豊通ヒューマンリソース株式会社(以下、THR)は、豊田通商及び豊田通商グループ会社のビジネスパートナーとして人事、労務、教育研修等の人事機能をサポートしています。
THRでは長年運用していた工数管理システムの更改タイミングに合わせて、クラウドログに切り替えました。丁寧な設計も奏功し、移行後は工数データの入力と集計がスムーズになり、現場で活用されています。今回は移行の経緯と工数管理システムの活用方法について、お話を伺いました。
背景
- 各社に係る業務の工程分析を行い、生産性向上につなげたい
- 社員1人1人の目標設定に工数を活用し、評価や改善の基準としたかった
- 顧客へ提示する見積もりに、必要工数の客観的なデータが必要
決め手
- 社の方針であるクラウド化に対応していた
- 社内で使われている複数の階層の工程マスタ設定が可能だった
- 比較対象であった旧システムよりも管理負担が軽くなった
効果
- 客観的データに基づき適正な工数(価格)を提示し、顧客に対しても納得性の高い説明をすることできた
- 階層の設定に注力してデータの粒度を揃えたことで、分析時間の短縮に成功
- 入力者の分類ミスや使用方法に関する問い合わせが減少した
豊田通商グループ全体の生産性向上とコンプライアンス遵守を胸に
御社の事業について、教えてください。
渡邊 真光様(以下、敬称略):社名にある「ヒューマンリソース」が示す通り、豊田通商及び豊田通商グループの企業を主な顧客として、人事機能をサポートしています。事業内容は給与計算業務代行・人事コンサルティング、海外人事関連業務、人材開発・組織開発コンサルティング、企業内研修です。国内グループ企業の約80社を顧客に、各社の人事部門の強みや弱みに応じて、必要な人事機能をサポートしています。
渡邊様の役職・部署やご担当されている業務についても、教えていただけますか。
渡邊:私は名古屋人事ソリューション部で、給与ソリューショングループのマネージャーを務めています。人事部門の中でもグループ企業への給与業務を中心とした計算代行サービスに加え、給与業務に関連した勤怠管理、社員対応及び実務担当者様へ実務面でのアドバイス、相談などにもお応えします。
他社の人事部門にも見られる傾向ですが、メンバーの女性比率が高く、9割が女性、男性は私と加賀を含めた2名の職場となっています。時短勤務で活躍されている方も多いですね。雇用体系に関わらず、全ての社員のワークライフバランスを整え、健康経営を重視した施策にも取り組んでいます。
豊田通商グループにはサービス業からメーカーまで、業種・規模もさまざまな企業がありますが、弊社ではそれらの企業をサポートしています。また、弊社の役割として豊田通商グループがコンプライアンスを遵守し、グループ全体の生産性の向上にも貢献しなければなりません。
見積もりも評価も、工数データが必須!従前のシステムではデータ集計・分析に手間がかかっていた
以前は、どのように工数管理を行っていたのですか?
渡邊:長年、外部のシステムを契約して、そこに入力していました。しかし、「どの項目に入れればいいか」というメンバーからの質問も多く、データの入力間違えも多発していました。
当時のシステムは、現在用いるような集計・分析を想定した構造ではありませんでした。現場で使いやすい設計とは言えず、データを集計する前に手作業で加工する必要がありました。その結果、管理者側も時間と労力を費やすことになり、工数管理の効率化とは程遠い状況でした。
工数管理のデータはどのように活用されていますか?
渡邊:主に請求業務や見積書の根拠(費用提示・改定)に活用しています。弊社では請求形式が大きく2通りありまして、ひとつは月ごとの実績ベースでの請求、もうひとつは年間概算をもとに均等割りした月額請求です。実績ベースでは日々の工数のデータがもとになりますし、年間契約時にも実績をもとに価格交渉を行います。
新規受託時には、クライアントの優秀なベテラン社員の工数実績を根拠に予算が組まれることもあります。しかし、人員配置の問題で弊社が同等のスピードで処理できないこともあり、こうした擦り合わせの際に、お客様へ標準工数を提示する根拠となる工数データが必要になります。
他には、社内の業務でも活用していますね。人事評価の目標管理として、顧客ごとに決めている想定工数を利用しています。また、工数を通じて、個人への仕事の偏り具合のチェックや想定以上の工数がかかったときの原因調査、スキルやメンタルのケアにも工数データを活用しています。
システム更改に合わせ、社内の条件に沿ったクラウドログを選定候補に
旧システムを入れ替えることになったきっかけは何ですか?
渡邊:別の会社様のサービスを長く使い続けてはいたのですが、クラウド化するにあたり、コスト面の負担が重く、更新のタイミングに合わせて、選定しなおすことが決定しました。情報を集めましたが、ほしい機能や条件を満たすサービスがなかなか見つからない中、最終的に残ったのが旧来のシステムとクラウドログでした。
選定時の評価のポイントは、どのような点でしたか?
