国内唯一のネットワーク機器専業メーカーとして、ITソリューションの提案・提供までも自ら手掛けるアライドテレシス株式会社。全国およそ200名のSE(システムエンジニア)による確かな技術力を武器に日本のITインフラを支えています。
同社では全国の拠点で業務にあたるSEの工数管理をより手軽に行うため、2017年に自社開発の工数管理システムから「クラウドログ」への移行を決定しました。オンプレミスからクラウドへの移行の背景にはどのような意思決定があり、クラウドログの導入によってどのような成果がもたらされたのでしょうか。
日本のITインフラを支えるアライドテレシス株式会社
貴社の事業内容をお聞かせください。
秋本 慎一 様(以下、敬称略):弊社はネットワーク機器メーカーとして、ITインフラ全般のトータルソリューションをお客様のご状況に最適な形で提供しています。1987年に創業した当時はネットワーク機器の研究開発からスタートしておりまして、現在では「ネットワークプロダクト」「ソリューション」「サポートサービス」の3つの事業の柱としています。
社名の由来は、ラテン語のAllied(連合・統合)とTelesis(前進)を組み合わせた造語で、国内40拠点と200名前後のSE、そして海外拠点で働く全社員が一丸となってお客様にネットワークがもたらす価値を提供してきました。
私の担当しているサポートサービス部門のお客様の傾向としては、医療法人(病院、クリニック)や官公庁、教育系が多く、もちろん一般のエンタープライズのお客様なども含め幅広い業界でお手伝いしております。
貴社の強みをお聞かせください。
秋本:ネットワーク機器の製造ベンダーとして、製品企画から開発、お客様毎の提案、導入、そして導入後の運用サービスも含め、トータルサービスをご提供できる点が強みです。開発会社としてさまざまなお客様の課題やトラブルに対して、メーカー視点から解決策をご提案することができます。
オンプレミスの自社システムで感じていた課題とは
工数やプロジェクトの管理は、以前どのように行われていたのでしょうか。
秋本:クラウドログを導入した2017年以前は、自社で開発した社内システムで工数管理を行なっていました。全国200名前後のSEが使用する全社的なシステムではあったものの、各部門のそれぞれの現場管理に利用されているイメージです。「何時から何時までこの作業を行います」といったイメージで、現場で作業工数の集計に活用していました。
ただ、当時すでに開発から10年ほどが経っており、細かい部分で使いにくさが感じられるようになっていたのです。たとえば、カレンダー(タイムシート)上でスケジュールを変更しようとした場合、既存の予定をドラッグして変更するような直感的操作ができないため、わざわざ数値を入力し直す必要がありました。現場のSEも忙しいため、少しでも無駄な手間と時間を減らしたいという思いがあったのです。
システムを刷新された2017年には、どのような変化があったのでしょうか。
秋本:当時、サーバー入れ替えといった社内システムの刷新が行われていた時期でした。ちょうどSaaS型のツールが普及し始めた頃でもあり、社内でもう一度システムを開発するか、それとも他社が提供しているサービスを導入するかを比較検討していました。
SaaS型のクラウドサービスにはどのようなメリットがあると考えられたのでしょうか。
秋本:システム管理者が不要になり、管理の手間が削減される点、サービスの老朽化やUIが古くなる心配がないことがメリットだと思います。特に社内でメンテナンスが不要になることで、その分のSEのリソースを他の事業に配分できることは弊社にとってありがたいです。その結果、クラウドログをはじめ、他社提供のSaaSと比較検討をすることになりました。
クラウドログを導入された決め手をお聞かせください。
秋本:実際にツールをいくつかトライアルさせていただきました。評価導入としてSE10〜20名の規模で、1~2カ月ほど使用することになったのです。
その結果として入力時間が実際に短縮できたこと、具体的には3分かかっていた入力が1分で終わるようになり、手間と時間が1/3 に短縮できることが確認できました。導入時、導入後のコスト比較も行い、社内合意も得られたため導入を決断しています。
動画やOJTの工夫で、全国200名のSEにクラウドログを浸透
クラウドログの導入はどのように進んだのでしょうか。
