのもひとつの手です。現地調査を兼ね企業を選定し、打合わせまで行うことができればオフショア開発への一歩を大きく進めることができます。また、ベトナムのIT事情もよく知ることができるでしょう。
自身でリサーチし開拓
ベトナムはオフショア開発に積極的であるため多くの企業を検索で見つけることができます。具体的な企業名をあげたランキングなども確認することができるため、それらも参考にしながら自社の開発に合った企業を選定すると良いでしょう。また、英語で検索する方が、より有益な情報を得ることができます。
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オフショア開発会社を選定したら
候補となるオフショア開発会社を数社選定したら、まずはオンラインで打合わせを行うのが妥当だといえるでしょう。話が具体化してきた際には現地に出向き、会話するのが良いです。
訪問すれば、会社見学や開発者の様子も知ることができます。また、関係性も構築しやすいです。渡航が難しい場合は、会社見学をバーチャルで行ってもらうなども一つの手です。
通訳が在籍しているか、また、SEや開発者のスキルシートを提示して貰えることが多いため、要求すると良いでしょう。
まとめ
オフショア開発を始めるには大きな労力を要します。しかし日本の現状と5年先、10年先を見据えた場合、必須の取り組みになる企業もあると考えられます。現状のオフショア開発事情を知り、リスクや注意点も十分にリサーチしたうえで、対策を取りながら進めていくことが失敗を避けるポイントと言えるでしょう。