昨今のDX(デジタル・トランスフォーメーション)の波はさまざまな業種に広がっており、建築業も例外ではありません。5年先、10年先を見据え、経営を維持し競争力を高めていくために、デジタル技術の活用は欠かせない状況にあります。DXの推進や業務プロセスの改善、ビジネスモデルなどの変革を検討するとき、改善対象のひとつとして歩掛があります。本記事では、DXや業務改善を進めたい方に向け、歩掛の積算にシステムを導入し効率化することを検討する際に知っておくべきことを解説します。
歩掛(ぶがかり)とは
歩掛(ぶがかり)とは、積算や工程表作成に必須となるもので、ひとつの作業に対し作業の手間を数値化したものです。
歩掛の計算方法
たとえば、一人の一日の労働時間が8時間で、ある作業に2時間必要とした場合
2時間(作業にかかる時間)÷8時間(一日の労働時間)=0.25
が歩掛になります。
さらに、この作業が工事全体で8回必要な場合
8回実施するための人工(にんく):0.25(歩掛)×8(回)= 2(人工)
となります。
標準歩掛とは
歩掛は建設業の業種や施工場所、施工内容によって細かい数値が必要で、一般的には国土交通省の標準歩掛が利用されることが多いです。
標準歩掛は、公共土木工事の発注における公平性や透明性確保のため、適正な予定価格を算出することを目的に、全国での施工実態調査に基づき定義されています。
歩掛を行うメリット
歩掛をはじめて導入する場合やシステムを導入する場合、歩掛のメリットを認識してくことで、自社の目的やメリットも明らかになり効果が得られやすいでしょう。ここでは歩掛を行う主なメリットを確認します。
積算精度の向上
歩掛では部材や施工箇所などごとに数値を設定するため積算精度が上がることが期待できます。積算精度が上がると、工程表の精度も上がり、人員も正しく調整が可能になるため、結果、利益の確保に繋がります。
標準歩掛を使用したり比較したりすることで市場の標準値もわかるため、妥当な積算となる可能性が高く仕事の受注にも貢献するでしょう。
赤字工事防止
どんぶり勘定で積算している場合、ひとつの作業の価格のズレが大きなインパクトになることがあります。工事規模が大きくなればなるほど赤字の規模も大きくなり経営に影響を与えることになりますが、歩掛を採用することで積算精度が上がり赤字工事の防止に繋がります。
自社の労務費の明確化
一般的に、建設業では労務費の算出が難しいといわれています。歩掛を使用することで労務費が明らかになり、経営状況の把握や利益向上に繋げる要素のひとつにもなります。
根拠のある工程表を作ることができる
歩掛を使用していない場合、想定していた日数で終わらないことや人員が足りないなどの問題が発生することがあります。
その問題をカバーするため余計なコストをかけざるを得ない状況になったり、工事関係者に迷惑をかけてしまったり、日程調整の労力が発生するなどの事態が考えられます。歩掛を使用することで人工が明らかになるため、積算した見積から根拠のある工程表を作成することができます。
根拠のある見積による顧客の信頼獲得
見積額が高すぎるなど指摘を受けた場合でも、歩掛を利用していることで根拠のある説明が行えるため、顧客に納得感を与えることができ、信頼の向上にも繋がります。
例えば、価格交渉を要求された場合にも、施工方式の変更や部材の変更などの提案が行えるでしょう。顧客に論理的に説明できるため、ただ値引きを行い受注側が損をするというような事態を回避するための手段にもなります。
経営改善の要素になる
積算したものと工程表などを実際の工事結果と照らし合わせ、状況の把握や数値を分析することで課題や改善点を得られ、経営改善の足がかりにすることができます。
また、標準歩掛と自社の歩掛数値が乖離している場合、発生原因を明らかにすることでも改善点が得られるでしょう。
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積算システムを導入するメリット
歩掛を今から導入する場合、エクセルなどを利用するよりも積算システムを導入するべきです。エクセルなどの表計算ソフトもデジタル化のひとつと言えますが、効率化という観点で見た場合、十分とは言えません。では、積算システムを使用することでどのようなメリットがあるのか、代表的なメリットについて解説します。
積算の効率化
積算システムを利用すると、標準歩掛を選択していくことで積算が行なえます。その他、自社独自の歩掛を設定することも可能で、積算の手間を軽減することができます。
工程表作成の効率化
積算システムによっては工程表作成の機能があります。すでに積算された各作業はシステムに入力されているため、各作業をカレンダーに当てはめたり、日程を設定したりすることで工程表が完成するため、効率的に工程表の作成が行なえます。
人為ミスの回避
たとえばエクセルを利用し積算を行っている場合、歩掛の入力ミスなどが発生しやすいです。計算式やマクロが壊れたり、知らないうちに計算式を編集してしまっていたりなどで思わぬミスが発生することがあります。積算システムではそのようなことがなく、人為ミスを回避することができます。