秋本:トライアルの10〜20名から、そのまま200名のSE全体に広げていきました。その際に簡単なマニュアルを作成し、全国のSE向けにオンライン勉強会も行なっています。勉強会は1回だけ行い、その様子は動画としてアーカイブされているので新入社員はいつでも視聴できる状態です。その他、新入社員にはOJTの一環として先輩社員が使い方を教えるようにしています。
クラウドログの使い方はシンプルなので、その使い方の教育が負荷になっている話は聞いたことがありません。
クラウドログの活用では、どのようなルールを設けていますか。
秋本:全体的なルールとして、月末までに当月分の作業はクラウドログにすべて入力するように義務化しています。業務分析を行なっている社内分析チームが、全社の工数全体を統計的に分析しておりまして、毎月月初には前月のデータを集約しています。
工数のデータは、現在どこに工数がかかっていてどのようにリソースを分配すればよいか、業務改善のために活用されています。
その一方で、日々の業務内で当日中の入力までは求めていません。確かに入力のタイミングが遅れることでリアルタイムのリソース管理の精度は下がってしまいますが、忙しい現場も多々あるため強要はしていないのです。各SEのクラウドログ入力状況はグループのマネージャーがスマホで閲覧できるようになっており、現場の判断に一任しています。
クラウドログへの入力には、どのような工夫をされていますか。
秋本:プロジェクト名は一定の規則を設けています。具体的には、プロジェクトごとに割り振られたIDをプロジェクト名に付与するよう定義されています。
これは入力する際に、タスク名をわざわざ考えずに済ませるためと、業務の分析やツール間で業務全体の把握を行う際にタスクの突合を容易にさせる狙いから設定されました。
工数の入力時間や手間は1/3 に。SEの精神的負担の軽減も
クラウドログ導入の成果をお聞かせください。
秋本:クラウドログからCSVで各SEの業務データを出力できるので、各現場のマネージャーレベルで業務の改善、効率化が進められるようになりました。全社の分析チームでまとめられた集計データはグラフ化され、各担当の案件単位の分析にも役立てられています。
クラウドログに移行してから、工数の入力作業が非常に楽になったという意見が多かった印象です。iPhoneからもタイムリーに入力、確認することができるようになったので、お客様先に向かう最中や帰り道といった“スキマ時間”を無駄にすることが減りました。
また、しばらくお客様の現場で作業を行うケースも少なくありません。お客様のオフィスでいちいちPCを広げてVPNをつなぎ、工数を入力する、という面倒さはなくなりました。
工数入力の作業は削減されましたか。
秋本:トライアルの結果通り、工数の入力時間や手間は1/3 程度に削減することができました。SEの業務は毎週繰り返されるものが多く、過去の工数データをタイムシート内でコピーして入力できる機能は特にありがたいですね。
タイムシートは直感的に扱いやすいUIのため、工数削減に貢献していると感じます。具体的にどれだけの業務時間が減ったかは集計できないのですが、“塵も積もれば山となる”のではないでしょうか。
その他にも定性的ではありますが、業務後の一手間が楽になってSEの精神的な負担も軽くなっていると感じています。
「今後も普段の業務を支える『メモ帳』のように活用していきたい」
今後の展望をお聞かせください。
秋本:クラウドログのようなクラウドサービスや、iPhoneといった個人端末の普及によって、ネットワークの重要性はますます高まってくるでしょう。ネットワークメーカーとして、弊社ではさまざまなソリューション展開を進めていきたいと考えています。
その上で増えたSEやプロジェクトの工数を効率的に管理していくため、クラウドログを普段の業務を支える、気軽に使える「メモ帳」のように活用していきたいですね。
最後にクラウドログの導入を検討されている方へコメントをお願いいたします。
手作業や紙で社員の工数やスケジュールを管理している企業に、特にクラウドログはおすすめです。間違いなく業務の効率化は進みますし、工数入力が楽になることによって分析できるデータが集まりやすくなります。このようなツールの導入で業務全体は少しずつ良い方向に向かっていくのではないでしょうか。
アライドテレシス株式会社
https://www.allied-telesis.co.jp/
設立:2004年7月1日
資本金:19億87百万円(2023年12月31日現在)
従業員数:909名(2023年12月31日現在)
事業内容:ITソリューション、ネットワーク機器の企画、販売、施工、保守、運用サービス事業