発足以来、豊かなコミュニケーション社会の発展に貢献することを企業理念に掲げているKDDI株式会社。社会の情報基盤を支えるインフラ企業として、社会課題の解決に取り組んでいる同社では、社内やグループ企業のバックオフィス業務を集約するため、コーポレートシェアード本部がシェアードサービスを提供しています。グループ会社を支えるプラットフォーマーを目指すコーポレートシェアード本部ではこのたび、クラウドログを導入することで業務の可視化を実現しました。
クラウドログ導入の背景にはどのような課題があり、そして導入から1年が経った現在、どのような成果がもたらされているのか、ご担当者様にお話を伺いました。
課題
- Excelのマクロによる工数管理では、手間と時間がかかっていた
- データの入力精度が低く、活用できないことも
決め手
- サポートの手間なく社内に浸透させられる使いやすさとUI
- 発行できるアカウント数と料金体系
効果
- 毎日かかっていた1時間の事務局作業が5分に短縮
- 今まで見えていなかった業務の実像が見えるように
- 現場からは「Excelよりもしっかりしたシステムのほうがやりやすいね」という声
KDDIグループを支えるコーポレートシェアード本部のミッションとは
コーポレートシェアード本部のミッションについて教えてください。
荒川 由紀子 様(以下、敬称略):KDDIグループ全体では現在、「5G通信」を核にDXやLX、金融、エネルギーといった、さまざまな事業領域に拡大していく「サテライトグロース戦略」を掲げています。この中期経営戦略を支える2つの柱に「事業戦略」と「非財務領域の経営基盤強化」を据えており、グループ全体のシェアードサービスを支えるコーポレートシェアード本部は後者の「非財務領域の経営基盤強化」に取り組んでいるところです。
小久保 暁洋 様(以下、敬称略):2023年8月現在、コーポレートシェアード本部で受託しているKDDIグループ会社はおよそ40数社となっており、現在も拡大しつづけています。当本部が提供する価値は、今後も増え続けるグループ会社の経営をしっかり支えることであり、そのためのガバナンス強化やグループコーポレートコストの削減、グループ内人財還流などに取り組んでいます。
コーポレートシェアード本部の業務内容を教えてください。
小久保:コーポレートシェアード本部には派遣・委託社員含めると200名弱が在籍しており、基本的に業務すべてがPC上で行われるため、ITリテラシーはかなり高い方ではないでしょうか。グループ会社からシェアードサービスを受注する場合も、アナログではなくシステム上でやり取りを行います。
コーポレートシェアード本部はKDDI本社の一部門ではありますが、一般的なシェアード企業と同様にグループ会社から委託料が支払われています。製品の販売が売上になるのではなく、社員の働き自体がサービスとなるため、「売上に対してどのくらいの時間をかけているのだろうか」「採算は合っているのか」を把握することが、業務において重要でした。
Excelによる工数管理では、データの集計に手間と時間がかかっており、マクロが崩れてしまうことも
クラウドログ導入以前、工数やプロジェクトはどのように管理していたのでしょうか。
小久保:当初は作業時間を計測できるようなソフトを導入する案や実際にストップウォッチで作業時間を計測するという案もありましたが、最終的にExcelによる自己申告で毎日の業務を管理していくことにしました。Excelで管理するデータは、業務内容や顧客である本体やグループ会社、かかった時間などです。
何度も説明会を実施し、Excelでの工数管理を本部内に浸透させたあと、全対象者から集計したデータをBIツールにつなぎ込み、可視化していました。
Excelで工数を管理するにあたって、どのような課題を感じていたのでしょうか。
小久保:2022年7月にExcelによる管理を開始したのですが、どうしてもアナログさが残り続けていたのです。Excelにデータを入力するには本部員全員、つまり200人弱のExcelをマクロで集計していましたが、とにかく時間がかかり、担当者の手間がかかっていました。
具体的には、毎日データの集計とBIツールへの連携に30分〜1時間はかかっていたと記憶しています。また、入力漏れや誤表記があるとマクロは止まってしまうため、データ修正や個別対応にもさらに時間がかかっていたのです。
また、せっかく入力してもらったものの、データの入力精度が低く、活用できないことも課題でした。本来は、データをもとに業務と要員の配置を最適化したり、業務の見直しや効率化など、さまざまな施策につなげたかったのですが、分析するにはもっと細かく正確なデータが必要との結論に至ったのです。
こうした課題を受け、コーポレートシェアード本部内の横断プロジェクトを利用して生産性向上PJを立ち上げ、その一環として工数管理にツールを導入することにしました。
比較検討のポイントは、サポートの手間なく社内に浸透させられる使いやすさとUI
ツールの選定にあたって、どのように比較検討されましたか。
小久保:社内の別部署ですでに採用実績があったクラウドログをはじめ、複数のツールで比較検討を実施しました。その際、アカウント数と料金体系、レポート等の管理機能、そしてUIが比較検討の軸でした。
クラウドログ導入の決め手を教えてください。
小久保:これまで社内にシステムやツールが導入されることは何度もありましたが、その度に、社内に浸透させるには手厚くサポートする必要があると感じていたのです。