渡邊:今回、システムの選定にあたって、3つのポイントを重視しました。
まず第一に、クラウド型です。これは工数管理システムに限らず、業務全体のクラウド化を推進したいという方針が前提にありました。従来のオンプレミス型のシステムは、運用にコストがかかり、場所や時間に縛られるなどの課題がありました。一方、クラウド型であれば、どこからでもアクセスできるため、柔軟な働き方を可能にするというメリットがあります。
2つ目は、弊社で利用するために必要な階層(※)で構成できるかどうかです。下層の工程まで分析することができれば、より精度の高い分析が可能になります。
そして、最後にシステムの使いやすさも重要なポイントでした。入力作業が煩雑だとメンバーの負担が大きくなり、システムが活用されない可能性があります。そのため、誰でも簡単に工数を入力できるように直感的な操作性を持つシステムである必要がありました。
(※)工程は3階層ですが、PJ毎、担当者を含め4~5階層で分析可能
「業務に活かせる」システムを綿密に設計。入力側も管理者も、わかりやすく楽になった
導入までの流れを教えてください。
渡邊:導入を決定したのが2023年の3月下旬頃だったでしょうか。移行自体はほぼ確定していたので、選定が終わった後から決裁までは早かったですね。当初は運用まで1ヵ月もあれば足りるだろうと考えていましたが、テスト運用の期間を挟み、実際の運用開始は6月になりました。
入力者の手間、データの活用、分析時の使いやすさを考え、設計・設定に時間を要しました。「せっかく新しいシステムを入れるのだから、業務に活かせるものにしたい」という思いがあり、時間をかけて丁寧に進めていました。どれくらいの時間が適切かは難しいですが、時間をかけて良かったと思います。
導入後の活用状況はいかがでしょうか?
渡邊:時間を費やしたかいもあり、うまく運用できています。旧来のシステムとは操作感が異なる点もありましたが、自然に馴染んでいきました。新規項目の追加も想定していますので、さらに改善しながら引き続き問題なく使えそうです。
加賀 哲也様(以下、敬称略):データの構成としては、主に会社名と業務種別でグルーピングしています。その下に、個々の契約内容によって異なる中項目・小項目を設けていますね。合計で4~5階層という状態です。階層が細かく分かれているので、入力面でも格段に使いやすくなったと感じています。
以前のシステムでは、どこに何を入力すればいいのか迷うことも少なくありませんでした。クラウドログでは、情報が整理され必要な項目を見つけやすくなっています。新規の項目がすぐに追加できるので、助かっています。
渡邊:ちょうど期末なので集計・分析中ですが、以前より勤務実態とデータ上の業務工数や不明な業務のズレがぐっと減りましたね。入力者にもわかりやすくなったと感じています。
勤怠時間の大半が入力済み。精密な工数データで業務の可視化と、適正費用での契約が可能に
クラウドログの運用で、渡邊様や加賀様の負担は変わりましたか?
渡邊:データを加工する手間が軽減されました。見積書作成時にデータを落とすだけで項目がそのまま使えるようになり、以前は必要だったひと手間が不要になりましたからね。
あとはマネージャーとして、弊グループ内の状況が見えやすくなりました。先ほど、工数管理を目標管理や評価に使っているという話をしましたが、以前よりもデータが見やすくなったことで目標未達の原因もわかりやすくなりそうです。
会社ごとの工数の増減状況や引継ぎに時間がかかっている部分、工数が予想を超えている場合にも、本人の理由なのか先方との状況に原因があるのか、それとも会社側に改善点があるのか。評価される側としても、上長へきちんと理由が言えるようになるので、良いと思います。
入力者となる社員様たちや会社全体にも変化はありましたか?
渡邊:入力先に関する社内からの問い合わせは減りました。最初の案内時に伝えるだけで済んでいますね。実際、勤怠時間の大半が工数として入力されており、かなり精密なデータが取れています。
また、最近クラウドログのデータを根拠に見積もりを適正化し、契約金額を見直しできた案件もありました。予算を実績が上回ってしまっていたので、受託費の適正化に繋がりました。
引き続き、客観的で説得力のある工数管理で業務改善へ
今後について、御社の展開として考えられていることはありますか?
渡邊:日々粛々と業務を進めながら、改善を続けるのみですね。工数管理で得られた客観的データは、サービスの提供先であるお客様の納得度に繋がります。労務管理が重視されていく中で、工数データは必須の資料と言えるでしょう。弊社での改善結果を参考に、グループ内の業務改善にも活かしていきたいですね。
今後のクラウドログ活用に向けて、目標や目指す姿はありますか?
渡邊:まだデータの蓄積開始から1年程度なので、これからが活用の本番です。将来的には、各業務に対する標準時間設定も視野に入れています。また、分析としてはまだ活用できているとは言えない為、分析項目や方法・活用についても進めて行きたいと考えています。
まだ今はタイムシートの使用がほとんどですが、使っていない機能もガントチャートなどいろいろあるそうなので、さらにクラウドログの活用範囲を広げていきたいですね。Outlookカレンダーや勤怠管理ツールとの連携を使えば、さらに入力者の負担が軽減できそうです。長くお世話になりながら、業務改善に役立てていきます。
クラウドログをご検討中の会社様へ、メッセージをお願いします。
渡邊:クラウドログはメンバーの時間管理・工数管理・業務管理・改善管理をしたいというケースに、非常に役立つと思います。特にチームで作業する場合は、誰がどのタスクにどれくらい時間をかけているかが可視化されるので、進捗状況を把握しやすくなります。また、過去のデータと比較することで、業務の効率化を図ることも可能です。
ただ、必要なデータは会社や個人によってさまざまだと思うので、そこは時間を割いてじっくり考えてほしいと思います。工数管理は目的があってこそ、意味があります。単に時間を管理するだけでなく、取得したデータをどのように活用していくかを事前に考えておくことが重要です。そこが明確になっていれば、クラウドログは必ず力になってくれると思いますよ。
豊通ヒューマンリソース株式会社
2004年4月1日
事業内容:給与計算業務代行、人事コンサルティング、海外人事関連業務、人材開発・組織開発コンサルティング、企業内研修
社員数:112名(2024年4月現在)
資本金:5,000万円