原価管理が明確になる
歩掛を導入すると労務費が明確になります。積算システムでは案件の状況把握や赤字か否か、どこに労務費が多くかかっているかなど分析できる機能があるものもあり、把握しやすいです。労務費の把握は、自社の経営状況把握や従業員のスキルの把握に繋がり、課題の発見や改善点が明らかになるなどで、長期的には利益の向上に繋がります。
情報共有がしやすい
積算システムでは、データが全て積算システムに集約されるため、情報を参照しやすく、担当者以外でも状況把握が行いやすいです。編集履歴やコメントを残すことができるものもあり、いつ誰が、何のために、どのように修正を行ったのかが明確になります。
自社に適した運用ルールを定めておけば、担当者が変わっても「あの人しか知らない」という状況などを回避できます。
過去のデータの管理・参照がしやすく経験値を蓄積できる
積算システムを導入すると、全てのデータが蓄積されるため、過去の工事見積や利益を参照しやすくなります。同じような工事や問題が発生した工事、多くの利益が出た工事は経験値の蓄積になると言えます。これらを分析・比較することで従業員のスキル向上や、より精度の高い積算が行えます。
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積算システムを導入する際のポイント
積算システムの導入を成功させるには、自社に合った積算システムを選択する必要があります。導入を検討する際には下記のポイントを認識し、各社の積算システムを比較すると良いでしょう。
入力のしやすさ、修正や確認がしやすいか
積算時の入力のしやすさに加え、あとでデータを修正したい場合に修正作業がしやすいか、データの確認方法がわかりやすいか、したい作業を迷うことなく行えるかなど、積算システムを試用するなどで確認します。
自社のルールややり方に適応できるかも重要なポイントです。
他システムとの連携に対応しているか
企業によってはデータの連携などを行いたい場合もあります。必要に応じ連携が可能かどうかも確認しておきます。また、標準機能では連携できない場合でも追加費用はかかるもののカスタマイズで対応が可能な場合もあります。
導入を本格的に検討する段階では、ホームページやカタログ、機能リストを見るだけで判断するのではなく、営業担当者に連絡し、詳しく話を聞き相談を行うべきでしょう。
サポートがどのように、どの程度うけられるか
システムを利用し始めると使い方が解らないものが出てきたり、疑問が出たり、自社の状態に合わせた利用をしたいようなシーンが幾度となく出てきます。そのような場合のサポート体制がどのようになっているのかや、無料・有料などを確認しておきます。
後々追加で費用が必要になり、想定していない支出が発生するなどの問題を避けることができます。
運用費がどの程度かかるか
前述のサポート費用の有無に加え、運用費が必要かどうかも確認が必要です。積算システム自体のバージョンアップや、メンテナンス費用などが必要になることがあります。
昨今では、パソコンにインストールする形式ではなく、ASP(※)でサービスを提供するシステムも多いです。月額でライセンス費用(利用料)を支払うものもあるため、システムの導入形式、支払い方法も確認しておきます。
※ASP:アプリケーションサービスプロバイダの略。インターネットを介しサービスを提供する企業のこと。
標準歩掛の編集が簡単にできるか
たとえば、国土交通省の標準歩掛は更新されますが、自社のスキルや経験年数によって標準歩掛では適合しないケースもあります。その際に簡単に編集ができるか、また、標準歩掛が年次更新され新しくなった際はどのような処理が必要なのか、更新しても自社のデータが維持されるかなども確認しておくと良いでしょう。
IT導入補助金に対応しているか
システムの導入費用は安いものではなく、可能な限りコストを抑えたいものです。歩掛の積算システムを提供している企業の中にはIT導入補助金に対応している場合があります。IT導入補助金の申請が通れば、内容に応じて補助金が利用できるため導入の費用対効果がより大きくなります。各社のシステムを検討する際の比較項目のひとつにしましょう。
BIMモデルに対応しているか
企業によって必要になる機能としてBIMモデルがあります。建設業界ではBIMモデルの採用が増加している傾向にあり、対応したシステムを選択することでより効率的な積算が期待できます。BIMモデル以外にも、自社に必要な機能が備えられているか、比較検討項目リストを作成し、各社のシステムを比較していくことをおすすめします。
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まとめ
工事の積算にはノウハウや経験が必要ですが、歩掛を利用することで積算精度の向上と赤字工事の削減、利益向上が期待できます。「クラウドログ」は人工(工数)を手間なく管理できることに加え、工程表の作成や多角的な視点での分析機能が備わっており、現場の効率化や生産性向上に役立ちます。無料の試用期間もあるため、是非一度利用頂き、導入をご検討ください。