しかしクラウドログを実際にトライアルしてみて、細かなサポートなしで社内に浸透しそうだと思えました。感覚的に操作できますし、ヘルプボタンを押せば求めているマニュアルページが表示されるので、事務局で詳細なマニュアルを準備する必要はないと判断しました。
事務局側としても、入力する側としても、クラウドログは最適な選択でした。
クラウドログとBIツールを連携することで、現場側と管理側の双方がデータを活用できるように
クラウドログ導入の流れを教えてください。
小久保:ツールの情報収集や機能理解に2か月程度かけました。クラウドログの営業担当の方が丁寧に話を聴いてくれて、自分たちのやりたいこととツール機能の擦り合わせをすることができました。その後、詳細設計や社内手続きに3か月ほどかけて、2023年2月に導入しました。導入の中で意識したのが、「何のための作業なのか」「収集されたデータはどのように活用されるのか」という工数管理の意義と必要性をしっかり理解してもらうことでした。
また、データをオープンにしすぎないことにも配慮し、クラウドログで収集したデータやBIツール内の分析画面は、閲覧できるアカウントを制限しています。
なお、BIツールのダッシュボードは主に事務局側やマネジメント層が深い分析をする際に使用し、クラウドログ内のダッシュボードはグループリーダーが自グループの情報を簡易的に確認する際に使用しています。
BIツールと併用し、具体的にどのようなデータを活用していますか。
小久保:本部内でよく議論に上がっていたのは、待機時間の集計データです。月内や年内の繁閑の時期を把握することができれば、要員配置が効果的になります。その他にも、以下のようなダッシュボードを作成しました。
- 本部独自の方針による採算管理
- KPI管理
- 生産性向上の進捗管理
弊社からの導入サポートについてはいかがでしたか。
小久保:クラウドログのご担当者の方、特にシステムの担当の方に、当社独自の運用に合わせた詳細設計やマスターデータの作り込みで手厚くサポートいただきました。おかげでスムーズに導入から運用に移行できたと思います。
毎日かかっていた1時間の作業が5分に短縮!今まで見えていなかった業務の実像が見えるように
クラウドログの導入によって、どのような成果が得られましたか。
小久保:現在でも毎日データの集計とBIツールへの連携という作業は残っていますが、以前は30分〜1時間はかかっていたところ、5分程度の作業まで圧縮されました。また、クラウドログ上で正しく情報を入力できるようになったことで、入力漏れや誤表記といったミスも大きく減っています。Excelで管理していた頃は、そもそも入力する場所が違っていたり、必要な情報が少しでも入っていないことでマクロが動かないこともありましたが、こうしたトラブルや事務局側の修正の工数はほぼゼロになっています。
クラウドログの導入後、業務にはどのような変化がありましたか。
小久保:Excelで管理していた頃は「この数字は本当に確かなものなのか」と疑問に感じながら集計、分析していましたが、クラウドログによってデータの信用度が向上し、今まで見えていなかった業務の実像が見えてきました。
本部横断プロジェクトの一環として進めたクラウドログの導入でしたが、その後第二弾のプロジェクトとして可視化された情報から具体的な施策を企画していくフェーズに移りました。ひとつ例を挙げると、部やグループをまたいだ要員調整や支援ができる体制を検討しました。これを実現できれば、忙しい状況でも新たに要員を採用することなく、効率的なリソース活用が可能になります。
社員からはクラウドログに対してどのような感想がありましたか。
小久保:「Excelよりもしっかりしたシステムのほうがやりやすいね」という言葉が大半でした。以前はExcelへの入力は億劫になりがちだったと思うのですが、「朝出社して勤怠を押し、クラウドログを立ち上げる」という流れが、少しずつルーティン化され浸透してきたと実感しています。
業務の工数管理は「まず始めること」が重要。走りながらPDCAサイクルを回す
今後の展望について、お聞かせください。
小久保:「業務の見える化」は、ツールを導入して終わり、ではありません。業務の見える化によって得られたデータをもとに、どのように活用していくかが重要です。今回のクラウドログの導入によって、「業務の見える化」は達成できましたので、次のステップとしては見える化したデータを活用した具体施策をうまく実現し、生産性を高めることでKDDIグループにおけるコーポレートシェアード本部の提供価値を最大化していきたいですね。
荒川:コーポレートシェアード本部では、まずは受託できる業務の量と支援の幅を拡充していくことを目指しています。ただ、人財リソースは限られている状態ですので、いかに生産性を上げていくかが鍵になってくるでしょう。KDDIグループの「サテライトグロース戦略」を力強く支えていくためにも、今後もシェアードサービスの成長に正面から向き合っていきたいですね。
コーポレート部門の工数管理に課題を抱えている企業に向けて、アドバイスをお願いします。
荒川:最初から大きな絵が描けなくても、まずはツールを導入してデータを収集しながらデータの活用方法を考えていく、という方法もありだと思います。本来であれば、工数管理によって得られるメリットを示してから始められればよいのですが、あとから成果が付いてくるパターンも珍しくありません。とにかく、「業務を可視化し、データを分析し、施策を実行し、効果を検証した上で改善につなげる」というサイクルを回していくことが重要だと思います。
KDDI株式会社
1984年6月
事業内容:電気通信事業
社員数:49,659名(連結ベース/2023年3月31日現在)
資本金:141,852百万円 (2023年3月31日現在)